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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
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744.共有

 夜は予定通り、ルークとエミリアさんと一緒にお話をすることになった。


 ジェラードは残念ながら、彼の諜報部隊の方に顔を出しに行っている。

 しばらくこの街を空けてしまっていたから、早目に情報を共有しておきたかったらしい。



「……と言うわけで、ジェラードさんは不在です」


「ジェラードさん、またいない……」


 エミリアさんは、仕方の無さそうに笑った。


「ははは……。

 きっと、私たちがそれだけ信頼されている……と言うことですよ」


 ルークはエミリアさんに、そんなフォローを入れている。

 確かにそれもその通りで、ルークとエミリアさんは、ジェラードの厚い信頼を既に得ているのだ。


「まぁ、ここでお話した内容はジェラードさんにも共有しておきますから。

 内緒話は、内緒話のままにしておきますけど」


「はーい。それじゃ、お話していきましょー」


 エミリアさんはウキウキと、改めて開始を宣言した。


「えぇっと……。

 私はジェラードさんと一緒に、グリゼルダのお墓参りに行ってきました。

 そのあとはエマさんに会って、いろいろと話を聞いてきましたよ」


「エマさん、大丈夫そうでした?」


「うーん……。ちょっと、私の錬金術では難しそうなので……。

 ……ただ、普通にお話は出来ていたかな」


 それがいつまで続くのかは分からない。

 でもひとまず、今日はそんな調子で終わってくれていた。


「なるほどです……。

 それでエマさんのお話は、セミラミス様のお話とは違う感じでしたか?」


「全然、違う内容でした。

 転生者の話が多かったんですけど――」


 ……私にとっては重要でも、二人にとってはそこまで……と言う内容もあった。

 だから今回は、他の転生者はもう存在しない旨を中心に、二人には伝えることにした。



「ふむ……。

 すると、転生者の襲撃はもう考えないで良いのですね……」


 ルークは安心したように呟いた。

 ある意味、この中では転生者たちと一番の関係があるのかもしれない。

 何せルークは、騎士を率いて街の防衛に当たらなければいけない立場だからね。


「少しくらいは、気楽になれるよね」


「転生者の人たちって、想像が付かないことをしてきますからね……。

 急にお屋敷の中に入ってきたり、容赦なく街壁を壊して入ってきたり……」


 エミリアさんも、明るい感じで話を続けてくる。

 でも何だか、エミリアさんの今の台詞って――


「……それ、人のことを言えませんよね……」


「「え?」」


 私の言葉に、ルークとエミリアさんは聞き返してきた。


「いやぁ……。

 だって私も、王都の錬金術師ギルドの副マスターさんのお屋敷を襲撃しましたし……。

 そもそも王都には、みんなで街壁を壊して思いっ切り入って行きましたよね……?」


「あぁー……、そう言えばそうですね!

 私も言ってて、『あれー?』とは思っていたんですけど。……てへ♪」


 少し照れながら、エミリアさんは笑った。

 改めて振り返ってみれば、私たちも厄介なことをしてきたのだと思う。

 ……でも基本的に、相手が全部悪かったわけだし……?



