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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
501/911

501.水の迷宮⑦

「ママっ!!」


 私たちが『水の迷宮』から戻ると、その出口ではリリーが待っていた。

 リーダーさんから聞いてはいたものの、本当にずっと待っていたのかな。

 ……何せ、今日この時間に戻るだなんて、そんな確証はまったく無いのだから。



「ただいま、リリー!

 ずっと待っててくれたの?」


「なの!」


 リリーは元気良く、私にしがみついてきた。

 ああもう、可愛いなぁ。この出迎えだけでも、ずっと頑張ってきた甲斐があるというものだ。


「うわぁ……。本当にずっと待ってたんだ……」


 私の後ろから、リーダーさんの驚きの声がした。

 しかしそれを気に留める様子もなく、リリーは今なお頬擦りをしてくる。



 ――ぐぅ。



「むぅ……。ママー、お腹が空いたの!」


「え、えぇ? 待ってたのは良いけど、ちゃんと食べてた?」


 私の言葉に、リリーは首を横に振った。


 余談ではあるが、リリーはお腹はしっかり減るものの、食べなくても死ぬということは無い。

 ……でも、食べられるのであれば、しっかり食べておいた方が良いよね。


 空を見上げれば、時間は昼過ぎというところだ。

 天気も良いことだし、ここはしっかり昼食をとることにしよう。

 幸い、この辺りには露店がたくさんあるのだから。



「リーダーさんたちは、すぐに街に戻りますか?」


「話を聞いてたら、ちょっとお腹が空いてきちゃったかな……。

 なぁ、みんな。一緒に食べていかないか?」


「おっ、賛成だぜ!」

「良いわね!」

「やったー♪」


 ……どうやら紅蓮の月光(クリムゾン・ムーン)の四人も食べていくようだ。

 それならリリーとも面識があることだし、一緒に食べていくことにしようかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――ダンジョンの中でも思っていましたけど……。

 エミリアさんって、たくさん食べる方なんですよね……」


 エミリアさんの食べっぷりを眺めながら、メンヒルさんが感心しながら言った。

 最近ではエミリアさんも食べる量を隠そうとしないし、私たちにとってはごく有り触れた日常のひとコマになっている。


「えへへ♪」


 エミリアさんは肯定するでもなく、否定するでもなく。

 目の前の料理を美味しそうに平らげていく。


「……エミリアさんは、アイナさんの親友……みたいな感じですか?」


「え?

 うーん、何でしょうね?」


「何って、アイナさん酷いっ!!」


「いやぁ……。仲間だし、親友だとも思っているんですけど……。

 ちょっと付き合いが深すぎて、それだけで済むのかなーって……」


「なるほど!」


 私のふわっとした答えに、エミリアさんは何だか満足気だった。


「はぁあ~……。何て素敵な関係なんでしょう……」


「メンヒルさんには、そういう方はいないんですか?」


「私は紅蓮の月光(クリムゾン・ムーン)のメンバーとずっと一緒にいますから……。

 やっぱりマリモちゃんと、一番仲が良いですね」


「ん?

 私だって、メンヒルちゃんのことは仲間だとも思っているし、親友だとも思っているよ?」


 マリモさんは目の前の串焼きを食べながら、事も無げに言った。


「そ、それならマリモちゃん! お願いがあるんだけど……」


「……私、エミリアさんほどは食べられないよ?」


「えぇー……?」


 ……?


 良くは分からないけど、メンヒルさんとマリモさんの間で、何か話が通じ合っているらしい。

 確かにこの言葉数だけでこんなにも伝わるのなら、親友と言っても過言では無いだろう。

 ……長年連れ添った夫婦のような感じもするけど。



「ママーっ! お代わりを持ってきたのーっ」


「たくさん買えましたぁ……♪」


 そうこうしていると、リリーとセミラミスさんが、大きなお皿に大量の料理を乗せて運んできた。

 総勢8人で食事をしているから、露店でたくさん買ってきてもらったのだ。


「リリー、ありがとー。

 セミラミスさんも、すいません。一緒に食べましょう!」


「えぇー……。わ、私は運ぶ係で大丈夫です……!」


 いやいや、セミラミスさん。

 あなたはこの場にいたくないだけでしょう。

 しっかり話をして、しっかりコミニュケーション能力を磨きましょう。


 私は強引にセミラミスさんを座らせて、一緒に食事をすることにした。

 いつも通り、はわわっとしていたけど、それもいずれ直っていくことだろう。……多分。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 食事も終わってのんびり話をしていると、遠くからリーダーさんに手招きをされた。


 用事があるなら普通に話し掛けてくれれば良いのに……?

