76.安寧の魔石、迷踏の魔石
ぷぎゅ
ぷぎゅ
ぷぎゅ
「――むぅ」
夜、宿屋の自室で杖を持って歩き回る。
歩く度におかしな音が鳴るのは、今日手に入れた『安寧・迷踏の魔石(小・小)』のせいである。
『迷踏』の部分の効果が、この『ぷぎゅ』というわけだ。
「これさえ無ければ……とほほ」
さすがにぷぎゅぷぎゅ言わせながら街中を歩くのは嫌なので、使わないときは魔石を外しておくことになるだろう。
私はこういうアイテムの付け替えを面倒に感じるタイプだから、いずれは解決策を見つけたいところだ。
ちなみにゲームとかでも、『敵に合わせて最大ダメージを出す装備』よりも『どんな敵でもほどほどにダメージを出す装備』――いわゆる汎用的な強さを好むところがあるのだ。完全に余談だけど。
「さて……それじゃどうしようかな。試してみようかな? 試さないでおこうかな?」
ぷぎゅ
ぷぎゅ
ぷぎゅ
「ああ、やっぱりうるさい……。もういいや、試してみちゃおう」
私が何を悩んでいたかというと、魔石の『安寧』部分の確認だ。
鑑定によれば『高負荷の術の反動を15%軽減する』という効果なのだが、ユニークスキル『英知接続』の反動――つまり頭痛を和らげることができるのかどうかを確認したかったのだ。
ひとまず身の回りのことは一通り済ませているので、後は寝るだけ。
前回は頭痛の挙句に翌朝は起きれなかったから、これがある種の判断基準にはなるだろう。
さて、それじゃ『英知接続』を何に使おうかな?
復習になるけど、『英知接続』はユニークスキル『創造才覚<錬金術>』と組み合わせることで、どんなアイテムでもその素材が分かってしまうという強力スキルだ。
強力が故に、使うと反動が出ちゃうんだけど。
とりあえず神器の素材を調べるのは――作りたいものが明確じゃないから置いておいて、今だと『オリハルコン』か『賢者の石』あたりかな?
ちょっと悩ましいけど今回は『オリハルコン』にしてみよう。神器作成に直接関係してそうだしね。
よーし、それじゃいくぞー。
『オリハルコンを作りたいなー』
からの『英知接続』――
からの『創造才覚<錬金術>』――
――――
――――――――
――――――――――――ッ!!!
「やっぱり痛ッ!」
予想通りというか、やっぱり起こる頭痛。
前回よりも痛くないかもしれないけど……、さすがに痛みは比較できないかな。プラシーボ効果(思い込みでそう思う効果!)かもしれないし……。
などと考えていると――
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【『オリハルコン』の作成に必要なアイテム】
・賢者の石×1
・金×1
・特殊条件<聖域>
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――頭の中に、欲しい情報が現れた!
「オリハルコンを作るのに必要なのは、賢者の石と金! ――って、予想してた通りじゃん!!」
ミスリルは賢者の石と銀が必要だったので、オリハルコンは賢者の石と金かなー……とは何となく思っていたのだ。
くぅ、貴重な一回を無駄にした……ッ!!
でもそうしたら、次は賢者の石を調べれば良いのかな?
賢者の石を作ることができれば、ミスリルとオリハルコンの作成に一気に近付くことになるからね。
それにしても――
「ああ、やっぱり頭痛がしんどい……。もう寝よう……」
痛み自体の差はよく分からないけど、『安寧』の効果の確認はとりあえず翌朝起きれるかどうかを判断基準にしよう。
うん、おやすみなさーい。
……あいたたた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……ふわぁ。おはようございまーす……」
朝、目が覚めて時間を確認してみると、いつも通りの時間に起きることができていた。
頭痛も特に感じられず、すっきりとした目覚めである。
――ふむ。ざっくり言って前回よりも多少は反動が減っている感じはする。
というと、やっぱり『安寧の魔石(小)』でしっかり反動を軽減してくれたっぽいかな?
そうなると、この効果ってすごく助かることになるなぁ。スキルを使うたびに頭痛に苦しむのって、精神的にかなりしんどいんだよね。
そしてもっと反動を軽くしたいのなら――『安寧の魔石(小)』が15%軽減だから、空箱の魔石のパターンと同じだとすると、『安寧の魔石(大)』は多分45%軽減になるのかな?
つまり大を2個、小を1個で105%軽減! そうしたらもしかして、反動無しで『英知接続』を使いまくれるようになるのだろうか。
そこまでいったらもう錬金術師としては無敵だよね。
うーん。よし、神器作成と一緒に安寧の魔石探しも旅の目的にすることにしよう!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、ルークとエミリアさんと合流していつも通り宿屋の食堂で朝食と取ることに。
「――しかし思い返せば、この食堂もずいぶんとお世話になりましたよね……。それも明後日の朝までだと思うと感慨深いと言いますか」
しみじみとそんな思いがつい漏れる。
「夜も大体ここでしたもんね。ああ、ミラエルツから離れてもここの味が忘れなさそう……」
「ジェラードさんともここで会いましたしね。……ところでアイナ様、ジェラードさんはまだ帰ってきていませんよね?」
「そうなんだよねぇ……。何かあったのかな?」
ジェラードはガルルンの様子見ということで、今はガルーナ村に行ってもらってるんだけど――結構時間が経っているのにまだ戻ってきていないんだよね。
「さすがに魔物にやられてるということは無いとは思いますが……」
「うーん。もし明後日の朝までに戻ってこなかったら、心配だしガルーナ村に一回戻ってみる?」
「そうですね。ガルルン……の出来具合も分かりませんからね。それが良いと思います」
うん? ルークはまだ『ガルルン』という言葉にちょっと抵抗を持っているね。
ここは徐々に矯正していくことにしよう。恥ずかしがる方が恥ずかしいのだよ、こういうものは。
「――さて、それじゃ今日と明日は特に予定は無いですけど、何をしましょうか。
私的には魔法関連のお店にもう一度行っておきたいんですよね。あそこのアイテムで作れるものが多くなりましたし」
「それじゃ今日は買い物に充てましょうか? そのあとはご当地グルメをまわりましょう!」
「え、あ、はい」
エミリアさんの提案により、買い物に何故かご当地グルメがくっついてきたぞ。
「――ところで、ミラエルツのご当地グルメって何ですか?」
「お肉!」
「じゃぁ没で!」
「そんなっ!!」
お肉は私には重いんだよー。
……でも、重いお肉といえば何となくあの屋台の広場を思い出して、屋台の広場といえばアレを思い出すなぁ……。
「そういえばエミリアさん、アレは結局参加しないで良いんですか?」
「アレって何ですか?」
「屋台のアレ。ほら、食べ比べをしてた屋台があるじゃないですか。エミリアさんもてっきり参加したいものかと」
「噂によれば、なにやら『暴食の賢者』というすごい方がいたみたいですよ。エミリアさんよりも食べるんでしょうか?」
「ぶふぉっ」
「「だ、大丈夫ですか!?」」
「あ、す、すみません。へぇ、そんな方がいたんですねぇ……? あ、私はそういうのにはさすがに参加しませんから、大丈夫ですよ!」
「そうなんですか? うーん、それは予想外でした」
「やだなぁ、アイナさんったら。私のことを何だと思っているんですか!」
「……『暴食のプリースト』?」
「アイナさん、それ酷い! ぶぅ!」
私の言葉に、珍しくエミリアさんがぶうたれてしまった。
デザートを奢ったら機嫌は元に戻ったんだけど、それってやっぱり――……あ、いえ、何でもないです。




