表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
514/911

514.収穫祭⑤

「――はい! 明日の目玉は何と!!」


 私の言葉に、ポエールさんがわざとらしい相槌を入れてくる。

 打ち合わせ通りだから、本当にわざとなんだけどね!


「まずはこの街、マーメイドサイドの名前の由来になった人魚さん。

 いつもは別の島で暮らしているのですが、今回は特別に演奏会を行ってもらうことになりました!!」



「おお!」

「人魚って本当にいたんだ!?」

「萌え萌え!?」



 島に暮らす人魚は10人しかいないし、さらにこの街とは強い海流で隔たれている。

 基本的にはこちらと島を繋ぐ係の人魚以外は見られない上、その人魚も必要が無ければ海に潜っているのだ。


 つまりこの街に暮らす人であっても、人魚を見たことがない人は結構いる。

 今回の収穫祭で初めて来た人は、当然見たことも無いだろう。


「アイナさんのご協力で、今回は特別に、ですからね!

 変なお客さんがいたら、永久に公開停止になるので、観にいく方はご注意ください!」


「ちょっかい出す人は、命が無いものと思ってくださいね♪」


「アイナさん、怖い!

 みなさま、神器の魔女様の怒りを買わないようにお願いします!!」



「はーい!」

「こわーいっ!」

「魔女さまーっ」



 結構茶化して言っているけど、ちょっかいを出したら本当に許さないからね。

 警備もしっかり固めるし、ここは毅然と対応させてもらうのだ。



「それでは人魚さんの演奏会は、静かにできる方だけ行ってください!

 『賑やかな方が良いんだ!』という方には、次のイベントがオススメです!!」


「次のイベントですか!!

 アイナさん、それは一体何でしょう!?」


「その名も――

 『創星剛鍛祭』!! そう、せい、ごう、たん、さい!! です!!」



「なにそれ!!」

「名前が強そう!!」

「固そう!!?」



「こちらは鍛冶師と冒険者の祭典!

 選ばれた鍛冶師が作った武器を使って、これまた選ばれた冒険者が戦い合うトーナメント戦です!!

 血の気の多い人たちにはうってつけ!!」



「おぉ……!!」

「み、観たい……!?」

「俺、絶対にそっちに行くわ!」



「鍛冶師アドルフを筆頭に、優れた武器が勢揃いですよ!!

 終わったあとは各鍛冶師さんによる即売会――……は、ありません! ご注意ください!!」



「「「無いんかーい!!」」」



「無いんでーす!!」


 息のあったツッコミをばっさり返すと、会場からは笑い声が上がった。

 そうそう、このライブ感! 司会進行をしていて、これが一番面白いんだよね。



「やぁやぁ、アイナさん。

 収穫祭は大盛り上がりですね! まさか二日目に、新しいイベントが二つもあるだなんて!!」


「まったくですね、ポエールさん!

 それでは三つめの紹介にいきましょう!!」


「え? まだあるんですか!?」


「あるんでーす!!」



「「「あるんかーい!!」」」



 会場からのツッコミも最高潮だ。

 まだまだ、これだけで終わるのはもったいないからね!!


「次は――こちらは女性向けです!

 女性の方に質問です! ガチャってどう思いますかー!?」



「え……。お金の無駄遣い、じゃない?」

「まぁ、アクセサリをもらったけど……ねぇ?」

「その分、食費を入れて欲しいよっ!!」



 ……案外、厳しい評価が飛び出してくる。

 やっぱり『ガチャの殿堂』は冒険者向け、男性向けだからね。


「そこで今回、収穫祭の限定ガチャをご用意しました!!

 当たるものは王都で大人気だった私の作、日用品や美容品などを取り揃えています!

 王族ご用達! 普通に買ったら金貨が必要になるものですが、今回は何と銀貨3枚でご提供!!」



「「「っ!!!!」」」



「しかも最低、銀貨3枚程度の日用品が当たります!

 石鹸や洗剤など、そこら辺では手に入らないものが盛りだくさん!

 お財布に余裕のある方は、是非ご検討くださーい♪」



「か、考えとくわ……!!」

「今年は収入も多かったし……」

「ま、まぁ見てからかしら」



 ……やはり少々、お財布の紐は固いようだ。

 しかし今回は、それを緩めるための施策。できるだけガチャに理解を示してもらうのが本題だ。


 そうしたら、まわりの人のガチャを咎めにくくなるしね。

 ふふふ、私は悪の運営なのだ。


「何と三つもイベントがあるとは……。

 アイナさん、さすがにもうありませんよね!?」


「それが何と、あるんです!!

