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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
516/911

516.収穫祭⑦

 ――朝6時。


「お……。起きれた!」


 昨日の疲れから察するに、今日は昼まで寝てしまうかと思いきや、普通に起きることが出来てしまった。

 体調の方は……身体が少し重いけど、まぁ大丈夫なレベルかな。


 いや、油断していると大変な目に遭うかも――

 ……いやいや、まだ若いから大丈夫か。中身は年を重ねても、外身は17歳のままだからね。



 のんびり着替えてから食堂に行くと、エミリアさんが食事をとっているところだった。

 まったくエミリアさんには食堂が良く似合う。

 職業柄、聖堂の方が似合っていた方が良さそうだけど、どちらかと言えばやっぱり食堂かな。


「エミリアさん、おはようございます」


「あれ? アイナさん、おはようございます!

 ゆっくり休めましたか?」


「あはは、何だか目が覚めちゃって。

 でも二度寝したら、夕方まで寝ちゃう自信はありますよ!」


「むぅ、それでは起きちゃった方が良いですね。

 あまり休まないでいると、明日が心配かもしれませんけど……」


 明日といえば、収穫祭の最終日だ。

 夜にはイベントでまたステージに上がることになるし、きっと昨日以上の疲れになるだろう。

 最低限、それまでに無駄な疲れは取っておきたいところだ。


「それなら明日の午前中はゆっくりしようかなって思います。

 三日目は特に、新しいイベントはありませんから」


「二日目の今日がイベントてんこ盛りですからね……。

 私もできるだけ遊びたいので、ちゃんと14時に迎えにきてくださいね♪」


「時間ぴったりに行きますよ!

 ……ところでルークとジェラードさんって、まだ寝てるんですか?」


「お二人とも、もう出ちゃいましたよ」


「早っ!」


 ……とは言っても、ルークは昨晩しっかり帰っていたからね。

 しっかり帰ることができた分、今日は朝からのシフトだったのだろう。


 ジェラードは――何だろう? 特に仕事は無いはずだけど……。



「ところで、リリーちゃんはまだ寝てるんですか?」


「はい、ぐっすり眠ってましたよ。

 昨日帰ったときも寝ていましたし、きっと疲れたんでしょうね」


「明日はおばちゃんと遊ぶの~♪ って言ってましたから――

 ……今日は、人魚さんの演奏会に行くんでしょうね」


「グリゼルダと一緒なら、そうですよね。

 リリーのことだから、てっきり『水の迷宮』に行くと思っていたんですけど」


「演奏会が終わったら行くんじゃないですか?

 そもそも、リリーちゃんって『水の迷宮』に入れませんから……行ったところで、やることはあるのでしょうか……」


 エミリアさんの言う通り、ダンジョンは他のダンジョンに入ることが出来ない。

 説明していて少し混乱してしまうが、それがダンジョンという存在のルールなのだ。


 ……実際のところ、リリーのように人の姿を取って移動しまくる――ということは想定していなかったのだろう。

 それにしても、誰が決めたルールなのかな? アドラルーン様かな?



「私も演奏会は行く予定なんですけど、『創星剛鍛祭』も観たいんですよね。

 限定ガチャの売れ行きも見たいですし、やっぱり『水の迷宮』にも行きたいし……。

 ああ、それとパフォーマンスのスペースにも行ってみないと!」


「アイナさん……。それって全部じゃないですか……」


「……そうですね」


 私も『創星剛鍛祭』以外の企画には参加していたものだから、やっぱり全部が気になっちゃうんだよね。

 特に今回しか観られないものも多いし、我ながら企画を盛りだくさんにしてしまったものだ。

 ……本当、多過ぎたかもしれない……。


「しかも、他のお客さんはビンゴ大会の予選まであるわけですから……」


「本当、忙しすぎですよね!

 でもその分、三日目は何もありませんので……!」


「あはは、そうですね♪

 でも、さすがに全部に行くって人も多くは無いと思いますよ。

 イベントごとに、ターゲット層が分かれていましたし」


「そこはちゃんと狙ったんですよ!

