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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
527/911

527.収穫祭⑱

 ――そしてついに、ビンゴ大会が始まった!!


 ほとんどの人が予選に参加していたみたいだったから、最初の説明は簡単に流させてもらうことに。

 知っていることをくどくど説明するのも時間がもったいないし、その時間だって限られているからね。



 ちなみに、突然の敗者復活で増えた人数は17人。

 予選を勝ち抜いた人のうち、実際に参加したのは80人中78人。

 つまりビンゴ大会の本戦は、合計95人で争われることになった。


 本戦の参加者にはステージの前に集まってもらい、スムーズに進行できるように協力をしてもらう。

 ガルーナ村で予選を通過した3人の姿も確認できて、少し安心してしまったり。


 賞品は全部で40個くらいあるから、4割くらいの人が何かしらを持ち帰られることになるのかな。

 半分の20個は『ガチャ無料券』なんだけどね。

 ――あれ? これ、実質ハズレと化してない? ……いや、気のせい……かな。



 今回も以前のガチャ大会と同様、ポエール商会の職員にガラガラをまわしてもらって、数字をどんどん出していく流れにしている。

 数字を読み上げるのは私とポエールさん。


 そしていくつか読み上げたところで、ついに最初の当選者が現れた。



「ビンゴ! ビンゴビンゴー!!」


「はい、おめでとうございます!

 少し落ち着いてくださいね」


「やったやった! 良いもの当てるぞーっ!!」


 私の言葉はあまり届いていないが、その男性は興奮気味にステージに上がってきた。

 気持ちは分かるけど、少しは落ち着きましょうってば。


「それではアイナさん、インタビューをお願いします!」


「はーい。ビンゴおめでとうございます! 喜びの声を聞かせてください。

 まず、お名前を聞いてもよろしいですか?」


「ビンゴです!!」


「……ほ?」


「あ、ちがっ!?

 すいません、名前はブルータスです!!」


 観客から驚きのようなどよめきが上がったあと、その男性はすぐに訂正した。

 『ビンゴ』というのは自分の名前でもボケでも無く、単純に間違えてしまったらしい。

 喜びの中ではあるが、やはりとても緊張しているのだろう。


「……ああ、良かった。

 もしかして、このゲームと同じ名前かと思っちゃいました」


「それならそれで、ビンゴ普及委員会とかを作ってもらいたいですね!」


 私の言葉に、ポエールさんも話を合わせてくれる。

 確かにビンゴを広めるなら、そんな人がいてくれた方がスムーズにことを進められそうだ。


「ではブルータスさん、ビンゴおめでとうございます。

 賞品は後ろに並べているものになりますが、何か欲しいものはありますか?」


「はい! アイナさんのところのメイドさんの、ランチ券が欲しいです!!」


「……ん?

 それ、今回は無いですよ?」


「え? ……えぇえええっ!!?」


 賞品の説明は最初にざっとしていたんだけど、ブルータスさんはそこからして聞いていなかったようだ。

 思い込みって、怖いものだね……。



 ……ちなみに私とポエールさんが急遽用意した賞品については、まだ内容は伏せられている。

 ビンゴが揃った人が、クジでそれを当てて、そこで初めて公開されるという流れだ。

 それ以外の賞品は全部公開されているから、私たちが用意したものについては、完全にお楽しみ要素の位置付けになる。


「この中ですと……そうですね、『竜の秘宝』が欲しいです!

 みんなが羨ましがっている中、瓶を一本まるまる飲み干したい!!」


「それは鬼畜な願望ですね!

 それではブルータスさん、クジを引いてください!!」


 私の言葉を受けて、商会の職員がブルータスさんにクジ入りの箱を差し出した。

 ここが運命の分かれ道――


「――そぉいっ!!」


「はい、ありがとうございました!

 クジに書いてあるものを読み上げて頂けますか?」


「えっと……。

 やったー! 『竜の秘宝』です!!」


「嘘付いたら、当選取り消しですよー?」


「……すいません、ガチャ無料券でした……」


「正直でよろしい!

 って言っても、それだってお高いものですからね?」


「は、はい……!」


 しかしあまり納得がいっていないのか、言葉はあまり明るくない。

 いや、ガチャをまだやったことが無いっていうだけかもしれない? それならここから、ガチャの沼にご招待――


「ちなみに一昨日も、『ガチャの殿堂』の方には新しい目玉を追加したんですよ。

 それもかなりの人気でして。ねぇ、ポエールさん」


「はい、昨日の時点でまた完売してしまいました!

