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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
752/911

752.第四の神器③

 話を戻すと……。

 そんな流れで、私は結局ウェディングドレスを着ることになってしまった。


 まぁ、私もどこか興味があったのは正直なところだろう。

 どうしても嫌なら、アルケミカ・クラッグバーストの一発でもジェラードにお見舞いすれば良かったのだから。



「――アイナさん、とっても綺麗ですよ!」


 エミリアさんが満面の笑みで、私に語り掛けてきた。


「あ、あはは……。どうも……」


 それに引き続き、お年頃の5人組からも一斉に声が上がる。


「アイナ様、お美しい……!」

「とっても素敵ですよーっ!」

「やっぱり披露宴、しましょうよー!?」

「ケーキはすぐにでも手配できますが……!」

「結婚式、私も早く挙げたいです……っ」


「――って、何でメイドさんたちまでいるの!?」


「えへへ♪ 少しお話しちゃったら、広まっちゃって……」


 エミリアさんは悪戯っぽく、舌を出しながらそう言った。

 ……いやいや、確信犯じゃないかな?


「まったく、もう……。

 そう言えば、ことの発端のジェラードさんは?」


「表で、ルークさんと戦っていますよ」


「ぶっ」


 ……でも、それにしては少し静かな気がする。

 ルークのことだから、それこそアゼルラディアを抜いて本気でいきそうなものだけど……。


「ちなみに、今日は素手の殴り合いだそうです」


「は、はぁ……?」


「いや、神器を使うのはさすがに反則だろう……ってジェラードさんが。

 だから一番公平な、素手の殴り合いになったそうですよ」


「えぇ……。

 でもジェラードさんって、素手でも強いんですか?

 ルークは強そうだけど、ジェラードさんは武器あってこそ……と言うか」


「そこは愛の力で、どうにかなるんじゃないですか?」


「うわー、適当……。

 もちろん、こっちには愛なんてありませんからね?」


 強いて言えば仲間愛……はあるけど、さすがに恋愛感情はね……。

 そもそも恋愛感情なんて、私の中ではもう錆付いているものだし。



 そんなことを話していると、この部屋――礼拝堂の入口の扉が静かに開いた。

 全員が注目する中、扉の先を見てみると――


「えっ!?

 み、みなさん? どうしたのかしら……?」


 ……そこには久し振りに会った、レオノーラさんが立っていた。


「おっと、レオノーラさんでしたか……。

 えーっと、ちょっとその、外で決闘が繰り広げられているそうで……。

 それを待っていると言うか……」


「ああ、あの戦い……。聖堂の関係者も見守っているのよ……。

 まったく、アイナさんの旦那さん選びも大変よね……」


「べ、別に選んでませんよ!?」


「そうなの……?

 なら、あの戦いは何なのかしら……」


 細かい情報までは届いていないようで、私は今までの経緯をレオノーラさんに教えてあげた。



「……とまぁ、そんなわけで。

 旦那さん選びと言うか、結婚式の真似事を阻止していると言うか……」


「……はぁ。そんなことで、あんなに注目を集めているのね……。

 変な噂にならなきゃ良いけど……」


「そこはジェラードさんが手をまわしてくれると思いますよ。

 ここに来れても、来れなくても」


「聖堂関係者には私の方でどうにかしておくわ……。

 アイナさんが結婚するって驚いて来たんだけど、無駄足だったわね……」


「はぅ、ごめんなさい……」


「良いのよ。もし結婚するとなれば、お祝いもちゃんとしたかったから。

 しないで済んだと分かれば、こちらもすっきりしたわ」


 ……そんな雑談をしてから、レオノーラさんは仕事に戻って行った。

 その時間、約10分ほど。



「……で?

 戦いはまだ終わらないんですか……?」


「そうですねー……。

 ところでアイナさん、そもそも待っている必要ってあるんですか?」


「え?」


「だって、ジェラードさんが来ても、別に結婚式を挙げるわけじゃないんですよね?」


「そりゃ、まぁ」


「ルークさんが来ても、結婚式を挙げるわけにはいきませんよね?」


「もちろん、そうですね」


「……となれば、別に戦いの結果を待つ必要は無いんじゃないですか?

