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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第9章 海洋都市マーメイドサイド
466/911

466.雨の日、来客③

 ヴィクトリア親衛隊とやらに襲われたあとは、ごく普通の一日だった。

 ……本当に、何だったんだろうね、あれ。


 夕方も少し遅くなったころ、私はお屋敷に戻ることにした。

 念のためジェラードにはずっと一緒にいてもらったんだけど、特に何もなくて申し訳なかった。

 ……まぁ、何かあっても申し訳ないんだけど。



 お屋敷に戻ってから、ジェラードと一緒に食堂に行くと、エミリアさんとリリーがすでに席に着いていた。


「お待たせしました。いやー、今日はいろいろあって」


「アイナさん、聞きましたよ!

 お店で襲われたんですって!?」


「ママ、大丈夫だったの?」


「大丈夫、大丈夫。5人いたけど、全員やっつけたから!」


「「おお!」」


 私の言葉に、エミリアさんとリリーは感心したように声を上げた。

 ……リリーはエミリアさんの真似をしただけにも見えたけど、何だかとっても可愛らしかった。



「やっつけたって言っても、全員それなりに強そうだったんだよ?

 昔のアイナちゃんだったら危なかったんだからね?」


「ふむ。何だかんだで、私も強くなっているってことですね!」


 基本的には錬金術のおかげではあるんだけど、それ以外にも私はいろいろとやっているからね。

 ちょっと走り込んだりとか、ちょっと走り込んだりとか。


 ……あれ? 走り込んでしかいないな……。



「――それで、アイナさんを襲った人たちはどうなったんですか?」


「いつ目が覚めるか分からなかったので、自警団予定の方々に連れていってもらいました。

 ルークが指揮を執っていたので、そこは安心ですよ」


「おぉー、ルークさんも立派になりましたね!

 でもこういうことがあると、『やっぱりアイナ様の側にいたい』って言い出すのでは……?」


「ああ、そうですね……。

 うーん。でも、ルークには自警団の方をお願いしておきたいからなぁ……」


「それなら僕がずっと、護衛してあげようか?」


「ジェラードさんがですか?

 あちこちに行ってるイメージが強すぎて、ずっと護ってもらうイメージが湧きませんけど」


「確かに、最近はあまり出歩きませんよね。

 やっぱりポエール商会の、例の女性絡みなんです?」


「ちょ、ちょっと! エミリアちゃんまで何を言うの!?」


「いろおとこ、恋愛中なの?」


「えぇ!? リリーちゃんに変なこと吹き込んだのは誰っ!?」


「……グリゼルダかエミリアさんくらいしか思い当たりませんけど……」


「わ、私じゃありませんよ!?」


 リリーもいろいろな人と話すものの、ジェラードの話をするのなんて限られた相手しかいない。

 それこそグリゼルダかエミリアさんくらいのものだろう。

 エミリアさんには速攻で否定されちゃったけど……。



「そういえばアイナさん。グリゼルダ様って、今日からどこかに出掛けられたんですよね」


「はい、行き先は教えてくれなかったんですけどね。

 代わりにグレーゴルさんに、人魚の島の警備をお願いしておきました」


「今日、偶然会ったからお話をしたんですよ。

 そしたらグレーゴルさん、凄い緊張してて♪」


「え? 何でまた?」


「人魚さんって、上半身が割と肌蹴ているじゃないですか。

 それが目に毒だ――って」


「ピュアですね……!」


 ここに来て、グレーゴルさんの意外な一面を知ってしまった。

 割と荒っぽい印象を受ける人だけど、人間よりも魔獣の方に心を開いてきた人だから――

 ……基本的に、人間慣れをしていないだけなのかもしれない。そして女性慣れも、かな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 今日の夕食の給仕をしてくれているのは、ルーシーさんとキャスリーンさんだった。


 ……ルーシーさんと言えば、ルイサさんからの頼まれごとがあったっけ。

 少し遅れてしまったけど、そろそろ話をしておこうかな。


「ルーシーさん、ケーキ屋さんのことでお話があるんだけど」


「はい、何でしょうか」


「ルイサさんが宿屋の上客向けに、ルーシーさんのケーキ屋さんと取引がしたいんだって。

 お店で売っているものと差別化したりとか、金額交渉もそれなりにありそうだけど……どうする?」


「喜んでお話を聞かせて頂きます!

 ……ただ、私の本業はメイドです。できるだけ……という前提になりますが、それでも良いものでしょうか」


「うん、忙しいのにごめんね。

 材料のことなんかは、難しかったら私に相談してね」


「ありがとうございます。

 それでは少し、考えさせて頂きます!」


「よろしくー」


 ……っと、ケーキ屋の方はこれで良いかな?