 ……そうそう、アイナさん。業務連絡なんですが、またガチャの武器の補充をお願いします」


「ちょっと!? こんなところでそんな連絡しないでくださいよ!!」


「おっと、これは失礼」


 ……明らかにネタなんだけどね。

 会場からの笑いもしっかり取っているし。


 その後、ブルータスさんはガチャ無料券を受け取ってからステージを降りていった。

 彼にはひとつ、ダブルチャンスということで良いものを狙って頂きたいところだ。



「――っていうか、『ガチャの殿堂』の方は、もう目玉が出ちゃったんですね。

 内容は『臨時収入が発生する宝飾剣』だったんですけど、当たった人には大切にして欲しいです!」


「何ともオカルト的な効果ではありますが、鑑定の結果に、実際そう出ちゃいましたからね……。

 いやはや、さすが神器の魔女様が作っただけはあります!」


「作ったのは鍛冶師のアドルフさんなので、剣自体の質も保証しますよ!

 今回のガチャの賞品の中にもアドルフさん作の武器がありますので、是非それも狙ってみてください」


 ちなみにその武器というのは、扱いやすい感じの剣。

 ただの剣じゃつまらないから、ほんの少しだけミスリルを混ぜてもらって、魔法に干渉できるようにしてもらっていた。

 ミスリルは貴重なものだけど、ここは少し個性を出したかったからね。



 そしてその後もビンゴ大会は順調に進み、4人目でようやくガチャ無料券以外が当てられた。


「――おぉっと、私一押しの『きんつば』ですね!」


「やった! これ、ずっと食べてみたかったんだ!!」


 私のまわりでは普通のおやつになりかけているけど、これはまだまだ非売品。

 作り方も公開していないし、一般的にみればまだまだ希少品なのだ。


「おめでとうございます、これは味わって食べてくださいね!

 せっかくですので、今回はちょっと多めに作ってみました!」


「やったー! これなら1週間は持つぞ!!」


 きんつばが詰まった箱を手にすると、その男性は嬉しそうにステージを降りていった。

 しばらくの間、しっかりときんつばを味わって頂きたいものだ。



 次は6人目。ここでは私作の錬金術のアイテムが当てられた。

 買うなら結構なお金が掛かる――そんなボリュームで作った詰め合わせだ。


「これは何を作って良いのか分からなくなったときに作った、錬金術のセットです!

 とりあえず人気の出そうなものを集めてみました。

 強いオチが無いかなって思ったので、声の変わる薬も入れてみましたよ」


「え? 声が変わるんですか? 凄い!!」


「さすがに、あまり長くは持ちませんけどね。

 あと、変に声が高くなる感じの薬なので、思うようには変わらないと思います」


 ……端的に言うと、ヘリウムみたいなものだね。

 それが液体になった……っていう感じかな。


 しかし当たった人は、とても興味深そうにその薬を手に取ってくれていた。

 ……ま、興味が出てくれればそれで良いか。



 そして次の7人目――


「……おぉっと、ここで出てしまいました!!

 超大人気、『竜の秘宝』!! おめでとうございまーす!!」


「おおおおお!

 やったー! アイナさん、愛してるー!!」


「ありがとうございます! 私は別に愛していません!」


 観客からの笑いを取りつつ、愛の言葉を軽く受け流す。

 それにしてもまだ四分の一にいっていないというのに、ここまででトップ2の賞品が両方出てしまうなんて――

 ……正直、私とポエールさんで、臨時で追加をしていて良かったかな。



 そして13人目――


「……えっと、ポエールさんの特別賞……って書いてあります……」


 クジを引いた人は、弱々しくそれを読み上げた。

 全賞品の三分の一のところで出てくれるとは、なかなかの良いタイミングだ。


「おー、ついに出ましたね!

 私もまだ、その中身を知らないんですよ。それではポエールさん、発表をお願いしまーす!!」


「はい!

 私からは私の歌を聴きながら楽しむ、豪華なディナー券を差し上げます!!」



「おおお!!」

「豪華なディナー!!」

「これは……当たり……か?」



 ……もしかして、ちょっと微妙に思っている人がいるのかもしれない。

 ここは一応、フォローを入れておこう。


「なるほど、良いものが当たりましたね!

 一昨日のイベントに参加した方はご存知かと思いますが、ポエールさんはとんでもない美声をお持ちなんですよ!

 それに今をときめくポエール商会の長が用意する、豪華ディナー!!

 これはもう、当たりとしか言いようがありませんね!!」


「な、なるほど……。

 確かに、凄い当たりです……!!」


「でしょう!!」


 当たった人も、話を聞いてからようやく理解を示してくれた。

 私も少し参加してみたくなる辺り、ポエールさんもなかなか良い賞品を出してくれたものだ。



 ――そろそろ当選者が集中し始める19人目。

 実際、ここで一気に4人も当選者が出てしまった。

 その中には何と、セシリアちゃんも入っていた。


 ジャンケンの結果、セシリアちゃんは21番目。

 そして残念ながら、その手前の20番目で、私が追加した賞品が出てしまうのだった。

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