48.ミラエルツでお店拝見⑤
私たちが最後に訪れたのはアクセサリのお店が集まったところ。
武器屋や防具屋よりもその数は多く、今まで以上に目移りがしてしまう。
「すいぶんとたくさんのお店があるねー」
「そうですね。この街で扱うものの中ではアクセサリは作りやすいものですし。
ほら、あのお店とか――店主の女性がひとりで切り盛りしているでしょう? 参入がしやすいと言いますか」
なるほど。確かに武器や防具に比べれば、アクセサリは小さいしね。
高い技術が必要とは言え、個人製作もずっとしやすいだろうし――初期投資も少なそうだし。
「言われてみれば色々な大きさのお店があるね。大きなところもあるけど、ここら辺は小さいお店が多いのかな?」
「私はあんな感じの小さなお店か好きですね!」
エミリアさんはいろいろと見比べながら、センスの良い看板を掲げたお店を指差した。
「なるほど、エミリアさんはああいうのが好みなんですね。確かに洗練されてる感じで――エミリアさんにはぴったりかも」
エミリアさんは、黙っていると本当に綺麗な人だからね。
――あ、いや。少し打ち解けると何かお茶目なところが見えてくるってだけで、悪口では無いよ、断じて!
「私はちょっと可愛さがある――あっちの方も好みかな?
ちょっとクセがあると言いますか」
「ふむふむ。アイナさんは可愛いのが映えますからね。ああいうの、良いですよね!」
……まぁ、ガルルンがツボに入るセンスだからね。
やっぱりこう、直球なものも良いんだけど、少し変化球が入ったものを好むところがあるのだ。
「それじゃいろいろと見て回りますか。あっちの方から行きましょう!」
「分かりました! たくさん見ましょうね!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気が付けば外はすっかり真っ暗。
「うわー、アイナさん。もうこんな時間ですよ……」
「本当だ……。見るものが多すぎて我を忘れてしまった……。ルークも、見るもの無いのにごめんね……」
私とエミリアさんは色々と見れて楽しかったのだが、ことルークに関してはアクセサリは特に欲しいものでは無いわけで。
「いえ、私はこういうお店にはあまり来ませんでしたから――良い経験になりました」
うん、そうだよね。経験になっちゃったよね。
「それじゃエミリアさん。名残惜しいですがそろそろ帰りますか。何か買い残したものとか、大丈夫ですか?」
「はい、私は大丈夫です。アイナさんは?」
「私も今日は大丈夫です!」
これだけ散々見て、買ったものはゼロ。
まさにウィンドウ・ショッピングというやつだ。
「――ところで折角ですし、今日は宿屋の食堂じゃなくて外のお店で食べていきます?」
「いいですね! そうしましょう!」
エミリアさんが速攻で賛同してくる。
ルークはそれに少し遅れて賛同。
「それでは少し向こうにいったところに料理が美味しいという酒場があるので、そちらを見てみませんか?」
ふむ、酒場か――。
「うん、行ってみよっか。私はお酒飲めないけど――」
「あれ? アイナさん、お酒は飲めないんですか?」
エミリアさんが意外、といった感じで聞いてきた。
「え? だって私、17歳ですし」
「え?」
お酒は成年になってからでしょ? 元の世界では24歳だったから飲んだことはあるけど、こっちの世界ではちゃんと控えてるよ?
「――もしかして……。アイナ様、お酒は15歳から問題ありませんよ」
ルークがそんなことを言ってくる。
「え? 20歳からじゃないの?」
少しきょとんとしながら返すと、いつもの視線を漏れなく頂いた。
「ああ、アイナ様の育ったところではそうだったんですね……」
「20歳からだなんて、ずいぶん厳格な生まれだったんですね――」
――くっ、やはりこうなったか……!
でも17歳でもう大手を振ってお酒を飲めるんだ?
これは良いことを知ったぞ、早速飲んでみよう!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それじゃ、今日もお疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした!」」
今日は色々と見て回っただけだけど、それはそれでずっと動いていたからね。うん、やっぱり疲れた!
しっかり休んで、明日に疲れを持ち越さないようにしないと。
「ところでエミリアさんとルークって、お酒は飲むの?」
「私は信仰の関係で飲みませんね」
あ、エミリアさんはそうなんだ?
「私もあまり好んでは飲みませんね」
ルークもそうなんだ? 真面目か! ……いや、真面目なんだけど。
「うーん、エミリアさんには無理を言えませんね……。それじゃルーク、弱いので良いから飲んでみない?」
「え、えーっと……そうですね。どうしましょう……」
「私、今日はお酒デビューだからその記念に! 喜びを分かち合おう!」
「む……そういうことでしたら、頂きましょう」
ふむ、ルークは基本的には飲まない人なんだね?
そんな感じで、お料理とお酒を注文した。
「ぷはーっ!」
お酒を煽って第一声。頼んだのは何かビールっぽいお酒だった。
元の世界ではあんまりビールって好きじゃなかったんだけど、今回飲んでるのは何か飲みやすくて美味しい。
「アイナさんって、豪快なのか可愛いのかよく分からない飲みっぷりですね」
「えっ」
ビールを飲んだときは『ぷはー』だと思ったのだが。
元の世界だとみんなそんな感じだったし!
ルークを見てみると、無駄なことは言わずに静かに飲んでいた。
大人か! ……いや、この世界では成年なんだろうけど。(お酒が15歳からってことは、15歳が成人なんだよね?)
「ルークはお酒、美味しい?」
「はい、美味しく頂いてます」
「ところであんまり飲まないみたいだけど、味が苦手なの? 悪酔いする感じ?」
「いえ。どちらでも無いのですが、同席した方によれば何やら余計なことを言ってしまうそうなんです。自覚は無いのですが」
へぇ? そうなんだ?
まぁ絡み酒やら泣き上戸よりは――良いのかな?
「ほらほらー。お酒も良いですけど、こちらのお料理も美味しいですよ! どんどん食べましょー」
エミリアさんは嬉しそうに大皿から取り分けている。
ふむ、てきぱきと気が利くなぁ。会社の飲み会だったら、男性陣からは女子力高しと認められるだろうね。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「ルークさんもどうぞ」
「ありがとうございます。エミリアさんはテキパキとしていて素敵ですね」
「……え? あ、どうもー?」
あ、本当だ。これか。何か余計なことを言ってるぞ。
私はちらっとエミリアさんを見てニヤニヤする。
「アイナさん……っ!」
ふふふ。エミリアさんがこんな風に慌てるなんて、珍しいかもしれない。
「エミリアさん? アイナ様がどうかしましたか?」
「いいえ、いつも可愛い人だなと思いまして」
「もちろんですとも。アイナ様以上に可愛い方が、この世界にいるものですか」
――ッ!?
それを聞いてエミリアさんはこちらを見てニヤニヤしている。
何というやり返し……。ぐぬぬ……。
「――お二人とも、どうかしましたか?」
「「いいえ?」」
――本当にひとこと多いな! ついでに無自覚なんだな!
なんだかやりにくいから、これからはルークにお酒を勧めるのは止めよう。うん、それが良い。




