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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
425/911

425.鍛冶屋の予定地

 次の日は朝から、アドルフさんと一緒に鍛冶屋の予定地を見に行くことにした。

 すぐ隣が建築中の私のお店だから、ついでに職人さんのお手伝いも少しばかりしていく予定だ。



「――おお! この前来たときよりも、結構進んでる!

 ……というわけでこっちが私のお店で、あっちの空き地がアドルフさんの鍛冶屋になる予定です。お隣さんですよ!」


「おー。アイナさんと隣同士だなんて、心強い限りだな。

 ……ところで、向こうの建物は何だ?」


 アドルフさんは少し遠くで建設中の、大きな建物を指差して聞いてきた。


「あれは私のお屋敷です。

 裏庭を通って、お店と直接行き来できるようにするんですよ。王都でもこんな感じだったので、踏襲してみたんです」


「なるほど、アイナさんはやっぱり屋敷を構えるのか。

 俺は店の中にちょっとしたスペースがあれば充分だけど、アイナさんは仲間や使用人がたくさんいるからなぁ」


「そうなんですよ。それに人数も増えてきたので、今までよりも大きめにする予定です。

 クレントスのお屋敷よりも、庭も広く取ろうと思っているんですよ」


「ははは、今ならいくらでも土地は手に入るからな!」


「はい! ちなみにこの辺りの土地は、売らないで賃貸で出すらしいですね。

 街が大きくなれば、この辺りは地価が高くなるはずだということで」


「アイナさんの店の近くじゃ、きっとそうなるんだろうな。

 ……となると、俺の店は一等地になるわけか。ミラエルツではすみっこの方だったから、これは素直に嬉しいぞ!」


「アドルフさんの腕があれば、もっと良いところにお店も出せていたのでは……?」


「いや、アイナさんも知っているだろう?

 俺は基本的に魔法剣士用の剣ばかり作っていたからさ、客は少なかったんだよ。

 ……つまり、収入もあまり無くてな」


「そういえばそうでしたね……。

 アドルフさんの装飾技術やセンスは凄いと思うんですけど、何だかもったいないというか……」


「うーん……。

 それじゃアイナさんから宝石でも仕入れて、装飾武器でも作ってみるかなぁ……」


「それは良いですね!

 ちなみに普通の武器を作るつもりはないんですか?」


「できなくはないんだが、俺の目指すのはそっちじゃないんだよな。

 ほら、例えばアイナさんだって、人殺しよりも人助けのアイテムの方を作りたいだろ?」


「ああ、なるほど。

 確かに昔は爆弾を作るのにも躊躇していましたね……」


 ……とはいえ、今となっては爆弾なんて、全然気にしないで作ってしまうけど。

 王都から逃げ出すときだって、他人様に爆弾を投げつけるような真似をしていたわけだし。

 ……何だか昔の真面目な自分が、急に懐かしく思えてきてしまった。


「そんなわけで、俺はやっぱり魔法的なものが良いんだよ。

 もちろん普通の武器屋が欲しければ、この近くに誘致してくれて構わないぞ。別に拗ねたりしないから」


「拗ねるだなんて、そんな可愛いことを言わないでくださいよ……。

 でもこの辺りは専門的なお店を集めたいですね。私の趣味なんですけど」


「そういう場所は街の目玉になるから、とても良いと思うぞ。

 どんなヤツがくるのか、俺も楽しみにしていよう」


 私とアドルフさんは辺りの土地を眺めながら、近い未来に何となく思いを馳せていた。



「――さて、それじゃお店の話に戻りますか」


「おう!」


 ……改めて私のお店を見てみると、今は絶賛建築中の状態だ。

 すでにおおよその形は出来ており、ここからしっかりと外装を作っていく……といったところか。


 それとは逆に、アドルフさんのお店はまだ何も手を付けられておらず、私のお店の建築資材の置き場になっている状態だった。


「……アドルフさんの鍛冶屋も、建物の大きさは私のお店と同じくらいにする予定なんです。

 建てるにあたって、何か要望はありますか?」


「そうだなぁ……。

 広さはこれくらいあれば十分だし、内装はあとからどうにでもできるから良いとして……。

 ……ああ、そうだ。地下室が欲しいな。地下の作業場が欲しい!」


「え? 地下、ですか?」


「地下室は男の浪漫だぞ! ……というのは別として。

 ほら、鍛冶場からは音が出るものだろう? 将来的にどうなるかは分からないが、あまり周囲を気にしないで集中できる環境が欲しいんだ」


「ああ、防音というか、遮音というか、そんな感じですか。

 うーん、地下室か……。それ、良いですね。私のお店にも地下室が欲しくなりました!」


「……アイナさんのところはもう遅いんじゃないかな……」


「ぐふっ」


 確かに私のお店の方は、建物の基礎まわりの工程は終えている。

 今から地下室を増やすのは……どうだろう? いや、職人さんに無理を言っても申し訳がないし、今回は諦めることにしよう……。



「――アイナ様!」


「え? あ、マクシミリアンさん、こんにちは」


「……うん? アイナさん、こちらの方は?」


 突然私たちに声を掛けてきたのは、ポエール商会から派遣されている建築士のマクシミリアンさんだ。

 私のお店に関しても、すでに何度か打ち合わせをしてもらっている。


「設計を担当してくれているマクシミリアンさんです。

 マクシミリアンさん、こちらは鍛冶師のアドルフさんです。とっても腕が良いんですよ」


「おお! お会いできて光栄です。

 まさかアイナ様のお知り合いの鍛冶師がアドルフさんだったなんて!」


「うん? 俺のことを知っているのか?」


「それはもう!

