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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
718/911

718.灰色の狂宴①

 確かに話としては聞いていた。


 心構えもしていたし、すぐに動ける準備もしていた。


 ……しかしそれでも、今回のことはあまりにも唐突すぎる出来事だった。


 あとになって振り返ったとき、私はきっと、いつまでもそう思うことだろう……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――4日後、深夜0時。



 私がそろそろ寝ようとしたところで、マーメイドサイドは巨大な地震に襲われた。

 震度としては――……おおよそ6くらいにはなるだろうか。


 この世界には地震の基準なんて存在しないけど、体感としてはそれくらいの大きさだった気がする。



「だ、大丈夫っ!?」


 揺れが収まってから、私は廊下に飛び出した。

 本来であれば軽率な行動ではあるが、これはただの地震では無いかもしれないのだ。


 ちょうど廊下には、ルークとエミリアさんが出てきていた。

 ……いや、ルークはこの部屋の前で私を守ってくれていたようだ。


 時間は深夜ではあるが、いつ何があっても大丈夫なように、私たちはパジャマなどには着替えていない。

 このまま外出もしていける――全員がそんな格好をしていた。



「わーんっ! まさかあの話って、この地震のことだったのでしょうかーっ!」


 エミリアさんは涙目になりながら訴えてくる。

 地震の魔法も使える彼女ではあるが、不意に揺らされるのはやはり怖いようだ。


「どうどう……、落ち着いて……!

 もう揺れてませんから! 私もいますから、安心してくださいっ!」


「はい! 安心しました!」


「早っ!?」


 こんなお茶目な会話を作れるのであれば、まずはエミリアさんは大丈夫だろう。



「アイナ様、私はお屋敷の中を見てきます!

 エミリアさんと一緒に、1階の広間でお待ちください!」


「そ、そうだね。何が起きているか分からないし……。

 それじゃ全員、1階に集める?」


「はい、セミラミス様とヴィオラさんには私から伝えておきます!」


 そう言うと、ルークは階段の方へと走っていった。


「むぅ……。ルークさんは、こういうときもさすがですね……。

 悔しいですけど、私も見習わないと……!」


 エミリアさんは密かにルークをライバル視している。

 こういうときでも、それはどうやら健在のようだった。


「本当、頼りになりますよね……。

 それじゃ私たちは1階に行きましょう。リリーもミラも、一緒に行くよー」


「なの!」

「はい、ですわ!」



 ……そう言えばこの二人、全然狼狽(うろた)えていなかったよね……。

 むしろ地震を起こす側だもんね、力量的な意味では。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――アイナ様、ご無事ですか!?」


 私たちが1階に着くと、まずはクラリスさんが声を掛けてきた。


 落ち着いて辺りを見てみれば、メイドさんたちはこの場に全員が集まってきている。

 とは言え、クラリスさん以外はみんなパジャマ姿のようだった。

 ……まぁ、もう0時だからね。


「うん、私は大丈夫!

 みんなは大丈夫だった? メイドさんと、あとは第三騎士団の――」


「はい、問題ございません!

 現在は常駐していた団員たちで、屋敷の内外の確認を行っております!」


 ……なるほど、なかなか迅速な動きだ。

 お屋敷の中にもある程度の団員は残ってくれているし、万全な対応にも見えるかな。


「ありがとうございます。

 それでは引き続き、情報収集に努めてください」


「かしこまりました!」


 そんなやり取りをしていると、セミラミスさんとヴィオラさんが階段から降りてきた。



「はわわっ、アイナ様~っ!!」


 よろよろと私に泣き付いてくるのはセミラミスさんだった。

 いや、あなた氷竜様でしょう? ……でもまぁ、よしよし。怖くなーい、怖くなーい。


「い、今の地震……なんだよな!?

 魔力なんて全然感じなかったし……!!」


 不安そうに言うのはヴィオラさん。

 確かにエミリアさんも、その辺りのことは何も言っていなかったか。

 ただ、魔法であっても距離や術によっては魔力を感知できない……ということもあるんだよね。


「詳しくはまだ分からないけど……。

 今調べてもらってるから、落ち着いて待っていてね」


「お、おう……」


 そうは言っても、ヴィオラさんの不安な表情は消えてくれない。

 もちろんそれはメイドさんたちも同様だ。


 しかし第三騎士団の団員たちは、弱気な表情も見せずに動きまわってくれている。

 ……本当、頼りになるなぁ。



 そんな中、団員たちの視線が階段へと集まった。

 ルークが上の様子を見終わって、1階にやって来たのだ。


「アイナ様、お待たせしました。

 不審者の存在は確認できませんでした。

 建物の損傷としては、今のところガラスが数枚、割れていた程度です」


「ん、了解。

 ……とすると、本当にただの地震……だったのかな」


 あるいはこれは、何かの前兆――……予兆、だったり?

 私としては、そうでないことをひたすらに祈るのみだけど……。


「まだ分かりません……。

 引き続き外の確認を行おうと思います。

 エミリアさん、アイナ様のことをお願いいたします」


「分かりました!

 ルークさんはどーんと行っちゃってくださいっ!」


「はい、それでは!

 よし、三人付いてきてくれ!」


「「「はいっ!」」」


 ルークは3人の団員と共に、お屋敷から出て行ってしまった。

 とは言え、万全の体制を敷いた第三騎士団である。

 まだまだ私たちを守ってくれる団員はたくさんいるのだ。



「……とりあえず、毛布に(くる)まってここで寝ましょうか。

 明日は当然、来るんですから」


「そうですね……。

 戦わない人は、ゆっくりと休んでもらわないとですね!」


 ……私とエミリアさんの言葉は、主にメイドさんたちに向かっている。


 もしこれから戦いが始まるとしても、彼女たちの戦場はそこでは無い。

 戦場から帰ってきた私たちを出迎えるのが、彼女たちの戦場になるのだ。



 私たちの言葉を受けて、クラリスさんが謝ってくる。


「……申し訳ございません。

 お屋敷内の安全が確認され次第、諸々の仕事は行いますので……」


「ありがとう。

 でも、あんまり無理はしないでね」


「はい……」


 返事をするクラリスさんの表情はやはり暗い。


 私はふと、王都にいたとき――私たちが王城に呼ばれたときのことを思い出してしまった。



 ……突然の呼び出し。

 そしていろいろなことが重なって、私たちは王都から姿を消してしまったのだ。


 今回もどこか、それに共通する流れを感じる――



「……いや、そうは絶対にさせないから」


「え?」


「大丈夫。何があっても、私は絶対に戻ってくるから。

 だからクラリスさん――

 ……それにマーガレットさん、ミュリエルさん、ルーシーさん、キャスリーンさん。

 みんなは安心して、落ち着いて休んでいてね」


「は、はい……!」



 ひとまずメイドの5人は落ち着いてくれたようで、今から明朝に掛けてのことを話し始めていた。


 でも、そんな打ち合わせが不要になるくらい、何事も無ければ助かるんだけど――

 ……果たして。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今度はなんだ? 乗り越えられるといいな。
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