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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
738/911

738.朗報①

 セミラミスさんと話をしたあと、私は客室にルークとエミリアさんを招き入れた。


 私とセミラミスさんを加えて、合計4人。

 ここからはこのメンバーで話を進めよう。



「それではセミラミスさん、よろしくお願いします」


「……はい、かしこまりました……」


 この1週間、ルークとエミリアさんは私のことに手一杯で、何も進めることが出来ていなかった。

 それなら、セミラミスさんを中心にして話を進めたい……と思ったのだ。


「まずは、何の話をしましょう」


「細かいことはたくさんあるのですが……。

 まず、最大の懸念事を……」


「ゼリルベインですね!」


 セミラミスさんの言葉に、エミリアさんが反応した。

 ゼリルベインの脅威は先日体感したばかりだから、とにかくここをどうにかしないといけない。


「ここ1週間は、特に何事も無く終わりましたが……。

 次にいつ襲われるか、目途だけでも付けられれば……」


 ルークも当然ながら、そんな心配をしている。

 ゼリルベインが怪我を治して、再び襲ってくると言うのは恐ろしいことなのだ。


 ……そもそも、まともに攻めてくれれば良い方だ。

 もしも遠距離から――それこそ寝てる間に、街ごと消滅させたとかでは……これはもう、洒落では済まされない。


「その辺りは、直近では恐らく大丈夫です……。

 ……エマさんから、それなりの情報を得ましたので……」


「え?」


 不意に出てきたその名前に、私は驚いてしまった。

 ゼリルベインと一緒に、この街を訪れていた転生者のエマさん。

 確か身体を貫かれて、死んだと思っていたんだけど――


「……アイナさん、その顔……。

 完全に忘れてます?」


「え? 何を?」


 エミリアさんから指摘を受けても、私には何のことだか分からない。

 救いを求めるようにルークを見ると、静かにゆっくりと教えてくれた。



 ……私たちが街に戻ってきたとき、第二騎士団の団員が街の中で保護したエマさんを連れていた。

 てっきり死んでしまったものだと思っていたけど、懐に入れていたポーションが偶然割れていたようで、死には至らなかったらしい。


 そして一旦はこのお屋敷に連れて来たが、今では治療院の方に移されているのだと言う。

 ……身体の中に欠損部分が出来てしまったから、あまり長くはもたないそうだけど……。



「アイナ様も、あのときは混乱をしていましたからね……。

 エミリアさん、覚えていないのは無理も無いかと」


「な、なるほど……。

 ところでエマさんの身体って、アイナさんなら治せそうですか?」


「うぅーん、どうでしょう……。

 欠損、って言うところが不安ですね……」


 普通の錬金術で考えれば、例えば『薬を掛けて、失った腕が元通り!』……だなんて夢のような話はあり得ない。

 簡単な傷ならまだしも、部位がそもそも無くなってしまえば、回復の限界を超えてしまうのだ。


 ……しかし、欠損を補う薬が無いわけでも無い。

 究極的なアイテムを見ていけば、そう言った薬もあるにはある。


 ただ、素材の難易度がかなり高い。

 それこそ普通には売っていないような、伝説級の素材が必要になってくるのだ。


「……エマさん、体調はまだ良いようなので……。

 今は治療院の方で養生していますので……、アイナ様も、時間を見てお見舞いに行って頂けると……」


「そうですね……。

 そっか、エマさんは生きていたんだ……」


 これ自体、思い掛けない朗報だ。

 ゼリルベインとずっと一緒にいたエマさんなら、有用な情報を持っているに違いない。

 ……いや。情報はもう、セミラミスさんが入手しているのか。


 それでも、彼女は貴重な転生者。

 彼女の元の世界の話だって、聞いてみたい。

 ただの情報源では無い。彼女のことだって、もっと知っておきたい――



「……それで今回は、エマさんとグリゼルダ様から伺った話を総合して……。

 分かったところまで、お話をさせて頂こうと思います……」


「はい、よろしくお願いします!」


「倒す算段が見つかれば良いですねっ!!」


「例え見つからなくても、何か糸口を掴まなければ……」