 完全にお任せ状態だけど、これもルーシーさんの実力があったればこそだ。


 何せケーキ屋は、自分の力だけで出しちゃったからね。

 私のまわりにはさり気なく超人のような人が結構いるけど、ルーシーさんも多分に漏れず、さり気なく超人のような人だったのだろう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 夕食も終わり、リリーと一緒に部屋に戻ってのんびりと過ごす。

 少し遊んだあと、リリーは早々に寝入ってしまった。


 本来であれば灯りを消して私も休むところだけど、リリーって明るくても普通に寝ていられるんだよね。

 最近ではそれに甘えて、リリーが寝たあとも、私は普通に起きていることが多かった。


 ……まぁ、さすがに音を立てていれば起きちゃうんだけど。



「さて――」


 たまには最近あったことでもまとめてみようかな?

 ……あったことというか、残っていることか。


 さすがに今はやることが多すぎて、終わったことまで考えている余裕はあまり無い。

 時間はそれなりにあるけど、『時間』と『余裕』はまた違うものだからね。



 まずはポエールさんからあった『水』の話。

 この街が発展していけば、いずれ水が足りなくなる、という話だ。

 ……でも時間的に、優先度はそこまで高くなさそうかな?


 次は人魚たちが見つけたという海底の洞窟の話。

 ……そういえば、その後の話は聞いていなかったっけ。

 そもそも人魚の島にはあれ以来行っていないし、グリゼルダからも特に話は無かったし……。


 次はグリゼルダが集めた『ダンジョン・コアの欠片』の話。

 ……ああ、これは今からでもできるかな。

 まとめることが終わったら、すぐにでも挑戦してみよう。


 次はアドルフさんの話。

 最後に話をしてから一週間が経つけど、そろそろ鍛冶屋の仕事に戻ってもらいたいものだ。

 この街の目玉になる秘策に関わることなのだから、ここはしっかりやってもらわないと。

 ……できれば弟子も取ってくれると、人手的に助かるんだけどなぁ。



 ――っと、まぁそれくらいかな?

 細かく言えば、王国側の動きが気になったり、上手くいっていないという交易交渉も気になったりはするけど――


「……私はしがない錬金術師だからね。

 ま、できるだけのことしかできないわけで……」


 誰にともなく……多分自分に言い聞かせながら、私はアイテムボックスから杖を取り出した。

 調べ物をするときの必需品。

 『安寧の魔石』を嵌めた杖を使わないと、また何日か寝込んでしまうことになるのだ。


「それじゃ、いきますか。

 『ダンジョン・コアの欠片』から、『ダンジョン・コア』を復元させることのできる方法は――」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――……あった!


 何があったのかと言えば、『ダンジョン・コア』を復元する方法があったのだ!!


 ただし、条件というか、必要なものはある。

 その『ダンジョン・コア』が、どういう迷宮になるかの方向性――それに加えて、それに必要な『力』が必要になるのだ。


 しかし私の調べた方法で『復元ができる』というのであれば、夢は間違いなく広がる。

 何せその方向性は、自分で選ぶことができるのだから。



「『螺旋の迷宮』が無くなってどうしようかと思っていたけど、これは運が良かった……!

 神様、ありがとーっ!」


 とりあえず私は、宙を仰ぎながらアドラルーン様にお礼を言った。

 多分聞こえてはいないだろうけど、もしかしたら聞いてくれているかもしれない。



 神様――……と言えば、シルヴェスターが言っていた件も、謎のまま残っていたっけ。

 でも街に関することとは違って、神様レベルの話なんて、私にはさっぱりだからなぁ……。


 ヴィクトリア親衛隊が言っていた『あの方』だって、結局はヴィクトリアのことだっただろうし――

 シルヴェスターが言っていた『あの方』は、依然謎のまま……っと。


 そう言えばルークはまだ帰っていないけど、どうしたんだろう?

 もしかして、まだヴィクトリア親衛隊の面々から情報を引き出そうとしていたり……?



 ――う~ん、それにしても何だか気分が良いぞ♪


 やっぱり『ダンジョン・コアの欠片』の件が、我ながらとても嬉しいのだろう。

 街の売りをひとつ、確保できるんだからね。


 せっかくだし、今日はこのままルークの帰りを待ってみようかな?


 グリゼルダもいないことだし、秘蔵の『きんつば』もこっそり出してしまおう。

 ちょっとだけ飲みたい気分だけど――

 ……まぁ、『竜の秘宝』は止めておこうかな。何せ相手は、ルークだし。

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