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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
703/911

703.速攻

 ベルフェゴールが現れた場所。

 そこに最後に到着したのは、第三騎士団のルークだった。



「――アイナ様! 遅くなって申し訳ございません!」


「え? ルークってお屋敷の方にいたよね?

 むしろ早い方なんじゃ……」


「そう言って頂けると助かります!」


 これも人数が比較的少ない第三騎士団のメリットだろうか。

 街の護りもあるから全員がいるわけじゃないけど、それでも結構な人数が来てくれている。


 ルークはベルフェゴールの場所と姿を確認すると、団員たちに一瞬で陣形を築かせた。

 ……うん、とても綺麗に並んでいるじゃないか。


「今はブラッドフォードさんが交戦中だから、必要があれば援護してあげてーっ!」


「承知しました!」


 そう言うと、ルークは神剣アゼルラディアを抜き放った。

 神器を掲げ、比較的人数は少ないながらもひとつの騎士団を率いている。


 ……うーん、格好良いね!

 まるで何かの物語の主人公のようだ!


 対するベルフェゴールだって、何かの主人公になれる境遇ではあるんだけど――

 ……目的がもう、悪役そのものだからねぇ……。



 そんなベルフェゴールに視線を移してみれば、ブラッドフォードさんと剣を切り結んでいるところだった。

 今のところ、ユニークスキルは使っていないようだ。


 他にもまだ、厄介そうなスキルは出していない……?

 騎士団の団長クラスと剣で渡り合っているだけでも、かなり凄いことではあるんだけど。



「――愚かな侵入者よっ!!

 貴様の力はそれだけなのかっ!?」


「はっ! ぞろぞろと人数だけ揃えて来やがって!

 これでも食らえっ!!」



 ――……おっ!?


 とは思ったものの、ただの力を込めた一撃だった。

 しかし周囲の地面にはおかしなヒビが入る。


 いや、地味だけど凄いのか……。

 それを受け止めるブラッドフォードさんも、やっぱり凄いんだろうな……。



「うぅーん……。

 アイナさん、どうしますか?」


「私たちの目的を考えると、ちょっと微妙な感じですよね……。

 例の場所にも入っていませんし、セミラミスさんもまだ来ていませんし……」


 エミリアさんの言葉に、私は悩ましい返事をしてしまう。

 何を狙っているのかと言えば、転生者たちが使う虚無属性の魔法やユニークスキルの『解析』である。

 対・虚無属性の魔法を作るに当たって、セミラミスさんとヴィオラさんからはその『場所』への誘導を依頼されているのだ。



 ――特定の場所で、虚無属性の何かを使わせる。



 これはゼリルベインが生み出した転生者を、より効率的に、より安全に倒すためのひとつの布石なのだ。

 早ければ早いほど、こちらにとっては都合が良い。

 だから出来れば、今回で達成をしてしまいたいところなんだけど――


「……セミラミスさんが来たとしても、解析用の魔法陣は準備に時間が掛かりますからね……。

 ルークさんならともかく、ブラッドフォードさんは大丈夫でしょうか……」


 ブラッドフォードさんとベルフェゴールが対等に戦っている以上、ルークもなかなか手を出せない。

 ちょっと面倒だけど、団長同士のプライドもあるわけだからね。

 街の平和を守るためであったとしても、その辺りはどうしても出てきてしまうのだ。


 しかしベルフェゴールも焦ってきたのか、少しは動くようにしたようだ。



「ちぃ……っ!

 辺境の街の騎士団風情が、生意気な……っ!!」


「ほう! 貴様にはここが辺境に見えるのかっ!?

 この街はアイナ様のおかげで、大陸一の街になろうとしているのにっ!!?」


「……何だと!? おいおい、そんな話は聞いてねぇぞ……!!

 へへっ、俺も良い街を支配しようとしていたもんだぜっ!!」


 そう言うと、ベルフェゴールは強引にブラッドフォードさんの剣を弾いた。

 そしてそのまま、自分の剣を地面に突き立てる。


「ぬぅっ!?

 何だっ!? 降参するのかっ!?」


 突然の奇行に、ブラッドフォードさんはついつい距離を取ってしまう。



 それはきっと、場合によっては正解の行動だ。

 しかし今回は違っていて――



「へへっ、食らえ! これが俺の力っ!!