 私たちはもう、アイナさんのウェディングドレス姿は見れたわけですし」


 ここにいるのは私とエミリアさん、あとはメイドの5人組。

 別に見せるのが目的では無いし、ウェディングドレスを着てここに立ったのであれば、何だかそれでもう良いような気がする。


「うぅーん……。そうですねぇ……。

 私の故郷に、一人でウェディングドレスを着て写真を撮ってもらうようなサービスがあるんですけど……。

 何だかそれに近い気がしてきましたね……」


「へぇ……。

 アイナ様。あとでその話、詳しくお聞かせ頂けませんか?」


 思い掛けず食い付いてきたのはルーシーさんだった。

 いや、よくよく考えてみれば、一番食い付きそうなのはやはり彼女か。


「ま、また商売を広げるの……?

 でも、この街で需要はあるかなぁ……」


「案外、あると思いますよ。

 アイナ様の故郷では、それを提供している業者がいたんですよね?」


「ま、まぁ……」


 ……ただ、この世界とは違う世界なんだけどね……。

 ルーシーさんは私の転生を知らないから、この世界のどこかだと思っているんだろうけど……。


「そうだ! 写真と言えば、アイナ様」


「ん? クラリスさん?」


「ここに来る前、写真屋を手配しておきました!

 そろそろ来る頃かと思いますよ」


「ぶっ」


「わー♪ クラリスさん、さすがです!

 これでルークさんにも、後で見せることが出来ますね♪」


 嬉しそうに言うエミリアさん。

 ジェラードの名前が出てこない辺り、何だかちょっと可哀想になってきてしまう……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 その後、1時間ほどを使って写真の撮影大会が行われた。

 写真屋さんも撮る対象が1人だと言うことで、最初は混乱していたけど――

 ……でもそのうち、周りの変なテンションに流されて、考えることを放棄してしまったようだ。


 その気持ち、とても分かる。

 まさに私も、大体同じ気持ちだったのだ……。



「――それでは、出来上がりましたらお屋敷の方にお持ちいたします」


「「「はいっ!」」」


 元気に返事をしたのはエミリアさんとクラリスさん、キャスリーンさんの3人。

 まさかクラリスさんまで、こんな食い気味な返事をするなんて……。


「……それで?

 ルークとジェラードさん、まだ戦っているんですかね……?」



 さすがに長引きすぎじゃない……?

 そう思っていたところに礼拝堂の扉は開け放たれ、ここに勝者がやって来た――



 ……まぁ大方の予想通り、ルークだったんだけど。



「アイナ様、お待たせしました……!

 諸悪の権化は倒しましたので、もうご安心ください!!」


「諸悪の権化って!?」


「ルークさんの言わんとしていること、私は分かりますよ♪」


 エミリアさんの反応に、私は何とも言えない気持ちを抱いてしまう。

 ルークは背負ってきたジェラードを床に下ろすと、そこでようやく息を付いた。


 ……顔も身体もぼろぼろだ。


 普段の戦いとは違う、いかにもケンカ後の姿……という感じ。


 私はついつい駆け寄って、アイテムボックスからポーションを取り出して手渡した。


「ああ、もう。こんなになるまで戦って……」


「ははは……。まさに、譲れない戦いでした」


 ルークが勝ったとは言え、別に彼と結婚式の真似事をするわけにはいかない。

 何せここには、彼の妻であるキャスリーンさんもいるわけだし……。

 ……まぁ、いなくても無理だけど。



「あ……、アイナちゃん……。

 僕、負けちゃった……。ごめん……。

 ……でも、凄く……綺麗……だよ……」


「はぁ……。

 ジェラードさんも、お疲れ様でした。はい、よしよし……」


「くぅ……。

 嫁にしたいナンバーワン……。ぐふっ」


 ……まったく、何を考えているのやら。

 そんな思いを抱えながら、私はジェラードにポーションを掛けてあげた。

 そもそも命に関わる怪我じゃないから、しばらくすれば起きるでしょ。


「それにしてもアイナ様……。

 その……、お美しいです……」


「ちょっと……。

 ルークまで、何を言ってるのよ……!」



 改めて面と向かって言われると、さすがに照れてしまう。

 女性陣やジェラードから言われるのとは、またちょっと違うような……。


 しかし、何だかんだでようやく人数も集まったのだ。

 少し温まった頬を叩きながら、私は礼拝堂の奥に振り返る。



「――……さあ! それじゃ、そろそろ神器を作りましょうか!

 ここにいるみんな、歴史の証人になってねー!!」


「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」


 私の言葉に、ジェラード以外の7人が頷いた。


 ジェラードは……まぁ一応、目覚めるのは待ってあげようかな……。

 ……興奮しないように、縛っておいた方が良い?

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[一言] ジェラード 南無三! アイナちゃん可愛い
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