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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
496/911

496.水の迷宮②

 ――『水の迷宮』の15階。


 さすがにここまで来ると、敵もかなり強くなってくる。

 魔法がまったく効かないとか、そういう嫌らしい敵がいないのだけは救いだけど――


 そういえば、そんな敵が出てきたらどうするんだろう?

 『アルケミカ・クラッグバースト』は性質的に物理ダメージだから、多分大丈夫なのかな。

 ……いや、物理が効かない敵が出てきたらまずいのか……。



「アルケミカ・クラッグバースットぉ!!」


 ズガッンンッ!!


「おぉー! ずいぶん速くなってきましたね!」


 私のそれなりの上達に、エミリアさんは満足そうに祝福してくれた。


 何せ私が魔法を使わなければ、先に進めないのだ。

 戦いの緊張の中、同じ魔法ばかりを使う。

 敵がいないときも、どうすれば速く使えるのか、どうすれば上手く使えるのか、最近はそればかりを考えていた。


 さすがにこの数日、ずっとそんな状態なものだから、錬金魔法への集中力も半端ないものになっている――

 ……というところで、まさにグリゼルダの思うツボになってしまったというわけだ。


 ダンジョンの外に戻ることができたら、そのときはしっかり感謝することにしよう。



「アイナさーん、宝箱を見つけましたよ!」


 休憩中、エミリアさんが陰に隠れていた宝箱を見つけてきた。

 このダンジョン、ちょこちょこ宝箱があって、なかなか楽しい。さすが私の創ったダンジョンだ。


「何が入ってますかね」


「それでは開けますよ。それーっ」


 エミリアさんが宝箱を開けると、どこからともなく矢が飛んできた。

 ……が、その矢は防御の魔法で軽く撃ち落とされた。


 結構シンプルな罠が多いため、私たちだけでも余裕でどうにかなっている。

 ここら辺、冒険者に優しい設定が活きているのだろうか。


 そんなことを思いながら、エミリアさんの後ろから宝箱の中を覗いてみる。

 するとそこには一冊の本が入っていた。


「――本、ですか」


「本、ですね」


「本、ですぅ……」


 何故か二人に復唱されたが、私はそのまま鑑定をしてみた。


 ----------------------------------------

 【解毒の書】

 水魔法『キュアポイズン』を修得できる魔法道具

 ----------------------------------------


「……あっ」


「「え?」」


 私の声に、二人は驚いた。


「これ、もう持ってますね……。

 『循環の迷宮』でも手に入れましたけど、そういえばそのままずっと持っていました……」


「あー、確かにありましたね。

 リーゼロッテさんの件で、あのときのことは何となく触れにくくなっていましたし……」


「リーゼ、ロッテさん……?」


 突然出てきた名前に、セミラミスさんは不思議そうな顔をした。


「昔、一緒にダンジョンに潜ったんですけど、途中で裏切られて殺されかけたんですよ。

 いや、良い人間ばかりじゃ無いって痛感しましたね。……あ、人間じゃなくて、エルフか」


「はぁ……。エルフの方でも、そんな方がいたんですね……。

 私の知っているエルフさんたちは――……ああ、やっぱりそういう人も、たくさんいました……」


 セミラミスさんはエルフを擁護しようとしたが、途中で諦めてしまった。

 人間だって、そんな悪者はたくさんいるからね。どこの世界にも、きっとそういうのは一定数いるのだろう。


「セミラミス様はエルフの方もご存知なんですね。

 私はまだ、その一人にしか会ったことがないんですよ」


「私の住んでいた大陸に、エルフの里があったんです……。

 何回も私を訪ねてきてくれて、交流をしていたんですよ」


「へー? セミラミスさん、ずっと閉じこもっていたわけではなかったんですね」


「もちろんです……! 10年に一度くらいは、ちゃんとお話をしてましたから……!」


 ……あれ?

 10年って……、思ったよりも間が空いていないかな?

 セミラミスさんって、本当に外部と接触をしてこなかった人(竜?)なんだなぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――『水の迷宮』の17階。


「はぁ……。何だかこの階、敵が急に弱くなりましたね」


 弱くなったとは言っても、やはりそれなりにはしっかり強い。

 その上で、敵の数は他の階以上にいるようだった。

 少し動くとすぐ見つかり、結構な量の敵が押し寄せてきてしまうのだ。



「……でもアイナさん、魔法の方も結構速く使えるようになりましたよ!