 狙い通り、しっかり分かれてくれれば良いんですけど……」



 ……さてさて、果たして私の狙い通りにいってくれるのだろうか。

 しっかり様子を見ながら、その上で、私もめいっぱい楽しんでいくことにしようかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――というわけで、今日一緒にまわるのは、セミラミスさんです」


「はわわ……。よ、よろしくお願いします……」


「あとは本人の強い希望により、午前中はキャスリーンさんが参戦します」


「同行の許可を頂きまして、ありがとうございます!」


 私とセミラミスさんとキャスリーンさん。

 ……何だか珍しい組み合わせだ。いや、本当に初めての三人組なんだよね。


 ちなみにキャスリーンさん、今日は仕事の予定だったんだけど、午前中だけクラリスさんが休みを代わってくれたらしい。

 昨日の消沈振りを目の当たりにして、クラリスさんが配慮してくれたんだって。

 クラリスさんのさり気ないフォローに、感謝感謝だ。



「さて、セミラミスさんはどこか行きたいところ、ありますか?」


「お部屋に戻りたいです……」


「却下します。

 キャスリーンさんは、どこかある?」


「私はアイナ様のお側にいられれば、どこでも大丈夫です!」


「そ、そう……?」



 ――結果、特に要望が出ず。

 それじゃ私が決めることにしようかな。二人に任せていたら、何も進まなさそうだし……。


 しかし午前中はこの二人か……。

 男性の護衛がいないから、ちょっと心配かな。


 何かあったときの力技としては、私とセミラミスさんがいるから大丈夫だけど――

 ……セミラミスさんとキャスリーンさんは、何だかナンパとかされそうだしなぁ……。


 特にキャスリーンさんなんて今日は私服だし、何だかキラキラオーラが見えるような美少女だし。

 仕事モードでは美少女っぷりは抑えられているものの、やっぱりプライベートだと……何だか凄いんだよね……。



「アイナ様? どうかされましたか?」


 私がぼんやりキャスリーンさんを眺めていると、彼女は心配そうに話し掛けてきた。


「いやぁ、キャスリーンさんがやたら可愛いなって思って……」


「ほ、本当ですか!? 嬉しいです……♪」


 ……そしてこの反応。実に女の子らしい、そんな振る舞い。

 ああもう、絵に描いたような美少女とは、きっとキャスリーンさんのことを言うのだろう。


「こ、これがアイナ様の、天然ジゴロ……ってやつなんですね……!」


「へ? ちょ、ちょっとセミラミスさん、そんなことを誰から!?」


「えっと、あの……。エミリアさん……から…ですぅ……」



 ……エミリアさんめ!!




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 とりあえず私たちは、女性向けの限定ガチャの様子を見に行くことにした。

 今回は購入――……もとい参加をするつもりは無いから、ちらっと見れば終わってしまうかもしれない。

 最悪、通りすがりに見るだけでも十分だったりして……。


 ちなみに限定ガチャは、ポエール商会の拠点の真横に設置されている。

 『ガチャの殿堂』にあるガチャは転送魔法を組み込んでいるが、限定ガチャの方は、補充が手動なのだ。

 つまり、在庫を置いている拠点の近く……というイメージかな。


 ポエール商会の拠点に近付いていくと、女性たちの声が徐々に響いて聞こえてきた。



「きゃーっ!! どいてどいてーっ!」

「ちょっと! 私が先よ!!」

「田舎者は下がっていなさい!」

「割り込まないでよ!?」

「押さないでって言ってるの!!」


「並んでくださーいっ!」

「在庫は十分にありまーすっ!」

「一回まわしたら、列の後ろにお願いしまーすっ!!」



 ――……何これ、修羅場?


 女性客VS商会の職員さん……って言うか……。

 そんな感じで、多数配置された職員さんが荒ぶる大勢の女性客を懸命に誘導していた。


 うぅーん……。

 バーゲンセールの争いみたいなものを彷彿とさせるけど、どこの世界でもこんな感じなのかな……。

 ひとまず私たちは、見つかって注目を浴びても面倒くさそうなので、この場はさっさと離れることにした。



 ……はい、一か所目、終了~っ。

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