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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第10章 国へと至る道
532/911

532.再会、そして……①

 ――今日は久し振りに、辺境都市クレントスに来ている。


 さすがにマーメイドサイドの方が立地的には辺境だから、クレントスを辺境都市って呼ぶのは少しだけ抵抗があるんだよね。

 でも、活気はマーメイドサイドの方が勝っているかな? 何しろ絶賛発展中だからね。



「それでは妾たちは、そろそろ行くかのう」


「はわわ……。アイナ様……、お一人で大丈夫でしょうか……」


 今回ここまで一緒に行動したのは、グリゼルダとセミラミスさんのドラゴンのコンビだった。

 しかしここから二人は別の用事があるということで、私とは一旦別れることになっている。

 私は3日ほどアイーシャさんのお屋敷でお世話になって、二人が戻ってきたら、そのまま合流してマーメイドサイドに戻る予定だ。


 ちなみにグリゼルダたちは、別の大陸に用事があるらしい。

 ここはひとつ、良いお土産を持ってきてもらいたいところだね。


 ――というわけで、しばらく私のまわりには仲間が誰もいなくなるわけだけど、アイーシャさんのところにお世話になるから大丈夫かな。



「まぁまぁ、そんなに心配しないでください。

 アイーシャさんのお屋敷には以前お世話になっていたし、そもそもあのときから、私だって強くなりましたもん♪」


「おうおう。威勢の良い啖呵の話は聞いておるぞ。

 力を持つと、自信に繋がるからのう。うむ、アイナも良く成長したものじゃ」


「どこから話が漏れたんでしょうね……。

 まぁルークとジェラードさんしかいませんけど」


 ……考えてみると、どちらでもあり得そうだ。

 特に口止めの約束なんてしていなかったし、あの二人はグリゼルダとも普通に喋るし。



「ま、今のアイナなら何の問題も無いじゃろ。

 ただ、あまり厄介なことには首を突っ込むでは無いぞ?」


「それは約束しかねますね」


「ふっ、そうでなくてはな♪」


「はわわ……。や、やっぱり心配です……」


 ……セミラミスさんに心配されるというのも、何だか少し悩ましいところだ。

 彼女は強いは強いんだけど、その性格が災いして、弱いところは弱いからね。

 むしろ逆に、私の方がセミラミスさんを心配しているくらいなのだ。


「セミラミスさんもこれから三日、グリゼルダに連れまわされるじゃないですか。

 私のことばかり心配しないで大丈夫ですよ」


「そ、そうでした……。

 グリゼルダ様、お手柔らかにお願いします……」


「それは約束しかねるのう」


「ちょっとー。真似しないでくださいよ!」


「ふふっ」

「はぅ……」


 いつも通りセミラミスさんが一方的にやられているけど、この二人の掛け合いもなかなか面白いものだ。

 今度は三日後、マーメイドサイドへの帰り道に、いろいろな土産話を聞かせてもらうことにしよう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 アイーシャさんのお屋敷の前で二人と別れたあと、約束の時間まで少し待ってからアイーシャさんを訪れた。

 前回会ったのは3か月ほど前だけど、それでもとても懐かしい感じがした。

 この3か月の間にいろいろなことがあったから、それも仕方が無いことかもしれない。



「アイーシャさん、お久し振りです!」


「あらあら、いらっしゃい。

 お元気そうで、何よりです♪」


 相変わらず品の良いおばあちゃんだ。

 初めて会ったころよりも若々しく見えるのは、今なお自分の目標に向かって頑張っているせいだろう。


 挨拶を済ませると、そのままお互いの近況を話し合った。

 やはり盛り上がったのはマーメイドサイドの収穫祭の話だったが、それと同じころ、クレントスもそれなりに盛り上がっていたらしい。

 ……何でも『魔女の試練』のためにマーメイドサイドに入れなかった人たちが、それなりの規模でクレントスで遊び明かしていたそうな。


 ほんの数日のことではあったが、局地的な好景気に沸いたんだって。



「――思い掛けないところで、影響があるものですね……」


「最初はね、一体何事かと思っちゃったんですよ。

 『魔女の試練』っていうのも、凄かったんですね……」


「それももう、無くしちゃいましたけどね。

 リリーがもう要らないって言ってくれたので」


「へぇ……?

