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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第10章 国へと至る道
571/911

571.VS.王国軍~⑳終戦~

 昼過ぎ、私はエミリアさんとジェラードと一緒に、街の様子を見てまわることにした。

 軽く確認したところでは、今日は特に攻撃を受けておらず、どこも平和なものだった。


 ――ただひとつ、街の東側だけは例外だったけど……。



「……賑やかですね」


「そうですねー」


「ずいぶんと人が多いねぇ♪」


 ……街の東側と言えば、投降した敵を集めている場所だ。

 ここには1万人以上の人がいるから、基本的にはそれだけでも大変な状態。

 しかも今は、昨晩の魔導具による砲撃で、想定外の混乱も起きてしまっているのだ。


 精神的なショックを受けている人も多く、自分の故郷に帰りたいと騒ぐ人も多い。

 奴隷紋は一通り刻み終わったところだけど、こんな状態であれば帰してあげたくもなっちゃうんだよね……。



 そんな人混みの中、私たちはどうにかポエールさんを見つけることが出来た。

 ポエールさんは商会の職員と一緒に、忙しそうに働きまくっている。


「ポエールさん!」


「おお、アイナさん!

 昨晩もずいぶんと活躍されたそうで……!」


「いえいえ!

 ポエールさんたちも無事で良かったです。亡くなった方は残念ですが……」


「そうですね……。

 しかし大きな戦争なんです。生き残った私たちが、その方たちの分まで前に進んでいかなければ……!」


 ……私がマーメイドサイドの街を作らなければ、そもそもこの戦いは起こらなかったに違いない。

 しかしこの街を作ろうとした時点で、私には命を背負う覚悟は出来ている。

 だからこそ、私たちは引き続き、前へ前へと進んで行かなければいけないのだ。



「――そうだ。一応、お薬を持ってきたんですよ。

 心を壊しちゃうと、身体も壊れちゃいますから」


「それは助かります……。

 落ち込んでいる方も多くて、なかなかこちらも大変で……」


 ポエールさんが少し肩を落としながら言うと、エミリアさんが言葉を続けた。


「それなら私、ここに残りますね!

 どうにもならないこともあるでしょうけど、話を聞くくらいなら出来ますので」


「ん、そうですね……。

 分かりました。エミリアさん、お願いします」


「もしお願いできるのなら、エイブラムさんや孤児院のみんなを呼んできてもらえませんか?

 お手伝いできることもあるでしょうし、こういうときは助け合いが大切ですから!」


「エミリアさん、ご助力ありがとうございます!

 それはポエール商会にて承りましょう」


「それじゃここはエミリアさんにお任せしましょう。

 もし戦いになったら、遠慮なく呼びに来ますけどね!」


「あはは、そのときはお気軽に♪」



 戦いも沈静化しているし、エミリアさんが裏方にまわっても問題は無いだろう。

 ジェラードは引き続き私と一緒にいてくれるから、エミリアさんには存分に人助けをしてもらいたいところだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――ドーン……ッ



