表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
519/911

519.収穫祭⑩

 限定ガチャは見たし、パフォーマンスのスペースも観たし、『創星剛鍛祭』も会場には足を運んだし、人魚の演奏会も聴いてきた。


 あと残っているのは、『水の迷宮』のツアーだけ。

 これも参加をする……というより、状況を軽く見ておきたいだけだから、往復の時間さえあれば問題無いかな。



「――ビンゴ大会の予選も活況ですね」


 露店で昼食を食べながら、近くのステージを眺めてみる。

 ビンゴの数字が発表されるごとに、悲喜こもごもの歓声が上がっているようだ。


「みなさん……賑やかで、……はい。

 私は無理ですけど……、楽しそうで、良いですよね……」


 セミラミスさんも参加してくれば良いのに――

 ……とは思うものの、それができないのが彼女なのだ。

 いつかできるようになっては欲しいものの、一足飛びでは難しいだろうし、あまり無理させるのも可哀想だろう。


「私は参加したかったですけど、時間がありませんので……」


「キャスリーンさん、今日は午前中だけだもんね」


「はい。ただ明日は一日空いていますので、アイナ様のステージは観に行かせて頂きます!」


「あはは、よろしくね♪

 ところでセミラミスさんは良いとして、キャスリーンさん」


「は、はいっ」


「銀貨10枚分、まだ使ってないでしょ?」


「そうですね……。どうしましょう」


 銀貨10枚――それは一番最初に約束した、最低限使うお金の話。

 いろいろ露店を巡ったものの、今のところ使っているのは銀貨3枚程度だろう。

 遠慮している感じは伝わってこなかったから、あまり無理は言わないけど、それでも何かあれば使っていって欲しいかな。


「キャスリーンさん……。あの、お土産とか……、どうですか?」


「それなら……あっ! あそこの露店、覘いていってもよろしいですか?」


「うん、大丈夫だよー」


 ……どんな露店かも確認しないまま、言いながら目を移してみると、ぬいぐるみがたくさん置いてある露店を見つけた。

 基本的には子供向けっぽいが、それでも大きなぬいぐるみがあったりして、なかなか値段も張りそうだ。


「わぁ……、楽しそう……」


「セミラミス様も見に行きませんか?」


「え……? そ、そうですね……」


 そう言いながら、セミラミスさんは私の方を見た。

 私もぬいぐるみは結構好きだから、見に行くのであれば一緒に行きたいところだ。


「それじゃ、食べてるものを片付けてから行きましょうか」


「「はいっ」」


 ……おっと、セミラミスさんもなかなか元気だ。

 結構こういうの、好きなのかな?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――どうしよう。


 キャスリーンさんが大きなぬいぐるみをゲットして、目をキラキラさせている。

 金貨1枚で割と大きな出費だったけど、別にそれは何の問題も無い。

 ただ、買うまでにいろいろとひと悶着があって、結構時間を使ってしまったから――


 ……時間は既に13時過ぎ。


 私がエミリアさんを迎えに行く約束は余裕で守れるけど、キャスリーンさんが午後から仕事をするという約束は守れない。

 まさかこんなに時間を忘れて、ぬいぐるみ探しに没頭してしまうとは……。


 あぁー、キャスリーンさん、お屋敷に戻ったら怒られちゃいそうだなー。

 今はこんなに嬉しそうにしているのに、時間の話をしたら、一気に泣き出しちゃうかも……。

 あとついでに、一緒に連れまわしていた私も怒られちゃうかも……。



「へーい、彼女たちー? 元気ぃー?」


 突然、私たちに声を掛けてくる男性がいた。

 考え事をしているときに……と思いながら目を移してみると、いわゆるちょっとチャラい系のお兄ちゃんたちが3人立っている。

 歳は20歳過ぎくらいかな?


「何か御用ですか?」


「大きなぬいぐるみを買ってて、大変そうだなって思ってさ!

 良ければ、俺たちが運んであげようか?」

「ついでに、一緒に収穫祭まわらない?」

「今日は一日、遊ぼうぜーっ♪」


 ……これはうっとうしい。


 いわゆるナンパというやつなんだけど、こういうときに男性がいないと面倒だなぁと思ってしまう。

 そもそも3人で話し掛けてくるっていうのがズルい。


 ジェラードのナンパもうっとうしかったけど、彼は一人で声を掛けてきたからね。

 ある意味、男らしくはあったのだ。


「すいません、今日はいろいろと用事がありますので」


「用事っていっても、遊びでしょ?

 それなら俺たちと一緒に遊ぼうよー」


 ……やっぱりうっとうしい。

 倒すだけならさっさと倒せるけど、今は楽しい収穫祭の真っ最中。

 私たちの話し声も周囲には聞こえていないだろうし、騒ぎをあまり大きくしたくないし……。


「はわわ……」

「アイナ様……」


 私の後ろで、二人の不安そうな声が聞こえてくる。

 ……いやいや、セミラミスさん。あなた強いんだから――……とは言っても、やっぱり女の子だからね。

 見た目から年齢は分からないけど……うん、仕方ない、仕方ない。


 それにしても――


「ところでお兄さんたち、昨日の夜のイベントは参加しました?」


「ん? ああ、歌姫のソフィアが出ていたってやつ?