 何か内緒の話でもあるのかな?


 私が立ちあがると、リーダーさんは少し離れた岩陰に走っていった。

 ふむ、本当に内緒話ということか。



「――呼びました?」


「ああ、うん! ごめんね、ゆっくりしているときに」


「いえ、大丈夫ですけど……」


 私とリーダーさんのいる場所は、大きな岩の裏側。

 暗くはないが、周りからは見られない、ちょっとしたポイントになっているようだった。


「えーっと……。

 ……あの、改めてお礼を言いたかったんだ」


「お礼?」


 ……そう聞いて、何も思い浮かばないほど呆けてはいない。

 命を助けたり、食事の準備をしたり、それなりにはしてきたからね。


「うん。

 ……俺たち四人、命を助けてくれて、本当にありがとうございました!

 誰ひとり欠けることなく戻って来れたのは、アイナちゃんのおかげです!」


「いえいえ。本当に偶然なんで、あまり気にしないでください。

 これも何かの縁……ってやつですから」


「あそこで助けてもらったのは、偶然とは言え、本当に運が良かった……。

 ガチャでは散々な目に遭ったから、それで相殺されたのかな……。いや、それどころじゃ無いんだけど……」


「あ、リーダーさんもガチャをやったんですか? どうでした?」


 ……まさかリーダーさんまでガチャをやってくれていたとは!

 そして気になる、他人のガチャ結果。

 他人の不幸は蜜の味――とまでは言わないけど、やはり気になるのが人の(さが)というものだ。


「ははは……。俺たち四人で、一人一回ずつやったんだけど……。

 全部D賞だったよ……」


「なむー」


「え?」


「ああ、いえ。私の故郷の、慰め言葉みたいなものです」


「そうなんだ。へぇ、初めて聞いたなぁ」


 厳密には全然違うんだけど、ネットの世界ではそんな感じで使われたりもする。

 つまりこれは、慰め言葉と言っても差し支えは無いだろう。


「ちなみに私はC賞ひとつ、D賞ふたつ、でしたね。

 なかなか良いものは出てくれなくて……」


「お互い損をしたねぇ……。

 ――それで、話は戻るんだけど……、俺にはお礼であげられるものなんて無いから……これを受け取って欲しいんだ」


 そう言いながらリーダーさんが出してきたのは、年代物の指輪だった。


「……これは?」


「うん。俺が17階で拾ったものなんだけど……。

 あそこではみんな、宝箱を1つずつ開けていたみたいなんだ。

 だからそれぞれ、その1つは自分のものにしようって話になってさ」


「えぇー?

 さすがに17階で手に入れたなら、貴重なものかもしれませんよ?」


「ははは。自分と仲間たちの命以上に、貴重なものなんて無いよ」


 ……確かに。

 私だって、エミリアさんやルークの命を助けてもらったら、それこそ全力でお礼をするところだ。


「んー……。

 ……でもこれ、私がもらって良いんですか?」


「え? もちろんだよ!」


 ここ数日を一緒に過ごした感じ、メンヒルさんもマリモさんも、リーダーさんのことが好きっぽいんだよなぁ……。

 そんな二人をさて置いて、お礼とは言え、拾いものとは言え、他の女の子に指輪なんて、あげちゃっても良いものなのか……。


 ……まぁ良いか。

 問題が起きるようなら、そのときは返してあげよう。

 またきっと、そのうち会うだろうしね。



 ――って、岩陰から誰かの気配がするぞ……。

 嫌な予感。……ここはさっさと切り上げることにしよう。



「……そうですね、それではありがたく頂きます。

 もし困ったことがあれば、いつでも気軽に相談してくださいね♪」


「うん、ありがとう!

 しばらくはマーメイドサイドにいるから、また会おうね!」


「はい!」



 ……その後は、みんなで街に向かって、そこで解散。


 ――はぁ、それにしてもなかなかの長旅だった……。

 今日は久し振りに、柔らかいベッドでぐっすり眠りたいところだなぁ……。

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