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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第10章 国へと至る道
547/911

547.神器の素材確認

 第2回神器検討会議はあっさりと終わり、そのあとは少し雑談をしてから解散した。

 部屋に戻ってから身のまわりのことを済ませ、ふとテーブルの上を見ると、封筒がひとつ乗っている。


「――ああ、そうだ。

 アイーシャさんから手紙が来ていたんだっけ」


 内容はおそらく、ヴィクトリアの件だ。

 私がクレントスに戻ったとき、何でヴィクトリアがあんな森の中にいたのか――

 ……でもその件は、少しだけ置いておこうかな。


 せっかくこれから作る神器も決まったところだし、今はそちらを優先しておきたい。

 優先と言っても、素材を調べるくらいなんだけど。



「……さて」


 アイテムボックスから杖を取り出して、『安寧の魔石』の数を念のため確認する。

 きっちり術の反動を抑える分は埋まっているから、準備はオーケーだ。


「それでは参りますか。

 第二の神器の素材を調べに――」


 ユニークスキル『英知接続』から『創造才覚<錬金術>』を流れで使う。

 一瞬の時間が空いたあと目の前にウィンドウが表示された。


 ----------------------------------------

 【『名称未定神器』の作成に必要なアイテム】

 ・オリハルコン×7

 ・ミスリル×3

 ・火竜の魂×1

 ・炎の魔導石×32

 ・無垢の魔石(特大)×32

 ・生命の実×1

 ・宝飾杖×1

 ・特殊条件<透色の瞳>

 ・特殊条件<希望と未来の宣言>

 ・特殊条件<自由意志の宣言>

 ----------------------------------------


 ……はい。

 エミリアさん用の神器はこんな感じの素材だ。


 特筆すべきは『無垢の魔石(特大)』……かな。


 私は一応、『無垢の魔石(中)』ならひとつだけ持っている。

 それはグレーゴルさんの死んでしまった魔獣、ミケの死体から出てきたものだ。

 強引に押し付けれられたものだけど、貴重なものであることは間違いないわけで……。


 ……しかしその貴重なものが、神器を作るにあたっては32個も必要になる。

 よくよく見たら、大きさも『中』じゃなくて『特大』だし。


 他の素材はと言えば、『炎の魔導石』の32個以外は一通り揃ってしまっている。

 『特殊条件<透色の瞳>』は神剣アゼルラディアのときにクリア済みだし、宣言ならすぐに調べることができるから問題無しだ。


「ま、『炎の魔導石』と『無垢の魔石(特大)』なら、お金を掛ければ集まるかな。

 この大陸だけで無理なら、交易を利用して集めれば良いわけだし……」


 ……幸いなことに、お金ならある。

 そして、貴重な素材を集められる立場にもいる。

 残りの素材がこれだけれあれば、きっと第二の神器も比較的スムーズに作ることができるだろう。



「それではお待ちかね。

 次は第三の神器の素材を――」


 ……三番目の神器は、私用である。

 これを持つことで、私はとても強くなることができるはずだ。

 まぁ、作ることが出来ればの話なんだけどね。


 ユニークスキル『英知接続』から『創造才覚<錬金術>』を流れで使う。

 一瞬の時間が空いたあと、目の前には再びウィンドウが表示された。


 ----------------------------------------

 【『名称未定神器』の作成に必要なアイテム】

 ・オリハルコン×1

 ・ミスリル×1

 ・氷竜の魂×1

 ・光の封晶石×1

 ・闇の封晶石×1

 ・火の封晶石×1

 ・水の封晶石×1

 ・風の封晶石×1

 ・土の封晶石×1

 ・奈落の欠片×1

 ・虚ろの石×1

 ・生命の実×1

 ・宝飾品×1

 ・特殊条件<透色の瞳>

 ・特殊条件<虚実と奈落の宣言>

 ・特殊条件<時と空間の宣言>

 ・特殊条件<束縛と不変の宣言>

 ----------------------------------------


 ……はい。


 『宝飾品』が入っているのは、形状を指輪にする予定のためだ。

 指輪は剣や杖に比べると質量が少ないから、オリハルコンとミスリルは少なくて済むけど――


 ……それにしても、種類がちょっと多いかな。

 でも案外、見たことのあるようなものばかりだし……。

 特に封晶石なんて、『土の封晶石』以外は全部揃っているからね。


 そうなると、あとは『奈落の欠片』と『虚ろの石』が問題か。

 それじゃ、もう少し調べてみることにしよう。


 えい、かんてーっ


 ----------------------------------------

 【奈落の欠片】

 奈落の底に落ちている黒色の結晶

 ----------------------------------------

 【虚ろの石】

 信仰の力が結実した不思議な石

 ----------------------------------------


 ……はい! よく分からない!!