 リリーちゃんも、立派になったんですね」


 アイーシャさんは、私から見ればおばあちゃんのような存在だ。

 逆に言えば、アイーシャさんから見た私は孫みたいなものだろう。

 とすると、もう一世代若いようなリリーは、きっとひ孫のように見ているのかもしれない。


「私も驚いちゃいました。

 でも、リリーの気遣いは大切にしてあげたいなって」


「とても良いことだと思いますよ。

 ……ところで、冒険者ギルドか錬金術師ギルドから、連絡は行っていますか?」


「え? いえ、何も?」


「あら、それじゃちょっとフライングしちゃったかしら。

 非公式なルートなんですけど、マーメイドサイドにギルドの拠点を作りたいって話が上がっているみたいなんですよ」


「おー……。

 ついに来ましたか!」


 どこの街にもある冒険者ギルド。

 一部の街にしかない錬金術師ギルド。


 こういったギルドは、基本的には国の管轄下には置かれているものの、各国のギルド同士が連携して運営をされているのだ。

 国からの支援を強く受けているが、しかし各国のギルドとの結びつきも強い。

 ……まぁ簡単に言ってしまえば、国という存在からはある程度独立した組織なのだ。


 しかし、強権には負けるという微妙な立ち位置でもある。

 例えば私も、王様の意向でS-ランクの錬金術師になったくらいだからね。

 そう考えると、独立しているというか、持ちつ持たれつっていう感じなのかな?



 ――それを踏まえて、話を戻そう。

 私はヴェルダクレス王国から追われる立場だから、そもそもマーメイドサイドにこういったギルドを誘致するのは最初から諦めていたんだよね。

 依頼の受発注を行う冒険者ギルドも諦めていたから、ポエール商会に代わりにやってもらっているくらいだからね。


 しかし今回、冒険者ギルドからマーメイドサイドに拠点を作りたいと話があったということは――

 ……つまり冒険者ギルドとしても、マーメイドサイドには作る価値があると思ってくれたということだ。


 基本的にはどこの街にでもあるものだけど、マーメイドサイドの場合は王国と反目しているからね。

 それを踏まえれば、私の街にはかなり大きな期待をしてくれているということだろう。


 そして錬金術師ギルドも同様だ。

 ……まぁ錬金術が専門のギルドが、私を放っておきたいわけも無いからね。

 王都ではそれなりの実績を見せたわけだし、そのあとは神器なんて作っちゃったものだし。


 今さら錬金術師ギルドの仕事を積極的に受けるつもりは無いけど、錬金術は錬金術で広まって欲しいところだ。

 そんな感情からしても、私のおひざ元に錬金術の拠点が出来るというのは、とても嬉しいことではある。



「そのうちマーメイドサイドの方に、ギルドの責任者が行くと思いますよ。

 そのときは是非、じっくりと話を聞いてみてください」


「分かりました!

 実際、そういうギルドにはたくさん入ってもらいたいんですよね。

 これから他の国と交易を始めるにあたっても、有用になると思いますから」


「特に冒険者ギルドは重要ですからね。他の国にも身近にあるわけですし――

 ……そうそう、交易を始めるにあたって、相手方の要人と会うんでしたっけ?」


「はい、少し先に予定が入っているんです。

 実は今回、その相談もしたくて……」


「あらあら♪ 頼られるのはもちろん嬉しいですし、そんな大切な相談をして頂けるのも嬉しいですね♪

 それではアイナさんの滞在中、私も出来るだけ時間を取っていかないと!」


「無理しない程度で、たくさんお願いします!」


「ええ、任せてくださいな!

 ……あとは私が仕入れた情報も共有しますね。王都の方で、少し動きがあったようなので」


「わぁ……。やっとというか、ようやくというか……。

 それにしても私の指名手配、そろそろ解除して欲しいんですよね……」


「ずっとですからね……。

 やっぱりまだ、襲われるんですか?」


「はい。クレントスに来てからは、3回襲われましたよ……」


「あら凄い。アイナさん、有名人ですね♪」


「そ、そうですね……。

 マーメイドサイドでは、最近は襲われなくなりましたけど――」



 ……当然のことながら、どこの街に行っても襲われないようになりたい。

 私の錬金術の実力を狙ってくるのはどうしようも無いけど、懸賞金の方は、解除されればどうにかなるものだからね。


 ちなみに私の懸賞金は、以前と変わらず金貨5万枚だ。日本円にすると、大体25億円くらい。

 ……さすがにこんな金額なら、視界に入った瞬間に襲ってくるような人は、たくさんいるからね……。

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