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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第3章 鉱山都市ミラエルツ
49/911

49.ひとりぶらり歩き①

 翌日、私たちは依頼を受けるべく冒険者ギルドに向かっていた。


「今日も良い依頼があるといいねー」


「そうですね。ラージスネイクと同じくらいの依頼があれば受けてみたいです」


 私の言葉にルークもやる気満々だ。


「私もばっちりサポートさせて頂きます!」


 エミリアさんも小さくガッツポーズのようなものを取っている。


 魔物討伐だと私は出来ることが少ないんだけど、それでも何とか出来ることを探して頑張ろう、うん。

 魔物討伐以外にも何か受けて、私の面目も保ちたいところではあるんだけどね。




「――あれ? 冒険者ギルドのまわり……人だかりが出来てない?」


 冒険者ギルドの建物が見えてくると、何やら人の行列がいくつも出来ていた。


「何でしょうね? 屋台でも出ているのでしょうか」


 エミリアさん、多分それは違うと思います。


「ギルドの方も外に出ていますし……何かあったのでしょうか」


「何だろうね? ちょっと急いでみよっか」


 私たちは心持ち、歩くスピードを速めていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「依頼を受ける方はこちらでお願いしまーす!」

「依頼をする方はこちらでお願いしまーす!」

「納品をする方は裏手までお回りくださーい!」

「販売は本日は中止とさせて頂いておりまーす! ご了承くださーい!」


 冒険者ギルドの敷地に入ると、ギルド関係者が忙しそうに冒険者たちを案内をしていた。


「かー、めんどくせぇ……」

「おいおい、何時になったら俺たちの番になるんだよ……」

「まったく……今日の仕事、どうなることやら……」


 列に並んでいる冒険者からも、愚痴が色々と聞こえてくる。


「――アイナ様、ギルドの入口で何かあったようですね」


「入口?」


 ルークの言葉を受けて冒険者ギルドの入口を見てみれば――無残な残骸と焦げ跡が残されていた。


「……なに、あれ?」


「入口で何か爆発したのでしょうか? そんなように見受けられますが――」


「確かにあれじゃ、中に入れませんよね。うーん、だから建物の外で色々と対応しているんでしょうか?」


 ははぁ、なるほど……。

 入口の後処理もしなきゃいけないし、さすがにいつもより仕事自体の効率も落ちるだろうし、加えて冒険者の案内もしなきゃいけないし。

 職員さんも忙しそうだし、今日は何をするにしても時間が掛かりそうだ。


「うーん。今日は依頼受けるの、止めておく?」


 これはスケジュールに縛られない者の特権である。

 時間が掛かるのであれば、スルーしてしまえば良いのだ。


「そうですね。昨日お休みしたばかりですけど……」


 エミリアさんが何か申し訳無さそうに言う。

 休んだのは三人とも同じではあるんだけど。


「ルークもそれで良い?」


「はい、私は問題ありません。

 しかしそうすると、今日は何をしましょう?」


「そうだねー。

 あ、今日も自由行動にする? ルークも剣を見たいでしょ?」


「なるほど……。私はそれでも構いませんが、アイナ様はそうすると?」


「私はちょっとぶらついてから宿屋に戻ろうかな。ちょっと錬金術の研究もしたいなって」


 錬金術の研究――というか、今ある素材で何か作れるものは無いか確認するだけなんだけどね。

 昨日、宝石屋で色々な屑石を手に入れたから、何か作れるようになっていれば良いなって。


「研究……ですか、さすがアイナ様。えっと、エミリアさんはどうしますか?」


「私ですか? そうですね、私も少し街を見て回りたいかもです」


「エミリアさん、何か気になるところでもあったんですか? それなら私も――」


「あ、いえ。えっと、図書館とか礼拝堂とか、そういうところにですね、はい」


 ふむ、図書館か……。ちょっと行ってみたいけど、今日はいいかな?


「分かりました。それじゃ別行動、ですね」


「はい、そうですね」


「アイナ様、おひとりで大丈夫ですか……?」


「ルーク君、君は心配性すぎるぞ!」


 私はルークをしっと注意した。したつもりだ。


「そ、そうですか? あまり裏地には入らないように気を付けてくださいね。あと、知らない人には付いて行かないように――」


 完全に保護者の人だ!

 そこら辺は注意するけど、いちいち言わなくても大丈夫だよ、さすがに!


「大丈夫だよ! そんな子供じゃないし」


「そうですよ。アイナさんだっていざとなれば暴漢の一人や二人、爆弾で――」


「いや、それは無いです」


 さすがに街中で爆弾なんて使えるかーっ!!


「そんなこといったらエミリアさんだって――」


「えっ!?」


「エミリアさんは攻撃魔法があるじゃないですか」


「ああ、確かに。でも――直撃すると、怪我させちゃいますよ?」


 それは爆弾も同じです!


「……まぁそれはそれとして、何があるか分からないので、それは気を付けましょうね」


「はい」

「はーい」


「それじゃ今日は自由行動! 夜は19時に宿屋の食堂に集合ってことで。

 というわけでお昼は各自で――」


 そう言いながらルークとエミリアさんに銀貨を2枚ずつ渡す。


「――これは?」


 受け取りながら不思議がるルーク。


「え? 昼食代」


「えぇー? お休みになるのに、ご飯代までもらって良いんですかー?」


「そこは私のこだわりなので! あ、これ以上食べるときは自費でお願いしますね」


 エミリアさんとか、絶対超えそうだしね。


「はぁあ……何とも慈悲深い……。アイナさんが神様なら良かったのに……」


 銀貨2枚で神様になれるならお安いものですよ、エミリアさん。


「――それではありがたく頂きます。余った分はお返し――」


「しないで大丈夫! ルークとか、絶対に倹約しそうだし!」


「うっ。……わ、分かりました」


 図星だったのか、ルークがちょっと怯んだ。

 何となく考えていることが分かるくらいの付き合いはしているからね。しっかり食べておくれ。


「それじゃ一旦、解散っ! 変なのに絡まれないようだけ、注意しましょうね」


「はい、それではまた後ほど」

「いってきまーす!」




 ――というわけで今日は自由行動!

 昨日は団体行動だったけど、今日は気ままな単独行動だ。


 さて、宿屋に戻る前に、どこに行こうかな――?

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