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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
739/911

739.朗報②

「アイナ様は……、『神力回路』と言うものを、ご存知ですか……?」


 セミラミスさんは、そんな言葉で切り出してきた。


「あー……。グリゼルダから聞いたことはありますね。

 人間の『魔力回路』に相当するものだ……って」


 そしてその『魔力回路』と言うのは、魔力を消費したり、回復したりの流れ道を指す。

 具体的に聞いたのは、グリゼルダから……くらいかな?

 あとはマリサさんからも聞いたことがあるかもしれない。


「……ゼリルベインは、かつての戦いで……他の神々から、神力回路を破壊されていきました……。

 最初は6つ……あったそうなのですが、他の神々との戦いで、どんどん壊されていったんです……」


「その辺りはふわっとは聞いていたんですけど――

 ……なるほど。神様たちも、タダではやられていなかったんですね」


「はい……。

 それで、最後の神力回路は……光神ゼルゲイドによって破壊されたそうです……。

 ……そのあと、ゼリルベインはこの世界から離れていた……と、グリゼルダ様は仰っていました……」


「ふむ……?」


「でも、ゼリルベインは再びこの世界に現れてしまった……。

 神力回路をどうにか、再び手に入れて……」


「あー……。ゼリルベインが今まで静かだったのって、もしかしてそれが理由ですか?

 この世界にはずっといなかった……。ずっと、自分の回復に努めていた……」


「その通り、かと思います……。

 そしてこの世界には……、エマさんと一緒に戻ってきたそうです……。

 ……エマさんも言っていました。ゼリルベインが、『久々に戻ってきた』……と、呟いたことを……」


「なるほど……。そうすると本当に、ここ数年の出来事だったんですね。

 そのあと、タナトスを転生させて、ダリルニア王国に差し向けて――」


「……はい。

 ここで、2つ目の朗報です……。

 ゼリルベインの神力回路は、グリゼルダ様によって再び破壊されました……。

 2つを回復させていたようですが、その両方を……」


 セミラミスさんの言葉を聞いて、私はあのときの戦いを思い出した。


「確かに……不気味な音が、2回……聞こえましたよね……?

 そうすると、あれがそうだったんですね……」


「はい……。

 グリゼルダ様の行動を見るに、ゼリルベインの神力回路は……もう、残っていないはずです……」


 あの不気味な音のあと、グリゼルダはゼリルベインのことを、何度も何度も殴っていた。

 単純な物理攻撃では無かっただろうけど、それにしてもあれは迫力満点だった……。


 その光景を思い出しながら少し震えていると、ルークが質問を切り出してきた。


「……セミラミス様。

 つまりゼリルベインは、神の力をもう振るえない……と?」


 神力回路が全て破壊されているのであれば、厄介な消滅の術は使われないことになる。

 無差別にダメージを与えてまわる例の攻撃も無くなってくれるはずだ。


 その言葉を受けて、エミリアさんも不思議そうに質問をしてくる。


「でも……。ゼリルベインは最後に、いくつか術を使っていましたよね……?

 おかしな光の剣と、あとは転移魔法――」


「……確かに。

 あれのおかげでグリゼルダはやられて、ゼリルベインには逃げられてしまったわけで――」


 ……と言うと、神力回路を破壊していても、戦いは引き続き続行……?


