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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第3章 鉱山都市ミラエルツ
60/911

60.早速な優男

「おはよー」


「「おはようございます」」


 いつもの朝。食堂に向かう前に、部屋の前のスペースで二人と落ち合う。


「エミリアさん、お腹大丈夫ですか? 胃もたれとかしてません?」


「え? 大丈夫ですよ、何でですかー?」


 いや、昨晩はたくさん食べた後にデザートも大量に食べていたから――なんだけど、特に問題は無さそうだ。


「たくさん食べてたからどうかなーって。それにしてもあんなに食べてそのスタイルを維持できるのは羨ましいですねぇ……」


 まじまじと上から下まで眺める。

 何であんなに食べて、こうなるんだろう? やっぱり何かの法則を無視してるんじゃないかなぁ。


「前にも言いましたけど、これはお祈りで力を使うから――」


「お祈りって、身体を動かすんですか?」


「いえ……。でも、頭の中ではたくさん動いていますから!」


 前回と同様、やっぱり理屈が分かりませんでした。




「アイナちゃん、こっちこっち!」


 食堂に着くと、ジェラードがテーブルを確保するようにして座っていた。


「おはようございます、朝からどうしたんですか?」


「うん。報告と、一緒に食事でもしようかと思ってね♪」


「報告、ですか?」


 何の報告だろう? とは思いつつも先に朝食を注文する。

 エミリアさんとルークの注文まで終わらせてから話を戻した。


「――えっと、何の報告でしょう?」


「ほら、昨日のダイアモンド原石。あれ、売ってきたから!」


「へ?」


 ジェラードはアイテムボックスから皮袋を取り出した。


「原石の大きさ的には金貨30枚くらいなんだけど、質も凄い良かったし、ちょっとしたルートで捌けたから――金貨60枚になったよ♪」


「ろくじゅう……!?」

「え? 二倍ですか……? ジェラードさん、すごい……」

「むぅ……」


 三者三様の反応。

 そりゃ確かに私が作ったからS+級だったんだろうけど、それにしても二倍ですか……。


「出しておくと危ないからさ、アイテムボックスにしまってね」


「あ、そうですね! しまっちゃいます!」


 ジェラードから皮袋を受け取りながら、そのまま私のアイテムボックスに入れる。

 ちなみに金貨60枚っていうのは、大体私の昔の年収くらいの価値なんだよね。

 さすがにそんなものを出しっぱなしには出来ないぞ……。いや、それにしても炭から年収分のお金が生み出せるとは……やっぱり凄いな、錬金術……。


「そうだ、ジェラードさんの手数料は?」


「ああ、今回は要らないよ。その内にお願いするかもしれないけど、まだまだ無料キャンペーン中さ♪」


「何とも申し訳ないです……。それじゃ、朝食代くらいは出させてもらいますね」


「うん、ありがとう。それで十分だよ」


 そうこうしている内に朝食が運ばれ、賑やかに食卓を囲むことになった。

 ガルーナ村を出て以来ずっと三人だったから、人数が増えるっていうのも新鮮なものだよね。

 ジェラードとはずっと一緒ってわけじゃないけど、機会があれば出来るだけ一緒に食べることにしよう。ナンパとか口説いたりしなきゃ普通に良い人だし。




「――ふぅ、ごちそうさま。それじゃ僕はお先に失礼するね」


「そうですか? 今日は何をするんですか?」


 周りを見れば鉱山夫たちが賑やかにしているし、今日は鉱山の仕事をするのかな?


「ああ、うん。これから眠ってくるよ。昨晩はずっと眠っていなくてね。――その後は、起きてから考えようかな」


「え、眠ってなかったんですか?」


「うん。ちょっとした伝手に連絡を取っていたら、タイミングを逃してしまってね。でも、早々に売れたから良かったよ」


 そうだよね。夜遅くまで快気祝いをしていて、それで朝食のときにはもう売り終わっているんだもんね。一体どんな早業を使ったのだろう。


「ちなみにその伝手って――危険なヤツじゃないですよね?」


「ああ。アイナちゃんが考えるような危険なものではないよ」


「……え?」


「ふふふ、まぁ心配は無用さ。そこのところは信用して欲しいかな」


「うーん、分かりました。それじゃ、本当にありがとうございました」


「何の何の。それじゃまたねー」


 ジェラードは手を振りながら去って行った。




「はぁ、それにしても金貨60枚かぁ……。凄いですねぇ……」


「私としては売ってきたジェラードさんも凄いと思いますけど、それを一瞬で作るアイナさんも凄いと思いますよ……」


「何とも私たちの無力さを感じてしまいますね」


「そうですね、ルークさん。慰め合いましょう」


 ルークとエミリアさんが何やらショックを受けている。

 まぁこういう分野はそうかもしれないんだけど、逆に私は戦闘方面がからっきしなわけだし。


「人それぞれ、得意分野が違うってことですよ。私が出来ないことを、お二人は出来るじゃないですか」


「「まぁ……」」


 うお、二人の息がぴったりすぎて怖いぞ。

 うーむ、何とも掛ける言葉が見つからない。――けど、進めよう。


「さてと、今日は崩落事故のお礼ってことで、コンラッドさんに夕食にお呼ばれしているんですよね。

 16時には宿屋にいなきゃいけないから、依頼を受けるのは止めておきましょうか」


「そうですねー。一件くらいなら受けられそうですけど、何かあったら困りますしね」


「では今日は街を歩くことにしますか? アイナ様、どこか行くところはありますでしょうか?」


「うん。えぇっと、防具屋で鎧を買うのと――、後はルークが行ったっていう鍛冶屋に行ってみたいな」


「あ、例の魔法剣用の剣――ですね」


「そうそう。機会があったら早めに見ておきたかったんだよね」


「アイナさんが何でそこに興味を示すのか、分からないんですけどー?」


「もしかして、魔法剣を覚えるとか……」


 エミリアさんとルークが不思議そうな表情を浮かべる。

 魔法剣なんて覚えるわけ無いでしょー!?


「いやいや! もちろんじん――」


 ――ぎを作る参考に……と、言い掛けてしまった!


「……ごほん。えぇっと、魔力の伝導というのに興味があるので、見てみたいなと。もちろん錬金術的な意味で!」


「おお、なるほど。そういうものも錬金術に関係するんですね」

「勉強熱心ですね! 私も見習わないと!」


 よし、誤魔化せた! というか嘘は言ってないからまったく問題無し!


「――というわけで、今日の予定はそんな感じで良いかな?」


「はい、問題無いです」

「はーい」




 そのあとはお店の開く時間までしばらくあったので、飲み物を追加してまったりのんびりと過ごすのを楽しんだ。

 はぁ、やっぱりこういうひと時があると一日が潤うよね。


 はぁ、まったりまったり。

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