 アドルフさんの作った宝剣を王城で見て、私がどれだけ感動したことか……! あれは本当に見事で……!」


「ああ、あれか……。うん、お眼鏡に適ったようで、何よりだ」


「へぇ……、凄いですね。王城に飾られる剣を作ったんですか」


「そもそもは貴族の依頼で作ったものだったんだが、いつの間にか献上されて、飾られてしまっていてな。

 俺の作った武器の中でも10本の指に入る傑作だったから、悪い気はしなかったが」


「10本、ですか……。アドルフさんの中ではそこまで評価は高く無い……?

 ……10位以内ってことですよね」


「まぁまぁ、厳密な順位じゃないからあんまり気にしないでくれ。

 最近はアイナさんやグリゼルダ様のおかげで、良いものをたくさん作らせてもらっているからさ。

 少し謙遜して、ぼやかしただけだよ」


「なるほど……。1番目はアゼルラディアであって欲しいですけど、怖いから聞かないでおきますか……」


「いや、何だかんだで言えば、あれが1番だぞ?」


「……何だかんだって」


「ほら、あれは神器にはなったものの、俺の純粋な作品では無いだろう?

 アイナさんの錬金術があってこそ神器になったというか――

 ……まぁつまり、合作ということになるのかな。合作を含めて良いのであれば、俺の一番は間違いなく神剣アゼルラディアだ!」


「それは嬉しい限りです……!

 次の杖も、是非とも愛してあげてください!」


「ははは。あの杖はたくさん作りすぎたから、正直なところ見飽きたというか……」


「ひどいっ!?

 ……というのはさておいて、鍛冶屋の建物の要望があればマクシミリアンさんに相談してみてください。

 親切丁寧に、いろいろと教えてくれますから」


「はい、可能な限り相談に乗らさせて頂きます。

 設計図は商会の拠点にあるのですが、ご覧になられますか?」


「おお、それは見てみたいな!

 ……ちなみに地下室は……無いよな?」


「残念ながら……。しかし今の段階であれば、そのように変更することは可能です。

 アイナ様の力をお借りできれば、工期もあまり変わりませんし」


「うん? 地下室とアイナさんに、何か関係があるのか?」


「私の場合、錬金術で掘削作業とかもできるんですよ。

 だから地下室を作るなら、一人で穴を掘っていけちゃうんです」


「……さすがと言わざるを得ないが、それは俺の知ってる錬金術じゃないなぁ……」


「……今さらですよ?

 そんなわけなので、地下室を作ることになったら私も手伝います。

 他にも要望があれば、今のうちに言っておいてくださいね」


「ありがとう。お言葉に甘えて、男の浪漫に満ちた地下室を作ることにするよ。

 よろしくな、マクシミリアン君!」


「はい、お世話になります!」


「それじゃ早速、拠点に行って設計図を――

 ……って、アイナさんはどうする?」


「そうですね、私も一緒に行きたいところなのですが……」


 しかし先ほどから、私のお店を建築中の職人さんが、やたらと私の方を見てくるのが気になっていた。

 あの視線は間違いなく『手伝って欲しい』ということだ。

 そもそも私だって、ここに来たときは手伝うつもりでいるのだから――


「……すいません、私はここを少し手伝っていきます。

 アドルフさんはマクシミリアンさんと一緒に、拠点に行っていてください」


「ありがたいけど、大丈夫かな?

 ルーク君からは、アイナさんのことをくれぐれもよろしくと言われているんだが……」


「もう、子供じゃないんですから!

 ……人気(ひとけ)の無いところならともかく、ここには職人さんがたくさんいますし、大丈夫ですよ!

 でも拠点の方に行くのであれば、誰か手の空いている人を呼んで頂けますか?」


「分かった、適当に呼んでくるよ。

 ささ、それじゃマクシミリアン君。俺たちは拠点に行くとしようか!」


「はい、かしこまりました!

 アイナ様、差し支えない程度で結構ですので、作業のお手伝いを是非お願いいたします」


「分かりました、ほどほどにやっていきます」



 ――しかし『ほどほど』とは言っても、職人さんたちの期待の眼差しが凄いわけで。

 えぇっと、今日は何をすれば良いのかな。煉瓦(れんが)の補強と、床石の研磨と、資材の移動と、コンクリートの作成と――


 ……まぁいいや。とりあえず依頼されたものは全部こなしていこう。



「すいません、お待たせしました。何か手伝うことはありますか?」


「「「「「「「「「待ってましたぁ!!!!」」」」」」」」」」」



 ちょっと待って。


 ……今一体、何人が待ってた?

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