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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
431/911

431.一旦、クレントスへ

 4日後、私たちはクレントスに予定通り戻ることにした。


 ここまでのスケジュールは順調で、むしろ少し早いくらいに進んでいる。

 そんな状態なのであれば、私たちもここから安心して離れられるというものだ。



「――そうだ、アイナさんにお願いがあるんですよ」


 見送りにきてくれたポエールさんが、別れ際にそう言った。


「え? 何ですか?」


「たまに話は上がっては消えていた件なのですが……。

 そろそろこの場所の――これから作る街の名前を決めて頂きたいんです」


「あぁー……」


 確かにその話は今までにも何回か出てきていた。

 しかしよく考えたいという言い訳のもと、ずるずると先延ばしにしていたんだけど――さすがに本腰を入れて決める頃合いか。


「アイナランドじゃないんですか?」


 私たちの会話に、しれっとエミリアさんが割り込んできた。

 そしてその命名、あり得ない。


「そんなわけは無いですね」


「えぇー!? 私も微妙かとは思っていたんですけど!」


「……それなら言わないでくださいよ……」


「えへ♪」


「ははは。直接的で、インパクトもある……。

 少しアレですが、無くは無いかもしれませんね! ……多分」


 ポエールさんはエミリアさんをフォローしようとして、何やらおかしなことを口にしていた。

 気持ちはありがたいけど、そういうフォローは要りませんから!


 ただ、私には最終的に付けたい名前があった。

 普通の街に付けるには少し恥ずかしい名前なので、この場所の発展の最後、国として名乗りを上げるときに改名しようと考えている。

 ……つまり結局のところ、それまでの繋ぎの名前は考えなければいけないのだ。


「うぅーん、やっぱりすぐには出てこないので、持ち帰りますね。

 確かにこれから、宣伝もしていかなければいけませんし……」


「はい、その通りです。

 アイナさんのお店が完成したら、ポエール商会が全力で宣伝にあたります。

 この街の存在も、十二分にアピールしていかなくてはいけませんからね!」


「あはは、人手がまた掛かってしまいますね」


「まったくです。土木建築の職人も増員しますし――あ、クレントスでは受け入れ試験をお願いしますね。

 ……それに冒険者の流入を積極的に推奨していくことになりましたし、あとはそろそろ資産家へのアプローチも必要になってきます。

 やることはたくさんですよ!!」


「ポエールさんも、ちゃんと休んでくださいね。

 代わりが効かない方なんですから」


「そうですね……。最近は少し、負荷を分散しようといろいろとやっているんですよ。

 もうひと山を越えてしまえば……といったところです!」


「まだ山を越えるんですか……。

 いざとなったら、アドルフさんにたくさん押し付けてくださいね!」


「おいっ!?」


「ははは、そうさせて頂きましょう」


「おいっ!?」


 ……アドルフさんのツッコミが2回聞こえた気がするけど、きっと空耳だろう。


「さて、それじゃそろそろ行きますか。

 また2週間後くらいにお会いしましょう!」


「はい、道中お気を付けて!」


 ポエールさんの挨拶が終わると、馬車はゆっくりと走り始めた。

 このままのペースでいけば、次に来るときはこの場所も順調に発展しているだろう。


 下準備は完了で、そろそろ次の段階を目指す……っていう感じかな。

 これからは職人さんも一気に増えることになりそうだし。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 馬車に揺られながらも、考えることはたくさんある。

 特にアドルフさんが熱心に仕事を受け持ってくれたおかげで、その相談も結構飛んできている。


 やっぱり一人で何でも抱え込んでいちゃダメだよね。

 ポエールさんも早く、信頼できる人に仕事を渡していければ良いんだけど……。



「――ところで、みんなはどうだった?」


 私たちの世話で時間を取られてしまっていたが、メイドさんも三人、いろいろと積極的に動いてくれていたようだ。

 私が大雑把に聞いてみると、まずはルーシーさんが返事をしてくれた。


「……とても活気がある場所でした。

 人数はまだまだ少ないのでしょうが、それでも未来に向かっているというか……。

 あそこにいるだけで、何だか嬉しくなってしまいました」


「今がまさに発展中だからね。これからもっと賑やかになっていく予定だから、期待しててね!」


「……そこで、ご相談なのですが」


「え? なぁに?」


「マーガレットさんがいろいろと話を聞いていたのですが、あそこでは甘いもののお店が欲しいという要望があるようです。

 今度私が行ったとき、お菓子の露店を開いてもよろしいでしょうか」


「おー、ルーシーさんはケーキとか上手だもんね。

 本業の傍らだと大変だけど、大丈夫?」


「長期は厳しいですが、一週間程度なら特に問題は無いかと思います」


 ルーシーさんの言葉に、ミュリエルさんも賛同してきた。


「私もフォローしますので、どうかお許しください……!」


「え!? ミュリエルさんが手伝うの!?」


「あ、作るところ以外で……なんですけど」


 私の勢いのある返事に、ミュリエルさんは少し恐縮しながら言った。

 ミュリエルさんが少しでも作る手伝いをしたら、いかにルーシーさんのお菓子が美味しいとは言え、一気にダメになる可能性があるのだ。


「んー、そうだね。二人が大丈夫なら、良いと思うよ。

 ……となると、あっちに行くときは一緒になるように調整しないとね」


「申し訳ございません、よろしくお願いします。

 次の次あたりで考えて頂けると嬉しいです」


「それくらいあれば、準備時間は足りる?」


「はい! ……それに、次はキャスリーンさんの番ですから。

 今回はじゃんけんで決めていたのですが、負けた彼女の落ち込みっぷりも凄くて……」


「へ、へぇ……?」


「そんなこともありまして、申し訳ないのですが……次回はキャスリーンさんのこと、よろしくお願いします」


「あー、うん。よくは分からないけど任された……!

 それだけ楽しみにしてくれているってことだもんね、私としても嬉しいよ。

 ……ところでマーガレットさんは、どうだったかな?」


「はい、たくさんの方とお話が出来てとても楽しかったです!

 アイナ様のこともいろいろと聞かれたのですが、良い感じでお伝えしておきました!」


「良い感じ……。あ、ありがと……」


「いえいえ!

 あとはやっぱり、お店の数が全然ないのは寂しかったですね。

 まわりの村からも、行商の方が来てくれれば良いのに……って」


「アドルフさん、今の話――」


「合点承知!」


「――というわけで、次は少し改善されると思うよ!」


「い、今ので、ですか? 凄い……!」


「あはは、アドルフさんがやる気に満ちているからね。

 多少の無理難題くらい、何でもへっちゃらな感じだよ」


「それは頼りになります……!

 ……はい、私はそれくらいです。これからあの場所がどうなっていくのか、私もとても楽しみにしています!」


「ありがとう、みんなで頑張ろうね!」


「「「はい!」」」

「おう!」



 いつの間にか、アドルフさんも自然に会話に入ってくれていた。

 しかしこのアドルフさん、次回は浜辺の方に引っ越す予定だ。


 ……となると今回、クレントスに戻るのは最後ということになる。

 それならばアドルフさんのやる気と人脈を活かして、一人の引き抜きをお願いすることにしよう。



 ――宿屋を展開していくとなれば、『あの人』の協力が絶対に欲しいからね!!

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