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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
716/911

716.占い

 エマさんをお屋敷の中に招こうとすると、彼女の方から拒否されてしまった。

 彼女はどうやら、外で話をしたかったようだ。


 しかしお屋敷から離れるのは、私の方から拒否することにした。

 何と言ってもエマさんの正体はまだ不明なのだ。

 ノコノコと付いていくわけにもいかないからね。


 そんなわけで、私とエマさんはお屋敷の庭でお話をすることに。

 こちら側からは念のため、ルークとエミリアさんに待機してもらうことにした。

 対するエマさんは――



「……あれ? ノーリさんは?」


「あ、はい。

 この街の近くに知り合いの家があるということで……、今晩は別行動なんです」


「へぇ……。

 この街の外、ですか? 街とか村も結構あるから、そっちに親戚でもいるのかな……」


「親戚と言えば親戚……と、そうは仰っていました」


 ふむ……。

 親戚がいるというのであれば、少なくともノーリさんは転生者では無いのだろうか。


「エマさんってまだお若いですけど、ノーリさんとは長いんですか?」


「そうですね……。

 数年前に知り合って、そこからずっと一緒……という感じです」


 おや……?

 そうすると、本当に学者さんとその助手みたいな感じなのかな……?

 ……まぁ、エマさんの言うことが本当だとすれば……だけど。


「なるほど……。

 それで、今日はこんな遅い時間にどうしたんですか?

 何か早速、問題でもありました?」


「いえ……。

 とても素晴らしい街で、凄いなぁ……と、正直そう思いました」


「あ、どうも……!

 いろいろな人の力を借りて、どうにかここまで来たんですよ。

 こだわっている部分も結構ありますから、滞在中は楽しんでいってくださいね!」


「はい、そうさせて頂きます……。

 それにしてもアイナさんって、私と同い年くらいなんですよね。

 それなのに私と、こんなに差があるだなんて……」


「あはは……。

 でも学者さんも凄いと思いますよ。ひとつの道を追求するなんて、やっぱり人の役に立ちますからね」


「そうですね。

 ……それなら、良かったんですけど……」


 不意に、エマさんは寂しそうな表情を浮かべた。

 あれ? 何か地雷でも踏んでしまったかな……?


「……っと。

 話を戻しますけど、御用は何ですか?」


「すいません、そうですよね。

 えっと……実は私、占いが趣味なんです」


「占い……?」


「こう見えて、結構当たるんですよ。

 それで、少し気になる結果が出ましたので――

 ……突然で申し訳ないのですが、お伝えしておこうと思ったんです」


 学者の卵のエマさんが、気になる占いの結果を伝えに……?


 でもそう言えば、ノーリさんは魔法学者なんだったっけ。

 魔法と占い……、それなら通じるところはあるのかな。


「……気になる結果、ですか」


「はい。アイナさんたちの前に、数日中にとても大きな敵が現れる……と、出ています。

 だから今のうちに、もしこの街にいない仲間がいれば呼び戻しておいてください。

 ……私も、出来るだけ頑張りますので」


「え? エマさんも頑張るって――」


「あ、失礼しました。それはこちらの話ですね。

 ……あまりお気になさいませんように」


「んー……、分かりました。

 ちなみにその敵って、どういうものか分かります?

 私たちもそれなりに、いろいろなものと戦っておりまして」


「あまり詳しくは……。

 ……私もそこまで実力がありませんので、申し訳ありません……」


「いえいえ!

 少し漠然とはしていますけど、しっかりと備えておくことにしますね。

 そうだ、街の人たちには知らせておいた方が良いのかな……」


「あ……。それは止めておいて頂けますか……?

 ……その、そうすると流れが変わってしまうんです……」


「流れ……?

 ……確かに、中途半端な情報を周知するわけにもいきませんか……。

 でも、騎士団くらいになら良いですよね? いつもより態勢を整えておく……程度なら」


「はい、それくらいでしたら。

 ……アイナさん。今回は疑うこともなく聞き入れて頂き、本当にありがとうございました」



 もう一言二言ほど言葉を交わすと、エマさんは丁寧にお辞儀をしてから帰っていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――深夜の0時。

 私は客室で、ルークとエミリアさんと話をしていた。


 もちろん話題は、先ほどエマさんから告げられた占いのこと……である。



「うーん……。

 全然、要領を得ない話ですよね……」


 エミリアさんも、どうして良いのか分からない感じで呟いた。


「まぁ、占いだから――

 ……詳しくは分からない、って言われちゃいますとね」


「そして住民への告知はしない方が良い……、と。

 不確かな情報であれば、確かに混乱はしてしまいますか……。

 先日の転生者の件もありますし、内々に対処が出来るのであれば良いのですが……」


 ルークも真面目な顔で考えてくれる。

 二人とも、今のところまでは特におかしいとは思っていないようだ。



「……私、明日にでも『水の迷宮』に行ってみようと思います。

 ショーコさんのときみたいに、考えていることがおかしくされていても嫌ですから」


「あー……、確かにそうですね……。

 それでは私もお供しましょう。ルークさんはどうしますか?」


「私まで行くと、何かあった場合は対処できなくなってしまうかもしれません。

 であれば、その間に騎士団の方で共有を済ませておこうかと」


「なるほど。それならルークにお任せしちゃおうかな。

 でもルークも、エマさんのことは信じているんだね?」


「……もちろん、怪しいとは思っているのですが……。

 ただ、本当に敵なのであれば、今回のような忠告はしてこないと思うのです。

 数日中……という話でしたので、ひとまずは10日を目途に警戒しておきましょう」


「10日って短く感じますけど、緊張しながらだと結構長いですよね……。

 魔法師団の方はまだ本格的に稼働してませんし、私は少しお休みしちゃおうかな……」


「エミリアさんも重要な戦力ですからね、そうしてもらえると助かります。

 ……それではそろそろ、今日はお開きにしましょうか」


「はい!」

「はーい!」



 ……ひとまずは明日。

 ただ、明日にやることくらいは考えておこう。

 明日になって、すぐに動けるようになっていればベストなんじゃないかな?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ママー、お帰りなさいなの!」


 私が部屋に戻ると、リリーが出迎えてくれた。

 今まではお絵描きをしていたらしく、テーブルの上には何枚かの紙が散乱している。


「ごめんね、一人にしちゃって。

 もう用事は終わったけど、リリーはまだ大丈夫?」


「あのね! 少し眠くなってきたの!!」


 元気にそう言うリリー。

 あまりに元気そうなので、逆に本当に眠れるのかが心配になってしまう。


「それならもう寝ちゃおっか。

 もう遅い時間だし」


「はーい! おやすみなさいなのっ!」


「うん、おやすみー」


 リリーは自身のベッドに飛び込むと、ものの10秒で寝付いてしまった。

 そんなに眠かったのに、私のことを待っていてくれたんだなぁ……。



 ふとテーブルの上の紙、リリーのお絵描きの跡を眺めてみる。

 そこにはこのお屋敷のみんなの絵が、子供っぽいタッチで描かれていた。



 はぁ……。

 こういうのを見ちゃうと、改めて責任感を意識しちゃうよね。



 エマさんの言う通り、また何かの敵が現れるとしたら――

 ……私たちは、丁寧にひとつずつ潰していくしかない。


 でもそれが、きっと平和への近道なんだよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 身方、か? それにしても、大きな敵、か。 謎だ。
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