 街の南側を歩いていると、遠くの方から爆発音が聞こえてきた。

 敵の攻撃……ではなく、グレーゴルさんが敵を(いぶ)り出しているところなのだ。


「うちの部隊も、隠れられそうなところを探しているからね♪」


 満足気に頷くジェラード。彼の部隊も引き続き、こっそり大活躍中だ。

 今回の戦いは明確な終わりが見えなくなってしまっているから、今は敵の残存戦力を全滅させることに注力しているのだ。


「敵の大将が白旗を降って、『降参ですぅ』とか言ってくれれば分かりやすいんですけどね……」


「あはは、それは確かに分かりやすいねぇ♪」


 戦意のある敵がいる状態で警戒を解いたら、嫌な事件が起きてしまうかもしれない。

 判断ミスから起きる事件は避けたいから、ここは慎重に行かないとね。



 そのまましばらく街壁の上を歩いていると、いつの間にやら南西側の拠点に辿り着いてた。

 ここは今回の戦いで、私が最初にいた場所。出来れば終わりもここにしたいところだ。


「アイナ様、巡回ご苦労様です!」


「あ、お疲れ様ー。

 今回はあなたのパーティにも助けてもらえて、本当に助かったよ」


 私に声を掛けてきたのは、戦況報告の魔法使いだった。

 このパーティの5人が各所に散って、リアルタイムで報告をしてくれたおかげで、この戦いもスムーズに進めることが出来た。

 今後とも、この人たちにはいろいろと手助けをしてもらいたいところだ。


「いえ、こちらこそ貢献できて嬉しいです……!」


「そう言ってくれると嬉しいな。

 ところで何か、変わったことはあった?」


「南側と西側から、数人の敵兵を発見したとのことで、討伐隊が派遣されました。

 東側では5回ほど、敵の投降を受け入れています」


「ん、了解っ。

 ……このままいけば、戦いは終わり……ですよね……」


「はいっ!」

「そうだねぇ♪」



 戦いが終わると言っても、やることはたくさん残っている。

 今回の戦いの整理も必要だし、あとは次の戦いを起こさせないようにするのも大切だ。


 ……しかし私たちは、できる限り被害を抑えて、戦いを無事に勝ち抜くことが出来たに違いない。

 それなら、ここはもう――



「……クラーラさんはいる?」


「はい、ここに!」


「おぉっと、見えてませんでした!

 まだ敵兵はいるかもしれないけど、勝鬨(かちどき)をあげてしまいましょう」


 戦いの開始を告げたのが私なら、戦いの終了も私が告げよう。

 このあと続く責任をしっかり果たすためにも、その仕事は私のものに違いないのだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――準備ができました!」


「それでは、いきまーす」



 穏やかな夕方。

 風は冷たく、さっさとお屋敷に戻りたい空気が流れる。


 しかしこの戦いも、そろそろおしまい。

 ならばここはひとつ、しっかり締めておくことにしよう。



「――……私は『神器の魔女』アイナ・バートランド・クリスティア。

 マーメイドサイドに暮らす皆さま、マーメイドサイドにいらしている客人の皆さま。

 昨晩、私たちはグランベル公爵家の部隊を壊滅させました。

 大賢者に英雄、そして強大な魔導兵器――王国から持ち込まれたあらゆる脅威を、私たちは取り除くことに成功しました。

 王国軍の主たる戦力はすでに無く、敗残兵を残すのみ――

 ……従って、私はここに、この戦争の勝利を宣言します!!!!」



「……うおぉおーっ!!?」

「やった……! 勝利だ……!!」

「護りきれたーっ!!」

「終わりだ! やったーっ!!」

「ちくしょーめーっ!!」



 どこからともなく、いろいろな声が聞こえてくる。

 もちろん南西側の街壁では歓喜が湧き起こっているが、街の中でも住民たちが外に出て、手を取り合って喜んでいる。


 遠くに見える街壁の上には、踊っている人なんかもいたりする。

 ……ちょっとはしゃぎ過ぎじゃないですかね……。


 しかし勝ったとは言え、しばらくは警戒を絶やすこともできないだろう。

 まだまだ油断しきるわけにはいかない。


 それでも今、ようやく戦いに区切りをつけることが出来たのだ。

 それも勝利という形で……。



 拡声魔法での宣言はこれだけでおしまい。

 その後は夜までの間に、結構な数の投降者が出てきたらしい。



 一矢報いようとしていた人、逃げようとして思うように逃げられなかった人、そして最後に心が折れた人――



 ……結局私たちは、そこら辺の対応で、やることがまた増えてしまった。

 戦いに勝ったら、私には飛んで行きたい場所があったのに……。


 しかしまぁ、雑多な作業までを含めてこの戦いなのだ。

 だから最後まで、しっかり頑張らないと。


 このひと山さえ越えれば、また平和が蘇えるわけだからね。













◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――お迎えにあがりました」


「うむ、待っておったぞ」



 月が明るい冬の夜。

 この戦いの最後を締めくくる私たちの会話は、ただそれだけだった。

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