 エミリアさんとルークも、聞く体勢を改めた。

 そしてセミラミスさんから、様々なことが語られていく――




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「……ゼリルベインは逃がしてしまいました……。

 でも、まずは朗報が……2つ、あります……」


「朗報……!」


「……はい。

 シェリルさんと、グリゼルダ様が……、残していってくれたもの……です」



 ……激しい戦いだった。

 あんな戦いをまた繰り返せ……と言うのは、正直酷なものがある。

 だから、その戦いを上手く乗り越えられる要素があるのであれば、それはとても心強いことだ。



「それって、一体何ですか?」


「まずは、シェリルさんが残してくれたもの……。

 虚無属性の……、発動情報を記録した水晶玉……です」


「……あ、そうですよね!

 あれって、解析は進んだんですか?」


「えっと、その……。

 進められていないのですが……。その、アイナ様にお預けしていて……」


「うぇっ!?」


 ……私は慌てて自分の記憶を辿ってみる。

 確かに戦いの最中、セミラミスさんから受け取っていた……。

 そして戦いのあと、私は塞ぎ込んてしまっていたから……セミラミスさんには、受け渡すことが出来ていなかった。


 ……解析が進められなかったのは、完全に私の責任。

 私は静かに、アイテムボックスから小さな水晶玉を取り出した。


「おぉー、これがそうなんですか!」


 エミリアさんは水晶玉を覗きこんで、ふむふむと頷いていた。

 ルークも遠目ではあるが、しっかりと確認している。


「す、すいませんでした……。

 いや、ここは謝らせてください……」


 ……セミラミスさんにはもう謝らないとは言ったものの、それはグリゼルダのことでだ。

 こういうミスは、素直に謝らせてもらおう。


「いえ……。

 それでは……この水晶玉は、返して頂きますね……。

 速やかに、解析を進めたいと思います……」


「セミラミス様。これを解析をすると、何が出来るようになるんですか?」


「最初は……虚無属性を何とか封じられないか、と言うことでしたが……。

 でも、エマさんのユニークスキル『白の陽炎(ホワイト・ヘイズ)』に並ぶものは出来ないかと思います……」


「あぁー……。

 確かにあれは、凄かったですからね……」


「はい……。

 そもそも、私たちは……転生者たちの、虚無属性の攻撃を封じようと……していたんです……。

 ……そのレベルならまだしも、虚無の神の力は……無理だと、判断しました……」


「『白の陽炎(ホワイト・ヘイズ)』でも、ゼリルベインを抑えるのは大変そうでしたもんね。

 いちいち空間が軋んでいた……と言うか」


「うーん、封印魔法がダメ……となると、攻撃魔法にする感じですか……?」


「……その辺りはまだ分からないので……。

 でも、出来るだけ戦いに役立つように……仕上げるつもり、です……」


「……うん、分かりました。

 何かお手伝いがあることがあれば、教えてくださいね」


「あの……それなら、リリーちゃんとミラちゃんに、お手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか……。

 本当であれば、ヴィオラさんにお願いしたかったのですが……」


 セミラミスさんは申し訳なさそうに聞いてきた。

 リリーとミラも何かしらのお手伝いはしたいだろうから、これは特に問題は無いだろう。


「分かりました、二人にも言っておきますね」


「ありがとうございます……。

 それでは次の話――

 ……グリゼルダ様に、残して頂いたものになります……」


「グリゼルダに、ですか?

 ちょっと想像付かないですね……、一体何だろう……」



 グリゼルダは、戦いの終盤で突然乱入してきた。

 そして戦いを一気に終わらせる流れに導いたんだけど……。

 ……その間に、何かを残してくれた……?


 しかしセミラミスさんから語られたのは、とんでもないお土産だった。

 それこそ、私たちの勝利の可能性を大きく上げてくれるような――

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[一言] ユニークスキルのもとみたいなやつかな?
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