 この街の近くに出来た『水の迷宮』! ここの1階がとっても初心者に優しいんです!

 なので、今回は特別に『水の迷宮』のツアーをご用意しました!!

 さらに今回、宝箱の出現率がかなり上がっています!!」



「え!? 宝箱が!?」

「ま、まじで!?」

「それ、どうやるのーっ!?」



「私は魔女ですからね!

 そんなことはちょちょいのちょいです!!」


 ……実はミラにお願いしただけなんだけどね。

 ただその分、力を使う必要があるらしいから、しばらくは水の供給量が落ちるとのことだった。

 でもそれは一時的な話だし、今回は問題無しとして進めることにしたのだ。


「ちなみに『水の迷宮』の前では、初心者用の冒険セットも販売いたします!

 お子様も十分に楽しめる内容ですので、親子連れでのご参加、お待ちしております!」


「迷宮で宝石でもゲットして、売って、ガチャをまわすっていうのも良いかもしれませんね。

 お父さんとお子さんで稼いで、お母さんが限定ガチャをまわす……とか!」


「おお、それは素晴らしい!

 是非とも、一家揃ってお楽しみください!

 ご家族様がいらっしゃらない場合は、お土産にご検討してみてはいかがでしょうか!!」


「いやー、それにしてもポエールさん。

 イベントが盛りだくさんですね!!」


「はい、何と四つも!

 アイナさん、さすがにもうありませんよね!!」


「無いですが、ここで良いお知らせがあります!」


「おお!? それは一体!?」


「明日からの二日間、広場や空き地でパフォーマンスのスペースをご用意いたします!

 何か芸をお持ちの方は、そこで披露してください!!」


「アイナさんも私も痛感しているところではありますが、今日はとても混み合っておりました!

 しかしその反面、そんな場所で何かをしたくなった方も多いのではないでしょうか!

 簡単な道具はレンタルでご用意しましたので、ご希望の方はポエール商会までご相談ください!!」


「お金は取るんですね!」


「はい、警備代がかさんでいますから!!」


「ポエールさん、裏事情を言わないでくださーいっ!!」



「わははっ」

「ぬははっ」

「どははっ」



「それでは明日のイベント告知は、以上になります!

 たくさんありますので、たくさん楽しんでくださいね♪

 ビンゴ大会の予選は明後日も行いますので、上手く時間を調整してください!!」


「詳しいタイムススケジュールは各所に掲示いたしますので、そちらをご確認ください!」


「はい、ポエールさん!

 それでは今日のイベントは終了――」


「……って、アイナさん! まだ告知しかしてませんよ!!」


「あ! そうでした!!」



「びっくりしたーっ!!」

「終わりかと思った……!!」

「メインイベントとはーっ!?」



 時間にすれば、始まってからまだ20分しか経っていない。

 このまま終わったら、さすがに暴動が起きてしまいそうだ。


「それでは改めて! ここからは普通の収穫祭に戻りまーす!

 やっぱり歌と踊りは欠かせませんからね!!」


「そうですね!

 収穫の喜びを全身で楽しむ! これに尽きますからね!!」


「ところでポエールさん、今日は何と、王都でも有名な美声の持ち主が来ているそうですよ!!」


「おお!?」



「おお!!」

「おお!?」

「まさか、歌姫ソフィアが!?」



「それではご紹介します!!

 王都が誇る美声――ポエール・ミラ・ラシャスさんです!!」


「どうも、ご紹介に預かりましたポエールです!!」



「「「ズコーッ!?」」」

「「「お前かーいっ!!」」」

「「「騙されたーっ!!」」」



 会場からは総ツッコミである。


 ……しかしこのあと、観客たちは知ることになるのだ。

 ポエールさんの魅惑的な歌声を……。


 いや、私も初めて聴いたときは正直驚いたんだけどね?

 だって、本気で歌手顔負けの歌声なんだもん。



 ちなみに本命としては、先ほど聞こえてきた歌姫のソフィアさんも招待していたりする。

 だからポエールさんが場を一旦濁してくれて、進行的には正直助かったかな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