 たまにつっかえますけど、着実に倒していけるようになりましたし」


「あはは、ありがとうございます。さすがに一日に100回以上も使ってますとね……。

 氷魔法を禁止されている今、私には攻撃手段がこれしかないわけですから……!」


 一応、爆弾なんてものもあるけど、話の流れ上、それも完全にNGだ。

 爆弾なんて使うくらいなら、最初から氷魔法を使っておけば良いわけだし。


「100回以上って……。

 んんー、魔力を消費しないなんて、やっぱりズルいです!」


 そう言いながら、エミリアさんは可愛くぶうたれた。

 実はこの錬金魔法、魔力をほとんど消費しないのだ。


 つまり、一日に何回使おうが、魔力切れはしないという破格の性能。

 しかし物事には何らかの対価が必要になってくるわけで……。


「錬金魔法って、アイテムボックスの素材がどんどん減っていってますからね?

 魔力は消費しませんけど、財力は消費してるんですよ」


「そ、それは嫌ですね……。

 でも正直なところ、アイナさんはお金持ちだから、もはやそれくらいは関係無いのでは?」


「むむ」


 エミリアさんの反論に、私は何も言い返せなかった。

 私の収入は、海洋都市マーメイドサイドの広範囲の利権と、お酒やら雑貨やらの売り上げで、結構な額になってきている。


 だから仮に、錬金魔法が1回銀貨5枚程度掛かるとしても、実はそこまでお財布にダメージがあるというわけでも無かった。

 無駄撃ちばかりしていれば、もったいないお化けが出てきそうだけどね。



 ――ミシッ


「アイナ様、後ろに敵が――」


「はい!

 アルケミカ・クラッグバースト!」



 ズガアアアアアアアァンッ!!



 セミラミスさんの声に反応して、遠くから急襲を仕掛けようとしていた敵を軽く撃ち砕く。


「……おぉ! いつになく流暢な!」


「ふふふ、そろそろ完璧じゃないですか?

 これで私も、錬金魔法使い! ……あれ? 何だか語呂が悪い……?」


「それに錬金術師なのか、魔法使いなのか、よく分かりませんね……。

 両方ではあるんでしょうけど……」


「ここまで来ると、新しい職業名が欲しいですね。

 うーん、何が良いかなー……」


 ……5分くらい考えてみたが、特に何も出てこなかった。

 一応、『アルケミカ』でも良いような気はしたけど、それは少し安直だし……。


「アイナ様は『神器の魔女』を名乗っていらっしゃるので、『魔女』でよろしいのでは……?」


 セミラミスさんの言葉に、私ははっとしてしまった。



 ――魔女!



 錬金術も使いそうだし、魔法も使いそうだ。まさに私にぴったり!!

 ……でも、『魔女』はもう名乗っているからなぁ……。新鮮味がちょっとなぁ……。まぁ、別に良いか……。



「さて、アイナさんも良い感じで魔法を使えるようになりましたし、そろそろ私とペア狩りでもしてみませんか?」


「え? ペア狩り――って、もうやってませんでした?

 セミラミスさんは、特に戦闘には参加していませんし」


「んー……。そうなんですけどね?

 でも私、防御ばかりをしていたじゃないですか。私も攻撃すれば、もっと早く終わりますよ!」


「む……、なるほど?

 うーん、なるほど……。ふむ……、なるほど!!」


 私はエミリアさんと一緒に、攻撃をしまくっている光景を思い浮かべてみた。

 防御魔法が手薄になるから、気を付けなければいけないところは増えるけど……しかし上手く立ち回ることができれば、とても格好良さそうだ。

 リスクは伴うものの、そういう方向に戦闘技術を伸ばしていくのも面白いかもしれない。


「どうでしょう?」


「良い……ですね!!

 いざとなればセミラミスさんもいますし、ちょっと試してみましょう!」


「わーい♪

 それではセミラミス様、何かあったときはフォローをお願いします!」


「はわわ……。わ、分かりました……っ!」



 『水の迷宮』での修行は、ここにきて第二段階へ。

 さぁさぁ、どんどん強くなっていきましょーっ。

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