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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
740/911

740.朗報③

「――良かった! 無事で、本当に良かった!!」


 ジェラードは私のところまでずかずかとやって来ると、そのまま私の手を取った。

 最近私も誰かの手を握る癖が付いてしまったけど、相手から握られると言うのも何だか新鮮なものがある。


 あまりの突然の展開に、ルークもいつものさりげない妨害は出来なかったようだ。

 今回に限っては、ジェラードの勝ち……かな? ……珍しい。


「私たちは、何とか無事でした。

 ただ、聞いているかもしれませんが……、グリゼルダが……その」


「……うん、報告としては聞いているよ。

 凄い戦いを、みんなの力で乗り越えたんだよね……。

 グリゼルダ様のことは、残念だけど……」


 ジェラードは話しながら、涙目になってしまっていた。

 やはり、かなりの心配を掛けてしまったようだ。


「……あとで、グリゼルダのお墓に案内しますね。

 花束でも買って、お祈りを捧げてあげてください……」


「そうするよ……。

 僕も、グリゼルダ様にはお世話になったから……」



 ふとセミラミスさんに目をやると、彼女は突然の展開に少し困っているようだった。

 そうそう、話の真っ最中にジェラードが乱入してきたんだよね。


「えーっと……。

 セミラミスさん、これからどうしましょう?」


「そ、そうですね……。

 少し、休憩にしますか……?」


 私の言葉に、セミラミスさんも緊張をほぐして言ってきた。


「……あ、ごめん。

 僕、感情のあまり、問答無用で入ってきちゃったけど……。

 大切な話をしていたんだよね?」


「でも、区切りとしては結構良かったかも……?」


「そうですねー。

 朗報を両方、ちょうど聞き終わったところでしたし」


 私の言葉に、エミリアさんも同意をしてくれる。

 2つの朗報を踏まえて、今後はいろいろと考えていくことになるのだ。

 だから区切りとしては、一旦良かったのかもしれない。


「……朗報?

 何か、良いことでもあったの?」


「今後の戦いに向けて……って言うところで。

 ちょっと絶望的なところがあったんですけど、活路が見い出せた……と言いますか」


「へぇ……?

 ねぇねぇ、その話、僕も混ぜてもらって良いかな。

 みんなの最近のことも聞きたいしさ!」


「分かりました。

 セミラミスさんも良いですか?」


「……はい、もちろんです……!」


 こうして話し合いには、ジェラードも加わることになった。

 ジェラードにはまず、今までの話を共有することにしよう。

 そもそもジェラードの最近のことだって、私たちは何も知らないわけだからね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――マジか……」


 そう言うと、ジェラードはソファーに体重を預けた。

 そのまま天井を仰ぎ見ながら、しばらく何かを考えているようだった。

 ……まぁ、気持ちは分かるかな。


「突然、神様が襲ってきた……って言っても、ねぇ?」


「あはは。そうですよねー♪」


 私はエミリアさんと、顔を合わせて笑い合う。

 あまりに現実味が無くて、作り話だと言われても仕方が無いレベルの話だからね。


「……でも、神様を追い払ったんだよね……。

 グリゼルダ様のお力があったとは言え、グリゼルダ様だけでは無理だっただろうし……」


「逆に言えば、追い払うことしか出来なかった……とも言えます。

 だから次は完全な勝利を収めて、グリゼルダにしっかり報いないと……!」


「うん……。

 僕もあちこち行っていたけどさ、もうこの街を離れないから!

 アイナちゃんも安心してよね!」


「え、本当ですか!?

 ジェラードさんって、いて欲しいときに結構いませんし。ねぇ、アイナさん?」


「えぇー……。

 それをこっちに振るんですか……?

 でも確かに、今回はジェラードさんにいて欲しかったですね」


 戦力もそうだけど、情報操作のところでは特に。

 ジェラードは仲間の中でも、多方面に応用が効く人材なのだ。


「そう言ってもらえると嬉しいよ!

 まぁ、間の悪さは自分でも自覚してるけどさぁ……。

 でも、まさかこんなタイミングで……ねぇ?」


「いろいろと性急な展開でしたからね。

 ……あれ? そう言えばジェラードさんは……もうどこにもいかないでも、大丈夫なんですか?」


 行動範囲が売りのジェラード。

 そして今は、彼の神器用の素材を探していたはず――


「……あ!!」


「わぁっ!?」


 突然、エミリアさんが大きな声を出してきた。

 何事!?


「アイナさん!!

 『神々の空』に行く、四人目がいたじゃないですか!!」


「四人目……。

 ……あ、ジェラードさん?」


「んん? えーっと……?」


 この辺りのことは、ジェラードにはまだ話していなかった。

 伏せていた、と言うよりも、まだそこまで話が進んでいなかっただけなんだけど。


「えっと、ゼリルベインを倒すために、行きたい場所があって……。

 ……まだ確証があるわけでは無いんですけど、そこに行くためには神器が要るかも……と言うことで」


「そうですね。

 ジェラードさんがいてくれれば、百人力です」


 ルークもやはり、ジェラードの戦力が欲しいようだった。

 実際、ジェラードはかなり強いからね。


「そう言えばジェラードさん、神器の素材はどうなりましたか?

 何か目途でも――」


 ……私の言葉に、ジェラードは顔に笑みを含ませた。

 おや、これは……?


「実は! ついに、その素材を手に入れてきたんだよ!」


「え、本当ですか!?」

「わーっ、すごーい!」

「ほう……。やりますね……」


 思わぬ朗報に、私たちは沸いてしまった。

 突然のジェラードの帰還に加えて、突然の朗報。

 これは良い流れが来ているのではないだろうか。


「ちなみに、どこで手に入れたんですか?」


「秘密っ!」


「え、えぇーっ!?」


「ジェラードさん!

 その素材、見せてもらえませんか!?」


「別に良いけど……見た目は、本当に骨……だよ?

 エミリアちゃんが見ても、別に……って感じじゃない?」


「まぁまぁ、そう言わずに!」


 エミリアさんに押されて、ジェラードは彼のアイテムボックスから小さな包みを取り出した。

 そしてそれを広げて、テーブルの上にそっと置く。



「……骨、ですね」


「だよね? これはもう、本当に骨」


「あはは……。

 一応、鑑定してみますか?」


 それ、かんてーっ



 ----------------------------------------

 【死霊使いの骨】

 死霊使いの骨

 ----------------------------------------



 ……うん、やる気の無い系の説明文だ。

 でもそれ以外、きっと説明のしようが無いんだろうなぁ……。


「確かに、ずっと探していたものみたいですね……!

 ジェラードさん、お疲れ様でした!」


「うん、ありがとう!

 それじゃアイナちゃん、これは預けておくね。

 作れるときにお願い!」


「はーい、分かりました!」



 ……それにしても、最後の素材は何だか楽に手に入っちゃったかも?

 いやいや、きっとジェラードはかなり苦労して手に入れてきたに違いない。


 その苦労は具体的には分からないけど、私たちがジェラードがいなくて苦労した分はきっと、苦労をしてきたはずだ。



 ……第四の神器。


 本当だったら、建国のときに併せて作りたかったんだけど――

 ……でも、それよりも今は戦力だ。


 タイミングを見て、早めに作ってしまった方が良いのかな?

 今作っても良いんだけど、全世界に知られちゃうからね……。


 ……さぁて、どうしたものか。

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[一言] もうパパット作ろうぜ!
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