546.第2回神器検討会議
――思い返せば思い返すほど、何とも言えない面会だったような気がする。
しかし、まずはこちらから船を出す……という条件はあるものの、とりあえず交易が始まる流れになったのは良いことだ。
肝心の出す船は、ひとまずポエールさんがどこかから借りてくることになっている。
ただ、いずれはポエール商会でも船を持ちたいということで、密かに造船所の建設計画も練っていたそうだ。
ちなみにその造船所、マーメイドサイドから離れた場所に街を作って、そこを造船の街にする……という案もあるらしい。
何でもかんでもマーメイドサイドでやるとなると、何だかごちゃついちゃいそうだからね。
街を機能で分ける案は、個人的にはなかなか良い案だと思っているところだ。
――私たちとの面会を済ませたサミュエル氏は、王都の南西にある港町に向かい、そこから南の大陸を経由して、東の大陸に戻って行く。
マーメイドサイドから海を渡ればすぐの位置ではあるんだけど、今はまだ海が安全だという保証が無いからね。
そんな関係で、サミュエル氏が帰国するまでは、あと3か月ほどが掛かるらしい。
こちらからはその時期に合わせて、最初の船を出す予定になっている。
何回か船を出して、向こうから船を出してもらうようになるころには、きっとこの街の冒険者ギルドや錬金術師ギルドの建物も完成しているだろう。
さらに宿屋もたくさん出来ているだろうから、そこまでいけば交易の準備は完成……ってところかな。
もう少しスムーズに交易が始まってくれれば良かったんだけど、なかなか準備で時間が掛かってしまっている。
しかしミルガディア王国との交易が上手くまわり始めれば、きっと他の国とも芋づる式に交易が始まっていくだろう。
ここはあまり慌てずに、着実に進めることにしようかな。
――……となると、しばらくは時間が出来ることになるわけで。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「というわけで、エミリアさん。
そしてルークも」
「アイナさん、改まってどうしたんですか?」
「何かお話でしょうか?」
夜、私のお屋敷の客間。
この三人だけで集まるというのも最近ではあまり無いが、しかしこのメンバーにはとても思い入れがある。
今では仲間もたくさん増えたけど、やっぱり一番しっくりくるのはこの三人だからね。
「大切なお話があります。
しかしこれは、とても楽しいお話です」
「ふむ?」
「楽しいことなら歓迎です。
アイナ様とはしばらく、なかなかご一緒できませんでしたから」
「ルークは特にそうだよね。
ずっとお仕事、頑張ってくれているし」
「そうですねー。
それで、楽しいお話って何ですか?」
エミリアさんも『楽しいお話』と聞いて、期待してくれているようだ。
それでは始めよう、懐かしの――
「――みなさんお待ちかね!
第2回、神器検討会議を開催いたします!!」
「っ!!」
「おぉ!!」
……神器検討会議とは、私が作る神器の能力を決めるための会議だ。
前はいつやったっけ?
王都に着いて、お店とお屋敷をもらって、メイドさんを雇って――
……うぅん、結構前になっちゃうなぁ。
次の神器はエミリアさんのものにする予定だし、そもそもあまり大人数で決めるというのもやり難い。
そんなわけで、やっぱり神器検討会議といえば、私の中ではこの三人になるのだ。
「――次の神器は杖です。
素体となるものは既に、アドルフさんに作ってもらっています」
アドルフさんの職人魂によって、魔石スロットが5つも付いた杖。
最後は結局グリゼルダの支援をもらって何とか作り出したようなものだけど、経緯はともあれとても高品質の杖になっているのだ。
私はアイテムボックスからその杖を取り出して、テーブルの上に丁寧に置いた。
「う、わーい♪
この杖、私のですか? 私のですか!?」
エミリアさんの期待値はどんどん高まっていく。
私としても、エミリアさんに使ってもらうのはまったく異論が無いところだ。
しかし――
「……そのつもりですが、属性は火になりますから。
そこだけ注意してくださいね」
「う、火ですか……。
私、火の魔法なんて使えませんけど……」
「そんなことを言ったら、また『光竜の魂』が手に入るまで作れませんよーっ」
「むぅ……。
そ、それならあまり、拘るところでは無いでしょうか」
「そうですよ!」
……とは言いつつ、私はまだまだエミリアさんの魔法使い化は諦めていなかった。
神剣アゼルラディアの素材を調べたときに、英知の奥で見たエミリアさんの魔法使いの姿――
……今のところ、まだその運命とは交わっていないけど、もし交わるとすれば、きっとこれからになるのだろう。
まぁ何が言いたいかと言えば、しれっと魔法の威力アップなどの効果を、しれっと入れておきたいところなのだ。
「アゼルラディアのときは、付与する能力は8つでした。
これは変わらないのですよね?」
「うん。それじゃアゼルラディアをベースに考えてみよっか」
そう言いながら、私はアゼルラディアに付与した能力を手元の紙に書き出した。
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①超斬撃
②斬撃力変化
③全種族攻撃UP
④全攻撃補正
⑤全防御補正
⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<神器の錬金術師/従者>
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「……改めて見ると、ずいぶん汎用的ですよね」
「ルークの要望でしたからね。
攻撃と防御が共存する形で――
