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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
737/911

737.決意

 朝食後、セミラミスさんと客室へ。

 ルークとエミリアさんには、客室の前で待機してもらうことになった。



「……アイナ様、お時間をありがとうございます……!」


「いえ、全然大丈夫ですよ。

 それに私も、改めて謝りたかったですし……」


「……グリゼルダ様のことでしたら……大丈夫、ですから。

 その気持ち、分かります。……むしろ、あんなに悲しんで頂いて……はい。

 ……だから、謝らないでください……」


 セミラミスさんは私の考えを先回りして、謝罪を拒否するように振る舞った。

 そう言われてしまうと、私としても謝り難くなってしまう。


「うぅーん……。

 ……それでは申し訳ありませんが、食堂でした謝罪が最後と言うことで」


「はい……!」


 それで納得がいってくれるなら、改めての謝罪は止めておこう。

 ……ただの気遣いなのかもしれないけど、セミラミスさんなら……多分、大丈夫のはず。


「ところでもう、本題に入っちゃいます?」


 セミラミスさんと話すのも久し振りだから、私としては雑談からでも問題は無かった。

 しかし今回はセミラミスさんに呼ばれたわけだから、ひとまず彼女の思うように進めてもらうことにしよう。


「えっと……、はい。

 アイナ様はお忙しいと思いますので……」


 ……今はそこまで、忙しくはないけど……。

 ああ、でもやることはいろいろあるのか。

 これから私は、きっと忙しくなるはずだ。


「分かりました、それでは本題からで。

 ルークとエミリアさんも待たせていますし、そう言えばそうですよね」


「あはは……、確かに……。

 ……えぇっと、これからのお話を……させて頂こうかと……」


「はい!」


 セミラミスさんはソファーの上で姿勢を改めると、私をまっすぐに見つめてきた。

 やはり話題はこれからのこと、ゼリルベインとの戦いのこと――


「……あの。

 ゼリルベインを倒したあとの話なんですが……」


「へ?」


 セミラミスさんの言葉に、私は肩透かしを食らってしまった。

 何せ今の一番の大きな問題はゼリルベインの話なのだ。

 まさかそれをすっ飛ばして、その後の話が出て来るとは……。


「す、すいません……。

 ……その、ゼリルベインとは全力で戦いますが……。

 あの、私の……決意表明、と言いますか……」


「な、なるほど?」


 確かに、ゼリルベインを倒すことが私たちの全てでは無い。

 問題なく戦いに勝ったら、そのあともこの世界は続いていくのだ。


 だからこそ、そのあとの話をしても全然問題は無い。

 ……でも、さすがに少しは驚いちゃったかな。



「えっと……、ゼリルベインを倒して、それで……タイミングを見て、ですね。

 ……私、この街から出て行こうと……思うんです」


「え!? な、何でですか!?

 この街に、何か不満がありましたか!?」


「あ、そうではなくて……。

 この街も、このお屋敷も……みなさんのことも、とっても……大好き、です。

 でも……私、グリゼルダ様に……、託されましたので……」


 セミラミスさんは、手元を見つめながらゆっくりと言った。

 確かにグリゼルダの最期のとき、セミラミスさんは託されていた。


 ……私のことを。

 この大陸のことを。


「むぅ……。

 でも、出て行っても……、また、会えます……よね?」


「もちろんです……!

 用事が済んだら、しっかり戻ってきますので……。

 ……グリゼルダ様から、アイナ様のことも頼まれていますから……!」


「え? あ、あれ?

 ああ、そうなんですか……?」


「その……その辺りが、本題なんですけど……。

 少し、その……照れくさくて」


「照れくさい?」


 ……もしかして、それが二人っきりで話している理由?

 ルークとエミリアさんを呼んでいない理由になるのかな……?


「あの……。

 私、以前グリゼルダ様と……北の大陸に行っていましたよね……?」


「はい、覚えていますよ。

 長距離転移魔法を覚えてきたんですよね」


「はい……。

 でもそれは、実は副次的なものでして……」


「あれ? そうだったんですか?」


 私が質問を投げると、セミラミスさんは一呼吸置いてから話を続けた。


「……あれは、ですね。

 私の……私が、試練を受けていたのです……」


「試練?」


「はい……。

 ……ところでアイナ様は、神々の話は聞かれましたか……?

