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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
731/911

731.マーガレットさんの日記

「はい、毎度ありっ!!

 オマケしておいたから、また来てねっ!!」


「わー、ありがとうございますっ!

 また来ますねっ!!」


「いつでもおいで!」



 ……今日は買い出し。

 買うものが少ないことと、気分転換をするため、私は一人で外出をしていた。


 つい一昨日、この街は大きな地震に襲われた。

 そしてそのまま、何者かによって攻撃を受けていたらしい。


 でもそれも、無事に撃退することが出来たそうだ。

 話によれば、私のお屋敷に暮らす人たちが主となって、どうにかやり遂げたのだと言う。



 ……とっても誇らしい。



 メイドという職業は、あくまでも裏方である。

 しかしその分、仕えている人たちが活躍すると、自分のことのように嬉しくなってしまう。


 気持ちの面でもそれだけ、メイドは自分の主人に寄り添ってしまうものなのだ。

 しかし逆に、その分だけ――



 ……つらい。



 今、お屋敷の中は悲しい空気で包まれている。


 グリゼルダ様が、今回の戦いで亡くなられたと言うことだ。

 葬儀は後日、執り行われるらしい。


 私たちメイドも、グリゼルダ様にはとてもお世話になっていた。

 だからこそ、その葬儀には全員が参列を申し出たのだ。


 エミリアさんは、泣き疲れた表情でそれを承諾してくれた。


 ……アイナ様は、部屋からは全く出てこない。

 エミリアさんが付きっきりで、彼女の面倒を見てくれていた。


 同じ部屋に一緒だったリリーちゃんとミラちゃんは、今はセミラミス様の部屋で寝泊まりをしている。

 小さいのに、何の不満も漏らさない。


 ……本当に、あの子たちは、本当に良い子だ。

 逆に、どこか末恐ろしいものも感じてしまうけど……まぁ、そう言えばあの子たちも、ダンジョンなんていう不思議な存在なんだったっけ。


 ……あと、もうひとつ。

 ヴィオラさんも、塞ぎ込んでいる。


 アイナ様と同じく、彼女も自分の部屋から出てこない。

 仲の良いセミラミス様が声を掛けても、部屋からは何の反応も無いようだった。


 ……そしてそのセミラミス様も、かなり憔悴した表情をされている。

 彼女はグリゼルダ様のことを心底尊敬していたのだ。

 私が直接何かを聞いたわけでは無いが、グリゼルダ様がお屋敷に来ている間は、セミラミス様の振る舞いもそんな風にしか見えなかった。



 そのグリゼルダ様は、もういない。

 そう考えると、私の心も強く締め付けられてしまう……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ……私は街の中央広場に寄ってみることにした。

 先ほど買い物に寄ったお店も、実はここへ来る途中の道にあったのだ。


 外出する時間はある程度は任せてもらっているけど、それに甘えて仕事をサボるわけにはいかない。

 だから無駄なく、目的を達せられるように気を付けていかないと。


 しかし、私はどうしても中央広場に寄ってみたかった。

 ここはアイナ様たちが、最初に戦っていた場所――



「――何、これ……?」



 私の口からは、驚きの言葉が出てきてしまう。

 ここには綺麗に整備された広場と、しっかりと作られた建物があったはずなのに――


 ……その一部が、見事なまでの更地になってしまっていた。

 もちろん既に、復旧の手は入り始めてはいるが――



 ……こんなことをしでかす敵と、アイナ様たちは戦っていたのか。



 荒れたわけでも、壊れたわけでも無い。

 ……あったものが、消えている。


 そう考えた瞬間、私の背筋には冷たいものが走った。


 『荒らされる』は、理解できる。

 『壊される』も、理解できる。


 しかし『消される』というのは、一体どう言うことか……。


 まわりには私と同く、不安に思っている住人が集まっているようだった。

 そんな住人たちは、第二騎士団の団員から説明を受けている。


 さり気なく後ろにまわって、話を盗み聞きしてみる。

 ……残念ながら話の内容は、お屋敷にいた第三騎士団の団員が話しているものと、ほぼ同じ内容だった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ただいま戻りました!」


 お屋敷の厨房に入って、まずは元気に挨拶をする。

 こう言うときこそ、挨拶は大切なのだ。


「お帰りなさい!」


 元気に返してくれるのはミュリエルさん。

 私の元気にしっかりと付いて来られるのは、純粋に言えば彼女だけ。


 クラリスさんはクール。

 ルーシーさんは物静か。

 キャスリーンさんは可愛い。


 だから私としても、ミュリエルさんが一番相性が良いのかもしれない。



「頼まれていたもの、買ってきました。

 でも、こんな薬っぽい根っことか……、何に使うんです?」


「これは……秘密兵器です!」


「え? お料理に使うんですか?」


「そ、そんなっ!?

 私の作るお料理が兵器だとでも!?」


「いえ、そう言うことでは無くて……。

 ミュリエルさんが使い道をはっきり言わないときは、大体お料理のことじゃないですか」


「……なるほど!」



 確かにミュリエルさんの料理は不味い。

 いや、どこかを褒めようとしても、見事なまでに不味い。


 たまーに、たまに。

 本当にたまに、めちゃくちゃ美味しくなるときはあるんだけど……。


 でも美味しいときって、誰か代わりに作ってもらっているんじゃないかな……。

 だって、同一人物が作ったなんてどうしても思えないし……。


「また、彼氏さんに作ってあげるんですか?」


「えっ!? ち、違いますよーっ!!」


 ミュリエルさんの彼氏さんは、今は第三騎士団の所属になったレオボルトさんだ。

 このお屋敷にはちょくちょく警備に来てくれているから、きっと良いタイミングで食べてもらうのだろう。


 ……そんな微笑ましい惚気(のろけ)話も、今の私にとっては癒しになる。


 この冷たく沈んだ空気の中、気持ちだけは明るく保っておかないといけない。

 クラリスさんも頑張って、明るく振る舞ってはいるんだけど――


 ……やっぱりどこか、空回りをしていると言うか。

 クールそうに見えて、案外と感情が豊かだからね、あの人も……。



 ……しかしその思いは、まわりにはしっかり伝わっている。

 アイナ様たちがつらい時間を過ごしている分、私たちがなおさら頑張らなくてはいけない。


 もちろん、メイドの仕事は仕事として受けている。

 ……でも今は、それ以上に頑張りたい。みんなの力に、しっかりとなってあげたい。


 ……ただ、私たちはメイド。

 なるほど、クラリスさんが空回り気味になってしまうのも、何となく理解は出来てしまうか……。



 私から小包を受け取ったミュリエルさんは、いそいそと何かの準備をし始めた。

 まだ昼だけど、もう仕込んでいくのかな。


 ……しばらく休めば、また忙しい時間が来てしまう。


 それなら私も、ミュリエルさんを見習って……。

 今のうちに、いろいろなことをしておこうかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] あー、やっぱふさぎこんじゃったか なんか良いことあればいいな
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