 ――『怠惰の(レイジネス・)監獄(プリズン)』ッ!!」


 その瞬間、ベルフェゴールを中心にして、辺りには白い波動が(ほとばし)った。

 同心円のように幾重にも、素早く周囲に広がって、外へ外へと向かって行く――



「……今のはユニークスキルっ!?

 効果は――……うえぇっ!?」


 波動の行方を地平の彼方まで追いかけた後、改めて眼下を見てみれば――

 ……その場にいた全員が、地面によろよろと座り始めているではないか。



「……何か疲れた……。休も……」

「だりぃ……」

「眠ぃ……。寝ちゃおうかな……」



 ……そんな声が、弱々しくちらほらと聞こえてくる。

 これがベルフェゴールのユニークスキル、『怠惰の(レイジネス・)監獄(プリズン)』の効果……?

 恐らくは状態異常の扱いになるんだろうけど――



 ……と、言うと?



 慌ててルークのいた場所を見てみれば、そこにはもう、ルークの姿は無かった。

 そして一瞬後、ベルフェゴールのいた場所で、剣が交わる音が聞こえてくる。



「――ちぃっ!?

 おいおい、何でお前には俺の力が効かねぇんだよっ!?」


「あんなもの、私に効くわけが無かろうっ!!」


「答えになってねぇぞっ!?」


 ……確かに。

 でも答え合わせをしてしまえば、レアスキルの効果なんだろうけどね。


 ルークが持っている『光の祝福』。

 これは光属性、闇属性、虚無属性の状態異常とダメージを無効化してしまうと言う優れものなのだ。



「お前の力は危険だ!

 私がここで、始末してやる!」


「おいおいおーいっ!?

 剣の腕も、さっきのおっさんよりずっと上じゃねぇかっ!!」


「お褒めに預かり、光栄だっ!」



 ――ガキイィインッ!!



 ひときわ大きな音が響くと共に、ベルフェゴールの剣は弾き飛ばされた。


 交戦を始めてから、3分ほどと言ったところだろう。

 やはりルークとベルフェゴールでは、明らかに格が違ったようだ。


「き、聞いてねぇよ……。

 こんなやつ、勝てるわけねぇだろーがっ!!」


 ベルフェゴールは敵の前だと言うのに、そんな弱音を吐き始める。

 ……あれ? ユニークスキル、まだひとつしか使っていないよね……?



「あなた、奥の手がもうひとつくらいあるでしょう?

 ユニークスキルで何か、あるんじゃないの?」


「はぁ!? まだ誰も死んでいないだろーがっ!!」


「……え?」


「……いや。

 目の前のこいつ以外、全員座り込んでいるから……殺したい放題じゃないかっ!!

 それなら手当たり次第に殺してしまえば――」


 そう言うと、ベルフェゴールは弾き飛ばされた剣を拾いに走り始めた。


 ……なるほど。

 もうひとつのユニークスキル、効果は分からないけど死体を使う何か――



「そんなもの、使わせるわけにはいかない!!

 アルケミカ・クラッグバースト!!」



 ――ズガアアアアアアアァンッ!!



「うぉおおっ!!!?

 な、何だぁああっ!?」


 ベルフェゴールが拾おうとした剣のあった場所。

 そこは私の魔法によって、深く大きな穴が一瞬で空いてしまった。


 そしてその爆風と共に、ベルフェゴールは少し下がったところでしりもちを付いてしまう。

 私は素早く地面に下りて、気の抜けたベルフェゴールの元に一気に詰め寄った。



「――ごめんね。あなたのユニークスキルは危険すぎる。

 だから、ここでおしまい。『神託の逆流(オラクル・リバース)』ッ!!」


「なっ、何を――」




 ……私が『怠惰の(レイジネス・)監獄(プリズン)』の影響を受けなかったのは、恐らくは上空にいたためだ。

 転生者に狙われている私までが、こんなぐだぐだな状態異常になってしまえば目も当てられない。


 どうやら壁とかの遮蔽物もすり抜けてしまうようだし――

 ……それならここは、さっさとそのユニークスキルを消してしまうのみ。


 虚無属性の解析は出来なかったけど、本人からは少しくらい、情報を引き出すことも出来るでしょ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 600万PVおめでとうございます! ベルフェゴールさん死霊使いだったら骨ワンチャン・・・?
[一言] 今回で解析は無理だったか
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