 グリゼルダ様が、お話をされたと思うのですが……」


 ……神々の話。

 それは転生者のヒマリさんが亡くなったあと、人魚の島で聞いた話。


 この世界にいる神々は、既に全員がゼリルベインに殺されている。

 絶対神アドラルーン様だけは、この世界の外にいるからご存命らしいが――


「……はい。

 全員が殺されたって聞いています。

 それが何か?」


「いえ、直接は関係無いのですが……。

 でも、似たようなお話なので……」


「似たような……?」


「……神々の眷属、竜王……。

 グリゼルダ様もその一人でしたが……、神々の下に、それぞれ一人ずつがいたんです……」


「ふむふむ」


 神様がいて、その下には竜王様がいて。

 普通の竜は、竜王様の下に付く感じ。

 ……ただ、野良の竜の方が多いらしいんだけどね。


「実は……竜王の座も、半分が潰えているのです……。

 グリゼルダ様が亡くなった今……あとは、三人の竜王様くらいのもので……」


「……え?

 と言うと、もう半分しかいないんですか……!?」


 今語られる、驚きの事実。


「……グリゼルダ様と同様、異空間に封印された方もいます……。

 ゼリルベインとの過去の戦いで、命を落とした方もいます……。

 神々がいない今、新たな竜王を迎えるのも難しく……」


「確かに、竜王様は大陸を加護していますもんね……。

 グリゼルダは転生したせいで、この大陸全土を加護するのは難しくなっていましたけど……。

 って、あれ? もしかして、グリゼルダの加護は――」


 ……無くなっている?

 実感はあまり無いけど、そう言えば少し前の朝、この時期にしては寒かったような気がする。


「……はい。

 グリゼルダ様の存在が失われた今……、今後、気候がまた不安定になっていくかと思います……」


「で、ですよね……。

 また対応に追われないといけないのか……」


 ……私が出来ることは多い。

 前回のときは私もかなり頑張ったけど、あれはあれで、時間がかなり割かれてしまったんだよね……。


「……少なからず、アイナ様も動くことがあるかとは思いますが……。

 でも、今はファーディナンドさんが動かれていますので……」


「あ、そうなんですね!

 さすがファーディナンドさん!!」


「……ファーディナンドさんには、ポエールさんからお話が行ったそうです……」


「おお! さすがポエールさん!!」


「……ポエールさんは、ルーシーさんとお話をしていて……気付いたそうですね……」


「さ、さすがルーシーさん!?」


 ……思いがけず、ルーシーさんまで遡ってしまった。

 でも、あまり不思議な感じはしないかな。

 ルーシーさん、そう言うところの感覚は鋭いからね。


「……気候変動の件は、既に経験済みなので……。

 目先のところは、何とかなるのではないでしょうか……」


「そうですね……。

 でも、根本的なところがなー……」


 ……竜王様がいないのであれば、今後は人間たちで頑張らないといけない。

 他の大陸から、他の竜王様を連れてくるわけにもいかないからね。


「そこで……、あの、最初のお話に戻るのですが……」


「あ、はい」


 ……最初のお話。

 それは、セミラミスさんの決意表明? ……のお話。


「……実は、ですね……。

 私、空席になった水竜王……を、目指しておりまして……」


「え?」


 その言葉に、私は耳を疑ってしまった。

 そんな資格を取る感じで、竜王様ってなることが出来るものなの?


 でも、セミラミスさんが水竜王様になって、ここにまた戻ってきてくれれば――

 ……加護という観点では、とても助かることになる。


 何より、セミラミスさんがずっと一緒にいてくれることが嬉しい。

 それならば、良いこと()くめなのでは無いだろうか。


「そのためには……まず、ゼリルベインを倒さないと……なのですが」


「なるほど……!

 良いじゃないですか! 私、完全に応援しちゃいますから!!」


「あ、ありがとうございます……!」



 セミラミスさんは照れながらも、優しい顔で微笑んでくれた。


 ……彼女には、これから困難なことがたくさん待ち受けていくだろう。

 だから出来るだけ、私もセミラミスさんのことを応援してあげないとね……!!

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