 ちなみに詳しく鑑定しても、これ以上の情報は出てこなかった。

 やはり希少な素材……ということになるだろう。


 ……うーん、『奈落の欠片』は見た感じ、どこかのダンジョンに奥にでもあるのかな。

 となると、世界に散らばる広大なダンジョンを、ひとつひとつ探索しなければいけないわけで……。

 でも広大なダンジョンの中、膨大なアイテムの中から特定のひとつを見つけ出すっていうのも無理難題だよね……。


 逆に『虚ろの石』の説明文には『信仰』って入っているから、神剣アゼルラディアで使った『浄化の結界石』みたいな感じになるのかな。

 あのときは、王都のルーンセラフィス教の大聖堂で作ってもらったんだよね。

 まぁ、とりあえずはエミリアさんに聞いてみることにしよう。



 ――神器の素材を調べ終えると、やたらと強い睡魔が襲ってきた。

 術の反動は完全に抑えていたはずだから、これはただの疲れだろう。


 アイーシャさんの手紙を読むのも少し難しいし、手紙の件は明日にまわすことにしようかな……。


 ……うん。

 それじゃ、おやすみなさーい。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ママー。朝なのー」


「……うみゅ?」


 まどろみの中、身体の揺れに気が付いて起きると、私はリリーに起こされていた。

 窓の外からは明るい光が射し込んでおり、なるほどもう朝食の時間のようだった。


「今日は一緒に、朝ごはんを食べるの!」


「そうだねー。

 ……それじゃ急いで準備するから、待っててくれる?」


「なの!」


 昨日までテレーゼさんが泊まっていた関係で、ここ数日はリリーと話す時間がかなり減ってしまっていた。

 交易のための面会も終わったことだし、今は改めて、ひと段落した感じなのかな?


 そうとなれば、リリーともしっかり遊んでおかないとね!

 リリーも最近、凄い気を利かせてくれるし、私も甘えないようにしていかないと。



 ――食堂に行くと、エミリアさんがゆっくりとお茶を飲んでいるところだった。

 食堂にエミリアさん。……うん、いつもながら安心する光景だ。


「おはようございまーす」


「おはようございます!

 今日はリリーちゃんと一緒なんですね」


「おねーちゃん、おはよーなの。

 今日はママがね、たくさん遊んでくれるの!」


「わぁ、良かったねー♪」


 私が席に着くと、ミュリエルさんがお茶を運んできてくれた。

 そしてそのまま朝食の配膳が始まる。



「――あ、そうそう。

 昨日の夜、神器の素材を調べたんですよ」


「早速ですね♪ どうでした? 集まりそうですか?」


「エミリアさんの方は、『無垢の魔石(特大)』を32個――……これがやっかいですね。

 でもお金と時間を掛ければ、多分大丈夫かなって」


「と、特大が32個ですか……」


「大以下でも、錬金術で特大にできますから安心してください。

 何でもかんでも買いまくれば、問題は無いと思いますよ」


「ひゃぁ……。さすが富豪ですね……!」


「ふふふ。きっとこの収入も、神器を作るための布石だったのでしょう」


「実際、神器って国宝みたいなものですからね……。

 ところで、アイナさん用の神器も調べたんですか?」


「はい。こっちは難しそうなのがふたつあって……。

 まずは『奈落の欠片』ってやつなんですが、これはダンジョンにでもあるのかな……?」


 そう言いながら、昨日の鑑定結果のウィンドウを宙に映す。


「ふむぅ……。

 ダンジョンのことなら、リリーちゃんに聞いてみるのはどうでしょう?」


「……おぉ、それは灯台(もと)暗し。

 ねぇ、リリー。『奈落の欠片』ってアイテムを知ってる?」


「ん~。……それ、きらーい」


「そうなんだ――

 ……って、知ってるの!!?」


 予想外の答え。

 確かに少しは期待していたものの、まさか普通に知っているだなんて。


「ママ、あんなのが欲しいの?

 私のおうちに入って良いなら、あとで持ってきてあげるの」


「アイナさん、早速ひとつクリアですね!」


「えぇー……、良いのかなぁ……。

 ……ところでリリー、何で『奈落の欠片』が嫌いなの?」


「私の邪魔をしてたからなの!

 ねぇ、ママ。私のおうちに、私に会いにきてくれたことは覚えてる?」


「忘れるわけもないよ!

 ……え? それが何か関係あるの?」


「私の脚、トゲトゲがぐちゃぐちゃになってたよね?

 あのトゲトゲ、『奈落の欠片』からできてたの」


 ……トゲトゲというのは、リリーを縛り付けていた黒い茨のようなもののことだろう。

 確かに触れた感じ、普通の物質では無いと思っていたけど……。


「まさか見たことがあったとは……。

 ……それじゃあとでお願いできるかな。おうちに入るときは、私も呼んでね」


「分かったの!」


 ……『疫病の迷宮』を開いて、万が一にも疫病が漏れたら大変だ。

 ここは一応、私も待機しておくことにしよう。



「――さて、それでもうひとつの『虚ろの石』なんですが、これは信仰関係のようなんですよ。

 だから、エミリアさんが詳しいかなぁ……って」


「う、『虚ろの石』……ですか?

 聞いたことも無いですね……」



 鑑定結果のウィンドウを見てもらっても、特に情報は出てくることは無かった。

 少なくてもルーンセラフィス教の大聖堂では、これを作るための儀式は行っていないようだ。


 ……でも最終的に、分からない素材はひとつだけになったし、ひとつくらいなら時間を掛けて調べていくことにしよう。

 どうしても見つからないなら諦めるけど、でもこの素材、私の神器の重要なところで必要なんだよなぁ……。

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