……でもそのおかげで、ここに来るまではずいぶん護ってもらいましたよね」
「何とか、かんとかでした……。
しかし攻撃一辺倒の武器だったら、危ないところもあったかと思います」
私の言葉に、ルークもしみじみと頷いて言った。
「それで、基本的にはこれを踏襲しようと思っているんです。
とりあえず確定以外のものを消すと……こうかな?」
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⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<神器の錬金術師/従者>
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「あ、結構消えましたね。
……このあと、残りの5つを自由に設定できる……と」
「はい、その通りです。
でもまずは、魔法威力アップは欲しいですね」
「私も結局、シルバー・ブレッドをよく使ってますし……」
エミリアさんの攻撃魔法はまだひとつだけど、魔法使い化したときのために、やっぱりここは入れておきたいところだ。
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①全魔法攻撃補正
⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<神器の錬金術師/従者>
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「……ちなみに、支援魔法補正みたいなものはあるのでしょうか。
私の場合、アクセサリに『エコー』が付いているから、それだけでも強くはなっているんですけど……」
「でも魔力をごそっと持っていかれちゃうんですよね。
……ああ、それなら消費魔力を減らす効果も良さげですね。……多分あるんじゃないかな?」
「おぉー、それは欲しいです!」
「それじゃ追加……っと」
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①全攻撃魔法補正
②全支援魔法補正
③消費魔力減少
⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<神器の錬金術師/従者>
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「むむ!
こうなるともう、あと二つしか残っていませんね……」
「うーん選択肢があまり無いもので……。
ルークは何か、良いアイディアはあるかな?」
「そうですね……。
エミリアさんは魔法で防御壁を張っているので、それを自動に出来れば良さそうですね」
「防御障壁を自動で張る……みたいな?」
「わぁ、それも良いですね!」
「ふむふむ。
すると、こう……かな?」
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①全攻撃魔法補正
②全支援魔法補正
③消費魔力減少
④防御障壁
⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<神器の錬金術師/従者>
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「おぉー、さすがルークさんの金言!
……んー、あとはもう、ひとつしかないんですか……」
「エミリアさん、欲しいものがあれば、何か削っても大丈夫ですよ?」
「な、悩ましいです……。
ところで属性は火になるんですよね。そこで何か、ありませんでしょうか……」
「火魔法強化、とか?」
「いやいや! 私は火の魔法、使えませんので!」
……く、失敗!
「それなら出来るかは分かりませんけど、火属性付与とか……?
シルバー・ブレッドは光と火の混合属性になったりして……、こう」
「おお、それは良いですね!
別方向で、威力や効果が上がってくれそう!」
「今までところをすべて盛り込むとすると、大体はこんな感じになってしまうだろう」
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①全攻撃魔法補正
②全支援魔法補正
③消費魔力減少
④火属性付与
⑤防御障壁
⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<神器の錬金術師/従者>
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「おぉー、強そうです!」
「結構、まとまってくれたかな?」
「そうですね、良いと思います」
「それじゃ、一応素材を調べておきますか」
「よろしくお願いしまーす!
そういえば、何で急に神器検討会議なんですか?」
「ほら、交易が始まるじゃないですか。
アゼルラディアのときは偶然素材が揃いましたけど、次は早目に素材を探しておこうかなって」
「なるほど……!
ところでルークさん、私ときたら――その次は誰なんでしょう」
「あ、3つ目は私が欲しいんですよ。
付与したいのは全部決まっているので、神器検討会議は開きませんけど」
「えぇーっ!?」
「ふふふ♪ これはもう楽しみにしておいてください!
でもまずは、エミリアさんの神器ですよ!」
「はい! ……ところで名前って、もうあるんですか?」
「ありますよー。でもまだ内緒です。
出来たときに、お披露目しますね」
「うぅー、楽しみすぎます!!」
私も『神器の魔女』とは名乗っているものの、まだ作った神器はひとつしかないんだよね。
これをきっかけに、またいろいろと作っていきたいものだ。




