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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第3章 鉱山都市ミラエルツ
45/911

45.ミラエルツでお店拝見②

「いやー、やっぱり宝石って良いですよね! あ、綺麗ですよねって意味で!」


 宝石屋を出ながら――若干の白々しさを織り交ぜながら――エミリアさんに話し掛ける。

 私だって一応は女の子だからね。綺麗なものは綺麗だとは感じるんだよ。いや、本当に。


「はい、そうですね! とっても綺麗な宝石がたくさんあって――私はキラキラしたものが好きなので、ダイヤモンドとかアクアマリンが欲しくなりました。

 ほらほら、私のローブにも合いそうでしたし」


「うーん、確かに合いそうですね。ちなみに私も透明でキラキラしたのが好きですよ。光が織りなす煌めきというか――」


「心にぐっと来ますよね!」


「ですよね!」


「――ところでアイナさん、最後に何か買ってましたか?」


「あ、はい。お見せするほどのものでも無いんですけど」


「えーっ。いいじゃないですか、見せてくださいよー」


「えぇ……? いや、でも本当に――」


「みーせーてーくーだーさーいー!!」


 エミリアさんにはあんまり見せたくなかったんだけどなぁ……。

 ……私は観念して、アイテムボックスから宝石屋で受け取った紙袋を取り出した。


「はい、どうぞ……」


 ガサッ


「……え? 何か重いですけど、これって――」


 エミリアさんは紙袋を覗きながら、少し困惑して言う。


「宝石……というか、石……ですね」


「はい。屑石というか、加工のときに出た欠片です……」


「え? これ、何かに使うんですか?」


「えっと、錬金術の素材に――」


 ここまで言い掛けてエミリアさんの方を見ると――『あ、そうでしたね……』みたいな顔で見られていた。


 ですよね! 分かってました! だから見せたくなかったのに!




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 次に来たのは鍛冶屋が並ぶ一角。

 さすがに鉱山都市だけあって、かなりの鍛冶屋が軒を連ねていた。


「ははぁ……、壮観ですねぇ……」


「……まったくですね。えーっと、ルークさんはどこかご存知のお店はありますか?」


「いえ、特には。仕事で来たことはあるのですが、それなりに大きいところで、発注したものを受け取るだけでしたからね。

 顔馴染みのようなところはありませんよ」


「そうなんだ? それじゃとりあえずその大きいお店に行ってみる?」


「そうですね、そうしましょうか」


 ルークの案内でひとまずはその大きいお店に寄ることにした。




「うーん、結構広いね」


 お店の中に入ると、想像以上の広さだった。

 壁にはたくさんの武器が飾られており、気軽に手に取れるようになっている。


「そういえば私、武器屋って初めてかもしれない」


 ゲームとかでは散々お世話になったけど、実際に入るなんて初めてだ。

 クレントスでは最後の最後で杖を頂いたものの――武器とは縁の無い生活だったし。


「それじゃ武器屋デビューですね!