「まぁそんなわけで、街を守る方は少し楽にはなりますよね。

 ゼリルベインも、しばらくは襲っては来られないでしょうし」


「あとの懸念としては、ヴェルダクレス王国でしょうか。

 最近また政治情勢が悪化したらしく……。内乱も相当、多くなっているそうですよ」


「どんどん増えていくねぇ……。

 オティーリエさん、まだ死なないでくれると助かるんだけど……」


 正直、ヴェルダクレス王国がダメダメになっているのは、マーメイドサイドの発展の一助になってくれている。

 有能な人材が、何だかんだでこっちに流れてきているわけだからね。


 ……そう考えると、私たちの方にも領土をもっと分けてもらいたくなってしまう。

 私たちはまだ建国をしていないから明確には言えないけど、やっぱりミラエルツまでは欲しいかなぁ……。


 そうすれば、海の向こうに輸出するラインナップが充実する。

 それに、この街で作る武器の質も上がるだろうし――


「……うーん。

 私としてはやっぱり、いろいろと思うところはありますね……。

 オティーリエ様のことは、もうどうでも良いんですけど」


 これは私の台詞……では無く、エミリアさんの台詞だ。

 エミリアさんも以前と比べれば、なかなか言うようになってしまった。

 ここら辺、私っぽい言い回しが移ってしまったと言うか。


「エミリアさんにとっては、王国の中心――王都はずっと、育ってきた街ですからね。

 それに、知り合いもたくさんいるでしょうし……」


「そうなんですよーっ。

 でも最近、この街で再会を果たすこともあるんですよ。

 今日も知り合いの方とお会い出来ましたし!」


「おぉー! それは良かったですね!」


 ……ただ、話を聞いてみるとそれは普通の人だった。

 残念ながら、今後の戦力になるような人では無い――


 ……って、そう言う話では無いよね。

 再会できたこと自体が素晴らしいことなのだ。

 だからここは、素直に喜ぶところなのだ。



「とにかく、この街の防衛計画は少し楽になりそうです。

 至急と言うことでなければ、ゆっくりと確実に作っていけば良いのですから」


 雑談が進む中、ルークが良い感じで軌道修正をしてくれた。


「そうだねー。

 ところで、ルークの方は? 騎士団に行っていたんだよね?」


「はい。第一、第二騎士団と情報共有を行って参りました。

 ファーディナンドさんの方からも、手厚い予算が出る話を頂いていて――

 ……と言う話は、今は置いておきますか」


「そこら辺は完全に任せているからね……。

 もし言い難いことがあれば、私が代わりに伝えてあげるからね」


「ありがとうございます、今は大丈夫ですのでご安心ください。

 それ以外には――……特に、有用な情報はありませんでしたね」


「ふむ……。

 ま、大体の情報は私たちの方が持っているからね……」


 襲ってきた本人たちと一番話しているのは、私たち。

 彼らを知っている人物――グリゼルダやセミラミスさんと一番話しているのは、私たち。

 だからもう、むしろ私たちが情報を上げる側になってしまっているのだ。



「さて、私はそんな感じでしたが……。

 エミリアさんの方はいかがでしたか?」


「特に、何もありませんでした!」


 無いんかーい!

 ……と言うツッコミは、私の頭の中だけにしておこう。


 魔法師団は騎士団よりも体制が全然出来ていない。

 だからこの辺りを求めてしまうのは、実はかなり無理があるところなのだ。


「まぁ、魔法師団は実戦部隊ですからね……」


「そうなんですよー。

 研究とかもやってみたいんですが、そもそもそこは魔術師ギルドの領分ですし……。

 ……あ、そうだ。研究と言えば、セミラミス様がいろいろ始めたそうですね!」


「それ、夕食のときに出た話ですよ……」


「むむ、そうでしたっ!」


 ちなみにその最中、リリーとミラにはセミラミスさんのお手伝いをお願いしていた。

 二人も結構乗り気で、今後は可能な限り手伝うことになっていた。


 ……関連で、ヴィオラさんはまだ部屋から出て来てはいなかった。


 今日はもう遅いから、明日にでも話をしてみることにしようかな。

 ……話せるかな? ちょっと不安……。



「――さて、今日はそんな感じですかね?

 少し疲れちゃいましたし、早いですけどもう終わりますか?」


「そうですね。特に議題が無ければ、それも良いかと」


「私も了解でーす。

 何事も無いときは、さっさと寝ることにしましょう♪」



 ……そんな感じで、今日の話し合いは終了。

 特に盛り上がるところも無かったけど、最近みんな、疲れているからね。


 神器で癒せない部分は何とか各自で癒して、早々に次の段階に向かわないといけない。


 次の段階……。

 私にとってはまず、それはヴィオラさんの復活……になるのかな。


 いろいろなことは、何だかんだで全てが関連し合っている。

 ゼリルベインを倒すという大きな目標を達成するために、私たちは1つずつでも、着実に物事を進めていかないといけないのだ。

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