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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第10章 国へと至る道
553/911

553.VS.王国軍~②矢の雨~

 私の放った初撃――アルケミカ・クラッグバーストは、轟音と共に、空を飛んでいる一番立派な騎士を撃ち落とした。

 恐らくは指揮官。一人を失っただけで崩れるわけも無いだろうが、初撃の成果にしては上々だ。


 それ以外の空舞う騎士たちは、凄まじい轟音の余韻にふら付き、この場から一旦離れようとしていた。


 ……しかし動きは鈍い。

 ならばここは――



「アルケミカ・クラッグバースト!!」


 ――ドゴォオオォオォオオォンッ!!


「……ぐぁっ!!」



 再びの強烈な魔法に、二人目が撃墜された。


 今ならまだ、撃てば撃っただけ敵を落とすことができる。

 出来るだけここで、厄介な空兵たちを倒しておかなければいけない。



 街壁の遥か下を見てみれば、多くの騎士や兵士が未だに轟音の余韻を引きずっていた。

 大声を張り上げての命令も出ているようだが、耳がやられてしまっていては、上手く聞き取ることも出来ないだろう。

 従って今は、対空と同時に、対地への攻撃も絶好のチャンスなのだ。



「――弓隊! 全員、撃てぇええええっ!!!!」


 街壁の上、私たちから少し離れたところから、勇ましい大声が聞こえてきた。


 あの声は味方の弓隊の隊長だ。

 今回の作戦のひとつとして、かなりの人数の弓兵を街壁の上に配置している。

 その中には弓のプロもいるが、この3週間ほどで弓の訓練をみっちりした人たちもいる。


 とにかく遠距離から攻撃をして、こちらに余計な被害が出ないようにする――これが、今回の作戦のひとつなのだ。


 隊長は引き続き弓兵たちを鼓舞しながら、自身も巨大な弓を撃っている。

 逞しい腕によって繰り出される矢は、大きな音と共に眼下の敵を豪快に撃ち抜いていく。


 そして街壁の上の弓兵たちからも、まるで雨のように、敵の頭上へと矢が射られていった。



「く、くそ……」

「怯むな、突っ込め……!」

「ぐぁっ!?」



 通常であれば敵ももう少しまともな動きを見せそうだが、今はまだまだ、開幕の轟音の影響が残ってくれている。

 敵の戦線は乱れ、今はまさにこちらのターン。

 そしてさらに、激しく降り注ぐ矢は敵の出鼻を完全に挫いてくれていた。



 ――さて。それじゃ私も、仕事の続きをすることにしよう。



「アルケミカ・クラッグバースト!!」


 ――ドゴォオオォオォオオォンッ!!


「ぐぁっ!!?」


「あぁっ!?」

「団長っ!?」



 少し前まで、私に名乗りを上げていたトレヴァーさんをあっさりと撃ち砕く。

 ごめんね、敵対しちゃったからね。最初に言った通り、容赦はしないからね。


 ……まずは頭を叩く。末端はあとで良い。

 とにかく指揮系統で重要そうな人を見つけたら、即座に倒してしまうのだ。


 そして合間を縫って、私は空への攻撃も忘れない。

 2体、3体と確実に撃ち落としていく。



 ……ああもう。これじゃ完全に人間兵器だよ……。



 地上は弓隊に任せて、私は空中の敵をどうにか10体ほど撃ち落とした。

 倒した空兵は、これでようやく全体の十分の一。さすがに強力な魔法があるとは言え、それ以上はなかなか捗ってくれない。


 しかし初っ端としては上々だ。

 そろそろ次の局面に、目を移すことにしよう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――正直、私は何だかんだで強くなったと思う。


 そしてまだまだ、今回の隠し玉は用意しているのだ。

 この日のために、一生懸命覚えた魔法もあるからね。


 ……ただ、そうは言っても私だけで戦えるほど戦いは甘く無い。

 例えば長距離に渡るこの街壁を、すべてを守れるわけもない。

 正直、十分の一すら難しいだろう。


 しかし、私には頼りになる仲間がいる。

 しかも空での戦いとなれば、ヴェルダクレス王国の中でも1、2を争っていた程の実力者がいるのだ。



「はーっはっは!!

 懐かしいな、ヴェルダクレスの裂空騎士団よ!!」



 大きな声を上げながら、ポチに乗ったグレーゴルさんが現れ、私のまわりを旋回した。

 遠目には見ていたけど、グレーゴルさんも既に数体、敵の空兵を倒してくれている。


 さすが王国が誇っていた、七星の元メンバー。

 戦いとなると、やはりとんでもなく頼りになるものだ。


 ……そしてその傍らには、可愛い小さな女の子が寄り添っていた。


「ママーっ!!」


「リリー! グレーゴルさんと、よろしくね!!」


「なの!!」


 今回は何と、グレーゴルさんとリリーのコンビが結成されていた。

 グレーゴルさんがポチを操り、そこにリリーが同乗しているのだ。


 うーん。リリー、凄く楽しそうだなぁ……!