 早速良い武器を――って、アイナさんの場合はその杖が立派すぎて、そこらのお店じゃこれ以上のものは見つかりませんよ……?」


「そういうエミリアさんは?」


「私はこの杖で満足してますから……。どちらかといえば魔石が欲しいんですが――」


 ああ、お金が無くて買えないって言ってたもんね。


「さっきの宝石屋には魔石はありませんでしたけど、ここにはありますかね?」


「えーっと……あそこでしょうか? でも、スペースが狭いですね……。大したものは無いかも……」


「じゃ、行ってみましょうか。えっと、ルーク――」


 ルークの方を見てみれば、真面目に剣を見定めている。

 うん、並んでいる剣はルークのものと同じくらいか、それより上のランクも少しはありそうだしね。

 やっぱり主戦力なのだから、良い武器は持っていてもらいたいものだ。


「ルーク、私たち魔石を見てくるね」


「それでは私も――」


「ううん。そんなに時間掛からないから、ルークはここで剣を見てて?」


「あ、はい。分かりました」


 ルークは引き続き視線を剣に戻して何やら考えていた。

 いつもより何となく素直なところを察すると、やっぱり武器屋には来たかったんじゃないかなぁ。




 エミリアさんと一緒に魔石のスペースにいくと、30個くらいの魔石が綺麗に並んでいた。


「うーん……やっぱりそんなにはありませんね」


「そうなんですか?」


「たくさん売っているお店に行けば、それこそずらーっと並んでいますし。

 そういうところはさすがにちょっと面白いものもあるんですけど、ここは実用的なものばかりですね」


「……面白いもの?」


「はい。魔石っていうのは色々な力が混ざり合って結晶化する石なのですが――混ざり方次第で、変な効果を持つ魔石が出来ることもあるんです」


「へー。例えば?」


「歩くたびに『ぷぎゅ』っていう魔石とか――」


「……それ、何の使い道があるんですか……?」


「さぁ……? 魔石って誰かが狙って作ったものじゃなくて、自然に結晶化するものですからね……。全部が全部、役に立つものでは無いんです。

 とはいえ、さすがにお店に並んでいるのは実用品が多いので――まずはそういったもので目を肥やしていけば良いかと」


 なるほどなるほど。

 魔石には色々な可能性がありそうだけど、錬金術じゃ多分作れないからなぁ。

 少し前に空箱の魔石を調べてみたら、作るには『無垢の魔石』に加えて、『空箱の力』とやらが必要みたいだったし。

 『空箱の力』の方――『無垢の魔石』に入れる力自体――を自由自在に作ることが出来れば、どんな魔石でも作れそうなんだけどね。


「さて、それじゃどんな魔石があるか見てみましょうか」


 鑑定しながら魔石を見る。


 ----------------------------------------

 【剛力の魔石(小)】

 力が1%増加する

 ----------------------------------------

 【斬撃の魔石(小)】

 斬撃の攻撃力が1%増加する

 ----------------------------------------

 【粉砕の魔石(小)】

 破砕の攻撃力が1%増加する

 ----------------------------------------

 【増幅の魔石(小)】

 魔力を1%増加する

 ----------------------------------------

 【空箱の魔石(小)】

 重量を15%軽減する

 ----------------------------------------


 ――おっと、空箱の魔石(小)があるね。

 えっとお値段は……金貨12枚!


「エミリアさん、これ、金貨12枚ですって」


「空箱の魔石ですか? そうですね、金貨10枚は底値くらいですので――売っているのは大体こんなものですよ」


 ふむ。頭の中ではもうすっかり金貨10枚イメージだったけど、流通量が少ないなら値段に幅は出てしまうか。

 欲しいときに買うのか、安いときに買うのか……。うーん、そういう買い物は苦手なんだよなぁ。


「ところで、何か良いものはありましたか?」


「うーん、特には無いですね。空箱の魔石はアイナさん、もう持ってますし。

 やっぱりこのお店のメインは武器――ということで、魔石はオマケくらいなんでしょうね」


「なるほど……。ついでに一緒にどうですか、くらいなんでしょうね。うーん、それじゃルークのところに戻りますか」


「はーい」




「それではルーク君。欲しい武器を教えてくれたまえ」


「無いです」


 ――うぉい!


「え、えー? あんなに真剣に見てたのに……?」


「ああ、いえ……。確かに良いものもあるのですが、今とそんなに変わらないというか……。

 それに武器というのは何というか、命賭けの戦いの相棒になる存在ですので。どうもこう、ピンと来るものが無いといいますか――」


 ……うーん、なるほど? ルークがそう言うくらいなんだから、多分きっとそういうものなんだろう。


「そっかー。それじゃ、もし何か欲しいのがあったらちゃんと言ってね。こういうところで遠慮するのは無しだから!」


「分かりました。ありがとうございます」


「……というか、鍛冶屋もたくさんあるからね。ここで決めなくちゃいけないわけでもないし」


「え? まだ剣を見て回るんですか?」


「――え? ダメ?」


「時間がちょっと……。それでしたら今度、私一人で来ようかと思います」


 おや? 理由があるとはいえ、ルークから一人になろうとするなんて珍しい。

 やっぱりじっくり探したいんだろうね。別に側で待つのなんてどうってことないんだけど――まぁ、集中したいのかな?


「それじゃ今日は止めておいて、次の自由行動の日はそれで――で、良いかな?」


「はい、分かりました」




 私たちは武器屋から出て、次は防具屋に向か――おうとしたのだが、太陽もずいぶんと高い位置にある。


「あれ、大したことしてないのにもうお昼だね。そろそろご飯にします?」


「はい」

「はい!」


 というわけでご飯タイムに突入。どこか良いお店はあるかなー?

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