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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
410/911

410.新しい武器

 翌日、朝食をとっているとジェラードが戻ってきた。

 昔の貴族の屋敷に探索をしに行っていたという彼の手には、怪しい輝きを放つ緋色の宝石が収められていた。


 ジェラード曰く、今後の目的を果たすためのキーアイテムらしい。


 ……鑑定をしても、残念ながら効果はいまいち分からなかったけど。


 ポエールさんたちは計測や調査を昨日の時点で済ませ、近くの村にも挨拶をしていたそうだ。

 私たちも偶然ジャニスさんと会って、彼女の家に遊びに行ったわけだけど、それはそれで評価をしてくれた。


 どこかに出向いたときは、少しの縁でも残しておくべきだ、と。

 ……まぁ確かに、そこから何かが始まるかは分からない。


 現実は小説よりも奇なり――とも言うくらいだしね。

 例えばジャニスさんがどこかの王女様で、私たちが作る国を強くバックアップしてくれる……そんな展開が、もしかしたらあるかもしれないし。

 ……いや、100%無いか。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 そして馬車に揺られて3日、私たちはクレントスに帰ってきた。

 最近の私たちのホームタウン。やはりここに帰ってくるだけでも、何だか落ち着いてしまう。


 ……私たちがこれから作る街は、もっと落ち着くことができるのだろうか。



「――はぁ。こやつらも懲りんのう……」


 グリゼルダは、彼女の足元に倒れている荒くれ者たちを見下ろして言った。

 ポエール商会の敷地に入ったところで、突然襲われてしまったのだ。


「ぐ、グリゼルダ様もお強いのですね……」


 予想外の出来事を見たからなのか、感動することが何かあったのか、ポエールさんが声を震わせながら言った。


「ふん。こんな連中、何ともないわ。

 しかし素手ではやはりスマートじゃないのう……」


「それなら私が手配の方を……」


「ああいや、もうすでに注文しておるのでな。

 お主の心遣いだけ、もらっておくとしよう」


「かしこまりました、ありがとうございます!」


 グリゼルダの凛とした雰囲気に、どうやらポエールさんは魅了されているようだ。


 まぁ私の担当ではあるけど、所詮私は小娘だからね。

 グリゼルダは生まれたばかりとはいえ、見掛けは艶っぽい感じだし、大人受けはきっと良いのだろう。


「それにしてもポエールさん、警備を少し強化した方が良いかもしれませんね。

 大切なものを扱うときに、こんな荒っぽい人に狙われたら怖いですし」


「まったくその通りですね。ご心配をお掛けします。

 今後は各所で人手が必要になってきますので、まずはここを重点に人を集めることにしましょう」


「横やりを入れられてもつまらないですからね。よろしくお願いします」


「……まぁ、無粋な連中がいれば、倒していけば良いがのう」


「そうなんですけど、無駄な時間は使いたくないんですよね……。

 こういう人たちを相手にするくらいなら、まったり休んでいたいと言うか」


「そうじゃのう。戦いについて言えば、妾もおるし、ルークもおるし、そもそもアイナだって強いからなぁ」


「私は近距離の攻撃特化ですから、打たれ弱いですよ?」


 打たれ弱い割に、死なないんだけどね。

 ……でも危険なのは嫌だから、少しずつ努力はしているのだ。今は絶賛、たまに走り込み中だ。


「それではこの連中は縛ってしまいますか。

 アイナ様、少々お待ちください」


「お兄ちゃん、私も手伝うの!」


「ありがとう。それではリリーちゃんは向こうからお願いね」


「かしこまり! なの!」


 元気に明るく手伝うリリーを見て和む。

 何だか凄くぐるぐる巻きにしてるけど、まぁ動けなくなるなら良いか。

 ……解くのが少し大変そうなのは黙っておくことにしよう。


「ところでアイナよ、これからアドルフのところに行かんか?

 さすがにそろそろ、妾の武器もできておるじゃろう」


「そうですね。まだ明るいですし、今から行きましょうか。

 私の杖もできてるかもしれませんし」


「そろそろ次の神器のことも決めないといけませんよね!

 ふふふ、今から楽しみです♪」


 エミリアさんも、楽しそうに声を弾ませる。

 そうそう、次の持ち主は『魔法使いの』エミリアさんの予定だしね!


「ところでエミリアさん、最近は魔法の勉強は順調ですか?」


「はい、新しくいくつか覚えましたよ!

 最近は戦う機会も減ってきましたけど、これからもしっかりばっちり支援しますからね!」


 ……聞く限り、当然のことではあるが、光属性の支援魔法のようだ。

 うぅーん、もし今の司祭風の服のままいくなら、似合ってくれるかなぁ……。見切り発車、しすぎたかなぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 アドルフさんに会うため鍛冶屋にいくと、いつも通りお店の人に悲しい対応をされる。

 何だかさすがに、そろそろもう慣れて欲しいというか……。


 ……うん、あの人は私が作る街には出禁かな。

 ふふふ、強権発動なのだ。


 そうこうしていると、アドルフさんがお店の奥から出てきた。


「おお、みんな来たのか!