 ……って、いやいや。遊びじゃないんだけどね。



 グレーゴルさんはリリーを乗せて、そのまま街壁を沿うように飛んで行く。

 私のいる場所から少し離れたところでは、矢を撃っているにも関わらず、敵も何とか街壁に接近しようとしていた。

 そしてそこから梯子を掛けて、街の中に入ることを狙っているのだ。


 ……うん、入られたら大変だよね。

 だからこそ、グレーゴルさんとリリーには高い機動力を活かして、それを制してもらうのだ。



 私が様子を見ている中、リリーがポチの上から、敵に向かって何かをばら撒いた。



 ――ドカーンッ!!


 ――ドゴーンッ!!


 ――スゴォオオンッ!!



「う、うわぁっ!?」

「ひぃっ!?」

「な、何だーっ!?」


 遠くから、爆音と共にたくさんの悲鳴が聞こえてくる。

 実はこれ、私の作った爆弾をリリーにばら撒いてもらっているのだ。


 リリーはどこででも、『疫病の迷宮』を開くことができる。

 それを極狭い範囲で開くようにすると、使い勝手は少し違うものの、アイテムボックスのような使い方が出来るのだ。

 つまりそれを応用すると、ポチの上から、大量の爆弾を投下することができてしまう。


 量を使えば、それこそ絨毯爆撃のような――

 ……この世界、この時代においては、まさに圧倒的な空中兵器と化すのだ。


 余談ではあるが、ポチのように飛べる魔獣が他にいれば、私も参加することが出来ていた。

 しかし残念ながら、人を乗せて飛べる魔獣は、こちらにはポチしかいないのだ。

 もう一体でもいれば、作戦はずいぶん変わったんだろうけど――


 ……そんなことを考える間にも、グレーゴルさんとリリーは北に向かって爆撃を続けていった。

 この二人にはもうひとつ、役目を持ってもらっている。

 私たちと合流するのは、それが済んだあとになるだろう。



「――アイナ様! リリー様たちのおかげで、西側は一旦攻撃が収まったようです!」


 私に報告をしてくれたのは、最近知り合った魔法使いの一人だ。

 5人ほどのパーティを組んでいて、特殊な魔法で長距離間でのやり取りができるのだと言う。


 イメージ的には、モールス信号を使う……みたいな感じかな?

 この戦いではその技術を見込んで、戦況報告をしてもらっているのだ。


「了解っ!!

 南側から東側はどう?」


「南側が厳しいそうです!

 壁に梯子を掛けられた上、敵の魔法使いも多いらしく……。

 東側はマリサ姉妹の活躍で、まだ余力があるようです」


「……うん? マリサ姉妹……?」


 唐突に、聞きなれない名前が出てきた。

 そんな人たち、味方にいたっけ?


「あれ? 結構有名なんですけど、アイナ様はご存知ありませんか?

 マリサ、ミリサ、メリサ、モリサの四人の魔法使いたちを――」


「いや、知らないけど……」


 ……有名、なの?

 まぁ、戦いが終わるなり、余力があったら会ってみることにしよう。

 今はそれよりも、街の南側だ。



「それでは私がサポートしてきます。その間、ここはお願いできますか?

 私とエミリアさんで南側に行ってきますので!」


「分かりました、お任せください!!」


 力強く返事をしてくれたのは、何故か後ろに控えていたエイブラムさんだった。

 しかしこう見えてエイブラムさん、なかなかトリッキーというか、技巧派の魔法を持っているから頼りになるんだよね。

 最初に使った遮音結界とか、私の知らない魔法もたくさん持っているし――


 ……ちなみにその遮音結界、大きな音を立てる作業をするときに、近所迷惑にならないように覚えたものだったらしい。

 覚えた理由が何だか、いちいち微笑ましかったりして。


 ――ま、それはそれとして。

 この近くには弓隊の隊長もいるし、一旦任せて南側に急ぐとしよう。



 ……ざっと見渡せば、敵の攻撃も徐々に強くなってきている。

 矢も多く射られ、魔法も多く撃ち込まれているようだ。


 今はこちらの作戦通りに進んでいるとしても、そもそもがギリギリの戦い。

 焦らず、油断せず、途中途中できつい一撃を放ちながら、引き続きこのペースを維持して、戦いを進めていくことにしよう。

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