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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
715/911

715.突然の……

 それからは平穏な日々が続いた。


 平穏とは言っても、懸念なんてものはたくさんある。

 しかし私たちは、他から攻撃を受けない限りはひたすら自分たちを高めていくだけなのだ。


 ……個人の戦力アップ然り、街の繁栄然り。



「んー……。お城も結構、良い感じになってきたんじゃないかな?」


「そうですね。きっとアイナ様の力があってのことでしょう」


 私はルークと一緒に、目の前の大きなお城を見上げていた。

 王都から職人が大量に流れ込んできたこともあり、建物以外の部分もかなりのスピードで作業が進められている。


 このお城さえ完成してしまえば、マーメイドサイドの政治の中心地はここになる。

 そしてお城と言うのは国の象徴的なものだから、この完成を以って、『建国』を具体的に進める予定になっているのだ。


 そう考えると、私の国造りももう少し……というところまで来ていることになる。

 あとは転生者だの、ゼリルベインだのの問題が何とかなれば良いんだけど……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――失礼。

 少し、よろしいかな?」


 お城の外で建材の補充をしていると、私に声を掛けてくる人がいた。

 振り返ってみれば、そこには身なりの良い初老の紳士と、女の子がひとり立っている。

 どこかの教授とその教え子……みたいな感じかな。


「はい? こんなところで、どうしましたか?」


 ……特にこの場所で作業をするような人たちにも見えない。


 お城の見学にでも来たのかな?

 実際、見学に来る人はたまにいるからね。


 しかし私は女の子の方を見て、少し嫌な予感がしてしまった。

 これは――



「いや、私共はつい先日この街に来たばかりでね。

 見所の多い街だし、いろいろと見てまわっているんだよ」


 そう言われてしまえば、私としても悪い気持ちはしてこない。

 それなら折角だし、ガチャの泥沼にもハマっていってもらいたいところかな。


「そうだったんですか。

 この街は食べ物も美味しいですし、宿屋も立派ですよ。

 是非、ゆっくりしていってくださいね」


「うむ、そうさせてもらうよ。

 ……ところで君が、この街の責任者のアイナさんかね?」


「あ、自己紹介がまだでしたね。

 私がアイナです。この街で何か困ったことがあれば、是非教えてください」


「ははは、ありがとう。

 まぁそんなことも無かろうとは思うが――

 ……うん、今日は君に挨拶をしに来ただけなんだ」


「はぁ……。

 ちなみにあなたは……?」


「これは失礼。

 私はノーリ。王都から来た魔法学者だ。

 それでこっちは、私の教え子の――」


「……エマです」


「ノーリさんと、エマさんですね」


「またそのうち、声を掛けさせてもらうよ。

 それでは」


「……失礼します」



 そんな簡単なやり取りを済ませると、二人は街の方へと戻っていった。


 魔法学者か……。

 ヴィオラさんとセミラミスさんには魔法の研究をしてもらっているけど、さすがにそれ以上の人材では無いだろうなぁ。

 それなら私は、二人のことは記憶に留めておくまでにしよう。


 ただ、少しだけ気になることがあって――



「……アイナ様、今の方は?」


 少しの間を置いて、ルークが私に話し掛けてきた。

 しかし、私は知っている。


「教授と教え子……なんだってさ。

 ……ところでルーク、ずっと剣に手を掛けていたでしょ?」


「はい。何かあっても、すぐに入れるようにしていました」


「だよね。怪しいところ、あったもんね」


 ……特に女の子の方。

 何となく、今までの転生者と雰囲気が似ていると言うか……。


 強さとか性格とかでは無くて、この世界における存在感。

 少し浮世離れしたと言うか、少し違和感があると言うか……。


「一応、監視を付けておくことにします」


「そうだね。

 何かあれば、すぐに教えてもらおっか」


 実際のところ、誰が転生者かなんて、こちらからでは分からない。

 一番の特徴であるユニークスキルの有無を、鑑定スキルでは残念ながら調べられないのだ。


 しかしこうなってくると、あの教授風の紳士も気になってしまう。

 教え子の方が転生者だとするなら、紳士の正体だって疑わざるを得ない。


 ……女の子が転生してきて、もうそれなりの時間が経っている――……と言うのであれば、師弟関係でも理屈は通るんだけどね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 お城での作業も終わり、夜はお屋敷で一日の疲れを取っていた。

 緊張するべきときは緊張するけど、適度にストレス解消もしていかないといけない。

 懸念ばかりの日々を過ごしているのだから、こう言う時間を欠かすことは出来ないのだ。



「……ママ」


「ん? リリー、どうしたの?」


 椅子に座った私のもとに、リリーが目をこすりながらやってきた。


「何だか眠れないの……」


「え? 珍しいね。

 お昼寝、し過ぎちゃった?」


「んーん。

 今日はずっとミラと遊んでたから、それは無いの」


 ……ふむ?

 となれば何だろう。いわゆる状態異常とは無縁のリリーが眠れないだなんて。

 睡眠薬とかも効かない子だから、即座に解決する方法なんて無さそうだけど――


「それじゃ、少し遊ぶ?

 何しよっか」


「んー。お絵描き!」


「りょうかーい。

 紙とペンはこれで――」



 ……トントントン



 不意に、扉がノックされる音が聞こえてきた。


「ふにゅ?」


「あらら、誰だろ。

 こんな時間に、珍しいねぇ」


 そう言いながらドアを開けると、そこには第三騎士団の団員が立っていた。


「夜遅くに申し訳ございません。

 あの……アイナ様に、来客があるのですが……」


「え、こんな時間に?

 ……誰か知り合いかな」


「いえ、私は初めて見る方でしたが……。

 ただ、名前を伝えれば分かるはずだ……と言われました。

 エマ様……という方です」


「エマさん――」


 ……その名前には記憶がある。

 と言うか、今日の日中に会ったばかりである。



 ……やっぱり転生者?


 でも、それにしてはお行儀よく来てくれたものだね?

 この夜の時間帯は、あんまりお行儀が良いとは言えないけど……。

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[一言] 嫌な予感しかしねぇ けど、良いことだったらいいな。
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