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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
722/911

722.灰色の狂宴⑤

 ――……ゼリルベイン。


 私の目の前、初老の男性は自らをそう名乗った。

 今までは『ノーリ』と名乗っていたのに、それは偽名――



「……で、でも!?

 神様が、何でこんなところに……!?」


 さすがにマーメイドサイドで、神様と出会うことになるとは思いもよらなかった。

 私が今までに会ったことがある神様は、絶対神アドラルーン様だけだ。

 そしてそのときは、こことはまるで違う空間だったのに――


「何か勘違いをしているようだね。

 神だろうが、眷属の竜王であろうが、そのすべてはこの世界に存在するのだよ。

 この世界に存在しない者なんて、それこそアドラの爺様くらいなものさ」


 ……アドラの爺様?

 まぁ、アドラルーン様のことなんだろうけど……。


「そ、そうなんですか……? それで、ここには何の目的で――

 ……いや、私たちを殺しに来たんですよね?」


 正直、ゼリルベインの目的はそれくらいしか見当が付かない。

 何しろ今まで、彼は転生者たちを散々けしかけてきたのだ。

 その度に返り討ちにされるのであれば、本人が来ても何もおかしくは無いだろう。


 ……でも、神様だよ?



「まぁ、そう言うことだね。

 しかし私の子供たちを次々に殺されていくとね、逆に興味も出てきたのだよ。

 私の転生術は、アドラの爺様の模倣だからね。

 ……だからこそ、私には失敗が多かったんだ」


「失敗……?」


「ああ。人間と言うものは、格納できる情報量がある程度決まっているんだ。

 君も知っての通り、ユニークスキルと言うのは強力なものだろう?」


「え? そ、そうですね……?」


 突然、ゼリルベインの話はユニークスキルの方に向かった。

 ……急に、何で?


「私の転生術ではね、ユニークスキルはせいぜい2つまでしか付けることが出来なかったんだよ。

 だが話に聞く限り、アドラの爺様の転生者はそれよりも多くのユニークスキルを持つと言うじゃないか。

 だからね、それを参考に私も試してみたんだよ」


「試した……?」


「私の最後の子供、タケル――

 ……ろくに話すことも出来なかっただろう?」


 その言葉を聞いて、私は最後の転生者を思い出した。

 仲間たちと協力して、湖で氷漬けにして何とか倒したあの青年……。


 ……そうか、名前はタケルと言ったのか。


「確かにまるで……。でも、それが何か?」


「話せなかったが、しかし強かっただろう?

 彼にはとても強力なユニークスキルを5つも付けてあげたんだ。

 だから、まさか負けるとは思ってもみなかったんだが……」


「……っ!?

 彼があんなだったのは、無理矢理ユニークスキルを付けたから……!?」


「ダメ元で試したのだけどね、本当にダメだったよ。

 ――そしてそんな彼と私を見て、エマは私を裏切ることにしたんだろう?」


「……」


 ゼリルベインの言葉に、エマさんは誰とも視線が合わないように目を伏せた。

 なるほど、自分と同じ転生者が使い捨てにされた光景を見て――……


「……だから私はね、ユニークスキルを多く持つアイナさんに興味を持ったんだ。

 実際、君はエマをも倒したじゃないか。……何と素晴らしいことだろう!」


 ……褒められているのか、何なのか。


「そのままご褒美ってことで……。

 今回は帰って頂くわけにはいきませんかね……」


「はははっ。それはそれ、これはこれさ。

 アイナさんたちは、今回確実に殺していく。

 ……なぁに、運が良ければまた転生することが出来るよ。

 私はこの世界の他――……異世界がどうなろうと、知ったことでは無いからね」



 ……私とゼリルベインが話している中、ルークとエミリアさんは攻撃の準備をしている。


 確かにルークの渾身の一撃は受け止められてしまったけど――

 ……いや、あれ? 実際、ここから反撃に転じるにはどうすれば良いの?

 あの一撃以上に、攻撃力がある手段なんて私たちには――



「……でも、やるしかないっ!!

 ルーク、エミリアさん!! 全力攻撃ッ!!!!」


「「はいっ!!」」


 ルークは再び、6属性の光を纏った剣撃を。

 エミリアさんは細く小さく収斂(しゅうれん)させた炎の束を。

 そして私は物理攻撃の最高峰、アルケミカ・クラッグバーストを撃ち放つ。



 ルークの攻撃は右手で、エミリアさんの攻撃は左手で受け止められる。

 しかしそこで生まれた隙を突いて、ゼリルベインの胴体には私の魔法が直撃する――



「……ッ!!

 ほう……! これはなかなか……!」



 ――ちょっと待った!?


 地面と空気は大きく揺れたが、ゼリルベインは元の姿のまま。

 近距離で直撃したにも関わらず、ゼリルベインは数歩後ろによろついただけ。

 ……私の最強魔法が、こんなにも効果を発揮してくれないだなんてっ!?



「な、何で――」


「で、でもっ! アイナさん、少しよろけましたよ!!」


 慌てた声で、エミリアさんの指摘が入る。


 ……た、確かに!

 ルークの初撃はびくともせずに軽く受け止めれてしまったけど、私の攻撃は効いてしまった……?

 アルケミカ・クラッグバーストだから効いたのか、手で受け止められなかったから効いたのかは分からないけど――



「アイナさん!

 ノーリ様は無敵ではありません! それこそ――」


「……おっと。

 エマはもう、それ以上は喋らないでおくれ」



 バチィッ!!



「きゃっ!?」


 ゼリルベインはエマさんを指差し、次の瞬間、エマさんは弾き飛ばされた。


 魔法……?

 いや、違う……?


 指を差されたから、エマさんは弾き飛ばされた。

 一見関係無いようにも見えるが、しかしごく普通に成された行動。



「……確かに、無敵では無さそうですね。

 ルーク、エミリアさん! 攻撃をどんどん続けましょう!!」


「かしこまりました!」

「頑張りますっ!!」


 ルークは神剣アゼルラディアを振るい、高速で追撃を入れていく。

 それこそゼリルベインの攻撃を受けないように、器用に避けながら、付かず離れず。


 エミリアさんもルークの攻撃の合間を縫って、様々な属性の魔法を叩き込んでいく。

 威力は二の次。とりあえずいろいろな魔法を試してみよう、と言うところか。


 そして私は、必殺の――


 ……ところで、アルケミカ・ディスミストは効くのかな……。


 ――いや、ボスだし神様だし、多分効かないよね。

 それならここはやっぱり――



「アルケミカ・クラッグバーストッ!!!!」


「……ちぃっ!!」


 ゼリルベインは私の攻撃を見切り、宙に跳ねて避けた。

 やっぱり、私の攻撃を避けている……!?


 しかしよくよく見れば、ルークとエミリアさんの両手で止める頻度も減っているような……。

 こちらの攻撃が効かないのであれば、避けずにカウンターを狙った方が効率的だとは思うけど――



 ミシイィイィイィイィイイッ



「――っ!?」



 突然の、空間が軋む音。

 ゼリルベインは不満そうに、宙を仰いだ。


「……ああ、まだ制限が掛かっているのですか。

 まったく……、ちょこまかと攻撃されるのは気に入らない。

 それならば――」



 ……嫌な予感がしたときにはもう遅かった。



 凄まじいスピードで私たちを振り切ったゼリルベインは、無防備に気を失ったエマさんに、手刀で追撃を入れたのだ。

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