 どこかに出掛けるって聞いてたから、その間に仕上げをしておいたぞ。

 ……あ、グリゼルダ様の武器も完成しておりますよ!」


「待ち侘びたぞ!

 先ほども戦闘をしてきたんじゃが、やはり素手ではスマートでは無くてのう……」


「その割に、喜々として戦っていませんでしたか?」


「なぁに、戦闘は冒険の花形じゃからな!

 それにあんな連中に、ルークの神器も使いたくはあるまい?」


「まぁ、そうですけど……」


 一応、ポエール商会の人たちはそれなりの使い手ではある。

 しかしやはり、基本的には一般人だ。一般人を越えた強さを持つ者がいるなら、素直に任せてしまった方が良い気はする――

 ……ものの、さすがに神器までいくとオーバースペックと言うか。


 光竜王様直々の鉄拳も、どうかとは思うけどね。



「それよりも妾の武器じゃよ! 早速見せて見るが良い!!」


「はい、こちらです!!」


 アドルフさんは自身満々に、ひとつの金属の束を出した。

 グリゼルダはそれを受け取り、少しいじってみていると、突然金属の塊が扇状に開いた。


「おお♪」


 早速コツを掴んだのか、グリゼルダは扇を閉じたり開けたりしている。

 閉じているときの装飾も美しいが、開いたときは金属の色合いと装飾が見事に調和している気がする。


 ……そういえばミスリル製だけど、色は黒っぽく収まったのか。


「魔石スロットも、こっそりサポートを頂いたおかげで5つ付いていますからね!」


「こ、これっ!」


「はっ!? す、すいません……!」


「……んん? グリゼルダの武器にも、魔石スロットを5つ付けたんですか?

 それって、回数制限があるようなことを言ってませんでしたっけ……」


「わ、妾の分は別腹じゃて。……のう?」


「まったくその通りでございます!!」


 ……アドルフさん、完全に言わされてる……。

 いやまぁグリゼルダの力だから、私としても細かいことは言えないけどね?


「そ、それで使い心地は良さそうですか?」


「うむ、重さも動きもばっちりじゃな。

 それに色合いとデザインがとても妾好みじゃ。さすが名うての鍛冶師……と言ったところじゃのう」


「あはは、アドルフさんにもふたつ名を付けてあげたいところですね」


「ふたつ名? ……ああ、アイナさんの『神器の魔女』みたいなやつか。

 いやぁ、俺はそういうやつは別に――」


「そうじゃのう、妾が考えておいてやるわい。

 アイナの仲間に相応しいものを付けてやらないとな」


「――おお、ありがとうございます!

 楽しみにしていますので、よろしくお願いいたします!!」


 ……あれ?

 ねぇねぇ、アドルフさん? グリゼルダに少し甘くないですか?


 ポエールさんもそうだったけど、やはり大人の男性は少し艶っぽい女性の方が良いのだろうか。

 エミリアさんもどちらかと言えば可愛い方だから、艶っぽい……とは言えないんだよね。


「でも、グリゼルダ。そういうやつを考えるのって、得意なんですか?」


「もちろんじゃ。妾のセンスを疑うつもりかえ?」


「まぁ、グリゼルダの命名を聞いたことが無いですから。

 センスが良いか、悪いか、どっちかかなって……」


「疑り深いのう……。

 そうじゃな、例えばリリーは『疫病の迷宮』じゃな」


「そのままじゃないですか」


「エミリアは『暴食の聖人』じゃな」


「理解はできますが、それなら賢者――」


「だから他のにしてくださいっ!!」


「ポエールは『微笑みの酒豪商人』じゃな」


「うわぁ、可哀想……。何だか、どちらかと言うと――

 ……ああ、そうだ。自分に付けるなら、どんなのですか?」


「妾にか? ……そうじゃのう。

 『白銀の竜姫』というのはどうじゃ?」


「……何で一番、自分のがまともなんですか……」


 それに格好良いし、可愛いし。

 グリゼルダの外見的な特徴も押さえているし――


「……何故か、グリゼルダのふたつ名が決まりました」


「おお、そこら辺が良いんじゃな。

 よしよし、それを考慮しながら検討するようにしよう」


「よろしくお願いします!!

 ――さてアイナさん、次は杖の番だな! もちろん出来上がっているぞ!!」


「ありがとうございます!!」



 アドルフさんに渡された杖は、先日見た通りの感じではあったが、やはり完成品となれば良い物に見えてしまう。

 これが次の神器――うん、何だか良いイメージが出て来そうだ。


 ……でも正直、やっぱり聖職者用の杖というか、魔法使い用の杖だねぇ……。

 エミリアさんよりも、私の方が似合ってたりして……。

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