「はい……。

 でも、私の見たところ……あれは強制的に術を使っているようでした……。

 そこに、活路があるはずです……!」


「うーん? どういうことです?」


「神がこの世界に顕現する際……、『神力』が必要になるのです……。

 ゼリルベインの神力は、もう回復をすることが出来ません……。

 ……そして、『神力回路』を介さずに神力を使っていたようですが……理論的には、消耗がかなり激しいはず……です」


「……ふむ。

 エミリアさん、分かります?」


「何となくは……。

 つまりゼリルベインに魔法や術を使わせ続ければ、いずれは神力が枯渇する……と?」


「はい……。

 それも、かなりのスピードで消耗していく……かと思います……。

 ……とは言え、どれだけの時間が掛かるのかは分かりませんが……」


「なるほど……。

 でも、また何百年も回復に充てられたら、今回みたいな感じで堂々と襲ってくるでしょうし……」


 そのとき、今いる仲間はどれだけ残っているのだろうか。

 セミラミスさんと、リリーとミラくらいじゃないかな……。


 そんなことを考えてしまうと、私はふと寂しくなってしまった。

 ……でもまぁ、そんな未来のことを今から考えていても仕方が無いか。


「それはそうなんですが……。

 でも、ゼリルベインにもプライドはあるはずですから……。

 ある程度まで回復したら、早々に戻って来てしまうのでは……」


「それでも、神力回路のひとつくらいは回復させたいですよね?

 となれば、軽く100年は掛かるのでは……」


「た、確かに……。

 アイナ様が不老不死のこと、ゼリルベインは知っていたのでしょうか……」


「知らなかった……とは思いたいですけど、ちょっと分かりませんね……。

 でも、『全員滅ぼしてやる』……って言っていたし、これってルークとエミリアさんも対象ですよね?」


「ぬぅ……。

 しかしすぐに来るのであれば、私はアイナ様をお守りすることが出来ると言うものです」


 ……さりげなく前向きに考えるルーク。

 その辺り、さすがと言うべきだろうか。


「うぅん……。

 いつか攻められるのであれば、私たちから攻めていければ良いんですけどね……」


「……あっ」


「え?」


 私の言葉に、セミラミスさんは小さく声を出した。

 そしてそのまま、独り言を続ける。


「そうですね……。そうですよ……。

 何も、ずっと待っている必要はありません……。

 ……ああ、でも……難しい……でしょうか……。でも……」


「そう言えばセミラミス様。

 ゼリルベインはどこに逃げたんでしょうか?」


 エミリアさんの質問に、私もそう言えば、と思ってしまう。

 ゼリルベインはそのことを好意的には思っていなかったようだし……。

 ……むしろ戻りたくない、くらいの印象もあったかな。


「……恐らく、『神々の空』と、呼ばれる場所かと……。

 この世界に顕現していない神々は、その場所にいた……と、聞いています……」


「へぇ……。

 神様の世界、ですか……?」


 天国、とはまた違うのだろう。

 世界観にはよるだろうけど、いわゆる『神界』とか、そう言う名前で呼ばれる場所になるのかな。


「場所さえ分かれば、あとは行くだけですね。

 セミラミス様、そこへは行くことが出来るのですか?」


 ルークは具体的に話を詰めていこうとする。

 さすが現実的、と言ったところか。


「いえ……。あの場所は、神々にしか行くことが出来ないはず……。

 ……あ、そうですね……。でも、もしかしたら神器があれば――」


「「「え?」」」


 私とルーク、エミリアさんは、思わず自分の神器を見てしまった。

 まさかここで、神器の存在が出てこようとは。


「……もっと調べないと分かりません……。

 でも、神の力を振るうことの出来る、唯一の存在……。

 それならば、その力を利用して……、何とかなるかも……」


「おぉー!

 可能性としては、大きそうですね!」


 向こうの準備が出来ないうちに、こちらから奇襲を仕掛ける。

 敵の方が格上なのだから、そんな戦術でも仕方が無い。

 正々堂々……なんてことは、今は言っていられないのだ。


「と言うことは……。

 その場所に行けるのは、アイナさんとルークさん、あとは私だけなんですよね?

 ……三人だけで、ゼリルベインを倒せますかね……」


「うぅーん……。

 でも、神器は他に無いですからね……」


 ルークの神剣アゼルラディア。

 エミリアさんの神杖フィエルナトス。

 そして私の神煌クリスティア。


 この世界に存在する神器はこの3つだけ。

 つまり、ゼリルベインとの戦いもこの三人だけで――




「アイナちゃああああああんっ!!!!」



 バターンッ!!!!




「うわぁっ!?」

「むっ!?」

「あっ!」

「ひぃっ!?」



 ……突然の音と共に、客室の扉は開け放たれた。

 そして入口に立っていたのは、息を大きく切らしたジェラードだった。



 ……あ。

 ジェラード、お久し振りーっ。

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