 いやー、あのときは宿屋にいたからなぁ」

「そうそう、ちょっと疲れちゃってね」

「ゆっくり休んでたんだよー♪ うひひ♪」


 ……なるほど、それなら私のことは知らないのかな?

 それにその時間宿屋にいたってことは、もしかして昨日は昨日でナンパしていたのかもしれないし……。

 お祭りなんだから多少ハメを外しても良いとは思うけど、でも私たちを巻き込んで欲しくはないな。


 ……さて、どうしたものか。

 そもそもこんな連中に時間を使っている場合じゃないんだよね。

 こっちはキャスリーンさんの遅刻の言い訳を考えなきゃいけないのに――


 ……と思ったところで、私はピコンと閃いた。



「――それじゃ、これから行ってみたいところがあったんですよ。

 ちょっと街の外れの方なんですけど、一緒に遊びに行きませんか?」


「はわっ!?」

「え、えぇ……!?」


「お、いいじゃん、いいじゃん! 遊びに行こうよ!」

「一緒に楽しもうぜ!!」

「案外……うへへっ♪」


 私の言葉に、五人はそれぞれの反応を見せた。

 大丈夫大丈夫、何を守って何をやるかなんて、私は心得ているからね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――バチッ


「ぐはっ!?」

「ぐおっ!?」

「うへっ!?」



 賑やかな場所から少し離れた場所、とある建物の近くで間抜けな声が響いた。

 ナンパ師三人組には錬金術――ではなく、風魔法『クローズスタン』を掛けてあげたのだ。

 これはスタンガンみたいに、相手を痺れさせる魔法。無力化するときに便利な魔法だ。


「……こんなところまでのこのこ付いてきて、おバカさんですねー」


「うぅ……。な、何だと……?」


「それじゃセミラミスさん、あそこの建物から人を呼んできてください。

 神器の魔女、アイナの使いだって、ちゃんと伝えてくださいね」


「りょ、了解しました……!」


 そう言うと、セミラミスさんは走って、少し離れた建物に向かっていった。


 その建物は、自警団の詰め所。

 この街を護ってくれる、頼りになる人がたくさんいる場所なのだ。



「じ、神器の魔女……? お、お前が……?」

「いやいや、こんな子供……だぞ?」

「うそーん……」


 子供と言っても、もう18歳だからね?

 ……あ、いや、外見は17歳か。ここは永遠の17歳ということにしておこう。


 そうこうしているうちに、自警団の人が5人、全速力で現れた。

 私が事情を告げると、そのままナンパ師たちを連行していってくれた。


 ここまで連れてきた理由を細かく聞かれそうになったけど、今は時間が無いから、それはあとまわしにしてもらうことに。

 捕まえておく時間は、この街の責任者(?)である私の責任で、とりあえず無期限に設定。


 罪状は――私たちにちょっかいを出した罪、かな?

 迷惑防止条例っぽいやつでも何でも良いけど、この街で私にちょっかいを出す方が悪いということで。


 ふふふ。ここら辺、我ながら暴君である。




 ――さて。

 ナンパされてから最短ルートでここまでやってきて、今の時間は13時40分!


 ここからならエミリアさんとの約束の時間も何とか守れるし、私の方は問題無し。

 あとはキャスリーンさんの方の問題か。



「いやー、結構自警団まで時間掛かっちゃいましたね!」


「そ、そうですね……?

 あっ! 私、午後からお仕事があるんです……!」


「急がないといけませんね!

 でもさっきのナンパ師のおかげで、結構時間を使っちゃいましたからねー」


「た、確かに? 凄い時間、連れまわされたような……?」


 実際は最短ルートだったけどね。

 でも被害に遭ってる最中って、時間がやたら長く感じちゃうものだし、ここはその錯覚を利用させてもらおう。


「それじゃセミラミスさんはキャスリーンさんと一緒に戻って、クラリスさんに事情を説明してあげてください。

 変な三人組に声を掛けられて、自警団まで連れていったから遅れちゃいましたーって」


「か、かしこまりました……!

 アイナ様は……どうするんですか?」


「エミリアさんと約束をしていますからね。

 今からそっちに行ってきます」


「分かりました……!

 ……キャスリーンさんのことは、お任せください」


「はい、よろしくお願いします!

 キャスリーンさんも、最後ごめんね!」


「いえ、助けて頂いてありがとうございました。

 あとこのぬいぐるみも、大切にさせて頂きます!」


 そう言いながら、大きなぬいぐるみをきゅっと抱き締め直すキャスリーンさん。

 キャスリーンさん、純粋に可愛い。



 ――さて、これで遅刻の件もうやむやにできそうだし、何よりもキャスリーンさんの笑顔を守れて良かったかな。

 言い訳に使われることになったナンパ師三人組には、そこだけは感謝しておこう。そこだけは、ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