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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
441/911

441.お祭り⑤

「まぁまぁ、そこを何とか!」


 ……えぇー……?


 ビンゴ大会の開催を宣言したあと、早々にステージを降りようとしたところでポエールさんに止められてしまった。

 彼曰く、このまま私にビンゴ大会の進行をお願いしたいとのこと……。


「……そもそもはどういう段取りだったんですか?」


「はい、予定では私がやる予定だったんです。

 しかしアイナさんの挨拶はご立派でした! 掴みもしっかり取れていましたし!!」


「確かに笑いは軽く取りましたけどぉ……」


 でも、こういうのに関してはズブの素人だよ?

 こんなステージに上がったのなんて、卒業式で卒業証書を受け取った以来のことだし。


「それにですね。アイナさんは今、良い感じで好感度があるじゃないですか。

 ここで進行役を上手く勤めることができれば、さらに好感度が上がるというものですよ!!」


「んー……」


 好感度が上がってどうなるかと言えば、街の運営が多少は上手くいく――……ようになるのかな?

 人間というものは、よく分からない人よりも、良いイメージを持った人の方を手伝いたくなるものだし……。


「数字の抽選や賞品の受け渡しは商会の職員がやりますので!

 アイナさんは合間合間にトークを挟みながら、場を盛り上げちゃってください!!」


 ……さすがイベント中。ポエールさんのテンションも何だか少しおかしい。

 となれば、私も付き合って少しくらいはおかしくなった方が良い……のかな。

 日頃お世話になっているわけだし、せめてこれくらいは……?


「うーん、分かりました。

 でも、トークが滑ったら助けてくださいね」


「おお、ありがとうございます!

 いざとなれば、私もステージの上で『バナナの皮に滑って転ぶ芸』をお見せしますから!!」


「うわぁ、ベタですね」


 ……いや、それよりもそのネタ、こっちの世界にもあるんだ?

 これはもしかして、あらゆる世界で共通の鉄板ネタ……なのかな。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ポエールさんと進行について軽く打ち合わせたあと、私はステージに戻ることにした。

 そんな私を見て、ステージの下からはどよめきのような、少し低い声が響いてくる。


「えーっと、すいません、戻ってきました。

 何か私、このまま進行役をしろってことでしたので、引き続きよろしくお願いします」


「「「「「おかえりなさーい!!!!」」」」」


 ……参加者も大概、ノリが良いものだ。


「はい、ただいまですよ。

 さて、ここでポエールさんの登場です。ご存知の通り、ポエール商会の一番偉い人です。

 偉い人なんですが、今日はガラガラをまわす役を買って出ていただきました」


「頑張ってまわします!!」


「「「「「がんばれーっ!!!!」」」」」


「ポエールさんの前にあるガラガラ……これ、名前は何て言うんですか?」


「ガラガラとか、福引器って言うらしいですよ」


「ガラガラ……って、そのまんまですね。

 で、これをまわすと1から75までの数字が書かれた玉が出てきます。

 ……一回やってみましょうか」


「はい、いきますよー!!」


 私の言葉に、ポエールさんはガラガラを勢いよくまわし始めた。

 正直、何だか凄く楽しそうに見える――のは置いておいて。



 ガラガラガラガラ……コロン。



「――はい、75が出ました!

 一番大きい数字ですね。75が手元の紙に書いてある人ーっ!?」


「「「「「あったー!!」」」」」

「「「「「ない……」」」」」


 会場からは嬉しそうな声と、寂しそうな声が入り乱れて聞こえてくる。


「はい、75があった人は、指でそこに穴を空けてください。

 あ、そうだ。当たった人も外れた人も、中心のマスは空けておいてくださいね」


「「「「「りょうかーいっ!!!!」」」」」


「……で、この穴が縦か横、斜めに5マス繋がったら『ビンゴ』って叫ぶんですよ。

 一回練習してみましょうか。はい、せーのっ!!」


「「「「「ビンゴー!!!!」」」」」


「はい、よくできました!

