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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
520/911

520.収穫祭⑪

「――エミリアさん、お待たせしました!」


「わーい♪ 時間ぴったりですね!」


 私が孤児院の露店に行くと、焼きそばを焼きながらエミリアさんが出迎えてくれた。


「おー、アイナじゃん!

 焼きそば買っていけよーっ!」


「はいはい、それじゃ……今日は4つね」


「毎度ありーっ」


 例のリーダー格の子供は、鉄板の上の焼きそばをどんどんお皿に盛りつけていく。

 ちなみにお皿は紙製――などではなく、安物ながら陶器のお皿だ。

 この世界には使い捨ての文化なんて無いから、使ったらまた洗って、しっかり再利用していく形になっている。


 ……実際のところ、使い捨てなんて豊かじゃないとできないからね。



「アイナさんは、お昼はもう食べたんですか?」


「はい、セミラミスさんとキャスリーンさんと一緒に。

 だから焼きそば、私は半分くらいで大丈夫です」


「それじゃ、3人前と半分頂きますね♪」


「食べ終わったら、他の露店も見てまわりましょうね」


「はーい♪」



 孤児院の院長先生から許可をもらったあと、エミリアさんの今日の仕事はおしまい。

 焼きそばを頬張りながら、軽くこれからのことを話すことになった。


「ところでセミラミス様とキャスリーンさんは一緒……だったんですよね?

 お二人はどちらに?」


「二人ともお屋敷に戻りました。

 そもそもキャスリーンさんって、今日は午前だけしか空いていなかったんですよ。

 セミラミスさんは、キャスリーンさんの付き添いということで」


「ふむふむ、なるほど。

 ……あれ? もしかして、ここまでは一人で来たんです?」


「そうなんですよー。

 どこでも人がいるので、特に問題は無いかなって」


 マーメイドサイドは治安もそれなりに良いし、仮に襲われたとしても、ある程度であれば私も自分で対処ができる。

 人が多い場所であれば助けも求められるし、逃げやすいということもあるし――

 ……つまり街の中なら、あまり護衛をガチガチに固めなくても何とかなりそうではあるのだ。


「まぁ……アイナさんにちょっかい出す人なんて、この街にはいませんからね」


「さっきナンパされましたけどね。

 セミラミスさんとキャスリーンさんと一緒のときに」


「恐ろしいことをする人もいたものですね!」


 ……改めてそう言われると、私としても少し思うところはあるけど……。

 ただあのナンパ師たちは、私の顔を知らなかったみたいなんだよね。


「あはは……。でも思ったよりも、声は掛けられないものでしたよ。

 昨日の夜、あんな大勢の前で司会をしていたのに」


「そう言われてみれば、誰も話し掛けてきませんね……」


 とはいえ、話し掛けられない方が気楽で良いものなのだ。

 私は別に、人気者やアイドルを目指しているわけではないし――

 ……ひっそり慎ましやかに過ごしていければ良いからね。


 今の生活はなかなか楽しいけど、それでもいつか、目立つ場所からは身を引こうとは考えている。

 それこそ錬金術のお店に専念するような感じで……。



「――さて、これからどうしましょう。

 私は午前中に、『水の迷宮』以外はまわってきたんですよ」


「わぁ、短時間に凄いですね!

 お勧めは何かあります?」


「人魚さんの演奏会は推しですよ!

 午前中は途中からしか聴けなかったので、最初からもう一度聴いてみたいです!」


「それならそこは決定ですね!

 時間は……15時からでしたっけ」


「はい。開演時間は1時間です。

 ……というと、今から行って15時……。それが終わると16時……ですか」


「むむ、結構時間を使っちゃいますね。

 でもアイナさんがそこまで推すなら、私も全部聴きたいですし」


「それでは全部聴いていくということで。

 とすると、あとは――……うーん。セリシアちゃんの露店は、明日でも良いかなぁ……」


「約束もしていませんから、明日でも問題無いですよね。

 話すなら落ち着いて話したいですし」


「同感です!

 あとは――……16時っていうことは、『創星剛鍛祭』の決勝は……もう終わってるかな?

 観れてもギリギリになりそうですね……」


「確かあそこって、会場が少し離れているんですよね。

 んー……。それなら私は、別に行かないでも大丈夫ですよ」


「ふむ……。

 あそこにはルークがいるみたいだったんで、『創星剛鍛祭』の方は、あとで話だけ聞くことにしますか」


「そうですね。ではそれで!

 少し気になっているんですけど、限定ガチャの方はどうでした?」


「……女性たちの強烈な戦いが繰り広げられてしました……。

 あそこは特に見ないで大丈夫ですよ。活況でした、以上……くらいなもので」


「あはは♪ それでは限定ガチャは無しで。

 残りは『水の迷宮』と、パフォーマンス……のところでしたっけ」


「『水の迷宮』も遅い時間だと、中から戻ってくる人を見るしかないですからね。

 それだけ見ても仕方がないし……。明日行って、ミラを(ねぎら)う……くらいでも良いかなって思い始めました」


「私も明日なら、朝から晩まで大丈夫です!

 なので『水の迷宮』は明日行くことにしましょう。……イベント、関係無いですけど」


「迷宮のツアーは、参加してこその内容ですからね」


「残りはパフォーマンスのところですか。

 そちらはどうでした?」


「なかなか面白かったですよ!

 それにやりたい人が好きにやっている場所なので、多分これから行ったら、私も観ていないやつがやっていると思います」


「おー、それは良いですね!

 ……それじゃ、演奏会に行ってから、パフォーマンスのところでのんびりしましょう♪」


「はーい。

 近くに露店もたくさんありますから、そこで夕飯までいっちゃいますか」


「了解です! 何とか予定が決まりましたー。

 そういえば今さらなんですけど、午後は私とアイナさんの二人っきりなんですか?」


「とりあえずはそうですね。

 でも演奏会の方に、リリーが行ってると思うんですよ。そこで合流するかも?」


「ふむふむ……。

 セミラミス様は、キャスリーンさんを送ったあと……また、来るのでしょうか」


「どうでしょう……。

 お屋敷に戻ったのを良いことに、そのまま部屋に籠っちゃうと思いますよ」


「あはは……」


 ……まぁ今日は二日目だし、まだまだ明日もあるわけで。

 たくさん楽しんで欲しいけど、今日はのんびりしてもらっても大丈夫かな。

 明日は是非是非、また一緒に遊びたいところだ。



「――さて、演奏会は15時からですし、そろそろ行きましょうか」


「えっ。

 あー……、はい!」


「も、もう少し時間はありますから、いろいろ買っていきますか……?

 持てないようならアイテムボックスに入れていきますけど……」


「さっすがアイナさん!

 それでは少し待っていてください! がっつり買い込んできますので!」



 そう言うと、エミリアさんは近くの露店に素早く飛び込んでいった。

 ……多分たくさん買うだろうし、私も順次、アイテムボックスに入れていくことにしようかな。

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