 ちゃんと恥ずかしがらずに叫びましょうね。叫ばなかったら賞品はお預けですからね」


「「「「「りょうかーいっ!!!!」」」」」


 ……まずい、何だか楽しくなってきた。

 このまま変なテンションで押し切れば、何とか最後までいくことはできそうだ。


「それじゃ、どんどんいきますよー!

 次の説明は、誰かが揃えてからしますね。それじゃ、はい! ポエールさん! ガーラガラっ!!」


「ほいっと! ガーラガラ!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――はい、次は13! 13でーすっ」


 ビンゴ大会は順調に進み、今は6回目の抽選が終わったところだ。

 ここで揃ったら、かなり速いタイミングではあるんだけど――


「び、ビンゴっ!!」


「お? 揃いましたか?」


「はいっ! ビンゴーっ!!」


「おお、おめでとうございます! それではステージに上がってきてください!!」


 しばらくすると、二十歳を少し過ぎたくらいの青年がやってきた。

 名前は覚えていないけど、確か上下水道の工事現場でよく見掛ける人だ。


「はい! 一番乗り、おめでとうございます!

 せっかくなのでお名前をどうぞ!!」


「あ、このまま喋れば良いんですか?」


 青年はこっそり私に聞いてきたが、残念なことに拡声魔法でその声を拾われ、周囲に大きく響き渡らせてしまった。

 その様子に、会場からも笑いが起こる。


「――はい、私と同じ失敗をしましたね!

 ひそひそ話をするときは、口を手で押さえましょう」


「は、ははは……。こう、ですね。

 改めまして、俺の名前はジルです。アイナさんにはいつもお世話になっています!」


「いえいえ、いつもお仕事ありがとうございます!

 今日は是非、良いものを当てていってください!」


 私がそこまで言うと、ポエール商会の職員が大きな箱を持って近付いてきた。

 箱は両手で抱えるほどの大きさで、薄い木で作られているようだ。

 天面には丸い穴が空いていて、そこから手を入れて、中の紙を1枚取る――という寸法だ。


 私が促すと、ジルさんは恐る恐る箱に手を突っ込み、紙を一枚取り上げた。


「――はい、取りましたね。

 この紙にもらえる賞品が書いてあります。賞品は全部で……30個でしたっけ?」


「そうです!」


 30個……ともなれば、後半はある程度急いで進めないとダメそうだ。

 でも今はまだ一回目だから、ここはゆっくりと進行することにしよう。


「それではジルさん、何が書いてあったか教えてください!!」


「はい! えっと――

 ……『リリーのお絵描き券』……?」


「何ですと!!?」


「ひゃいっ!?」


「それ、私が欲しかったのに!!」


「「「「「あははははっ」」」」」


 ……先に当てられたのは残念ではあるが、一応笑いは取れたから良しにしよう……。


 ――リリーのお絵描き券。

 それはリリーが似顔絵を描いてくれるという、とってもとっても貴重な券である。


 リリーも最初はエミリアさんと同じように、編み物を賞品にしようとしていたんだけど――

 ……グリゼルダ共々、編み物は(しょう)に合わなかったらしく。


 リリーは賞品を変えることになったんだけど、その流れでグリゼルダまでよく分からない『券』に変えちゃったんだよね。

 そっちはそっちで、誰が当てるのかがとても気になるところだ。

 ……ちなみに私には必要ないものだから、グリゼルダのやつは当たって欲しくは無いかな。


「はい! ジルさん、おめでとうございます!

 明日あたりに時間をくださいね! リリーに似顔絵を描いてもらいますので!!」


「ありがとうございます、大切に使わせて頂きます!」


「そうしてください!!

 ……こんな感じで、ビンゴのあとに抽選して賞品が決まります!

 なかなかビンゴにならなくても、最後まで希望は捨てないでくださいね!」


「「「「「りょうかーいっ!!!!」」」」」



 ……さてさて、先はまだまだ長い。

 でもこの調子で、徐々にスピードを上げながら盛り上げていくことにしよう。


 私もこのノリが続く間に、しっかり役目を果たし終えないとね……!!

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