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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
397/911

397.開催決定

 遅い夕食を済ませて、そしてそろそろ休もうかと思ったときに、クラリスさんから声を掛けられた。


「アイナ様、お疲れのところ申し訳ございません。

 このあと、お時間をよろしいでしょうか」


「え? 明日じゃダメ?」


「いえいえ、是非是非」


「うーん。……じゃぁ、あんまり長引かなければ。

 ところでグリゼルダの部屋って、準備できた?」


「滞りなく準備できております。食事後、ルーシーさんに案内させますので」


「りょうかーい。

 グリゼルダ、部屋はメイドさんに連れていってもらってください」


「うむ、承知した。突然のことなのに、手間を掛けるのう」


「とんでもございません!」


 グリゼルダに話し掛けられて、クラリスさんは目をキラキラさせた。

 んん? これは一体、何事か……。


「……それじゃみんな、今日はお疲れ様でした。

 リリーは私の部屋に、先に戻っていてね」


「分かったの!」


「アイナさん、また明日です!」


「私は今晩、警備の手伝いをするので……。何かあれば声をお掛けください」


 おお、ルークも今日は疲れたろうに、まだ働いてくれるのか。

 本当に何だかありがたいやら、申し訳ないやら……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 私が書斎でまったりしていると、クラリスさんがお茶を持ってきてくれた。


「お時間を頂きまして、ありがとうございます」


「ううん、大丈夫だよ。座る?」


「いえ、大丈夫です」


 夕食の準備で疲れているだろうと思って勧めてみるも、やっぱり立場的には座れないか。


「えっと、それで何かな?」


「アイナ様、あの方はいったいどういう方なのでしょうか!」


「あの方……?」


 ……まぁ状況的に、グリゼルダのことだろうけど。


「あの気品溢れる佇まい! さり気ない所作から滲み出る高貴な貫録!

 そこらの王族などでは到底出せない、ただならぬ雰囲気を感じます!!」


「高評価だね……。

 いや、別に教えても良いんだけど……急に、どうしたの?」


「私の血が! メイドとしての魂が!

 あの方をもてなしたくて仕方が無いのです!!」


「ふぇ……?」


 クラリスさんの目がやたらとキラキラしている。

 まるで憧れの人を目の前にしたような、心から好きな仕事をしているような――


 ……そういえば王都でお食事会を企画したときも、大商人のピエールさんや大司祭様を招待したがっていたっけ。

 きっと偉い人や凄い人をもてなしたいという思いが強いのだろう。


「ところで本人から聞いたのですが、グレーゴルさんを警備メンバーに雇用するというお話もあるんですよね?

 加えまして、王都から来て頂いたレオボルトさんの準備もできたようです。

 あとはリリーちゃんの歓迎会もしておりませんので、全部をひとまとめにして、何かしてはいかがでしょうか……!」


「おー、それは良いね!

 そしたら、私がお世話になってる鍛冶屋のアドルフさんも呼びたいなぁ」


「良いお考えです!

 今回はあまり増えすぎないようにしたいのですが、他にはどなたかいらっしゃいますか?」


「そうだねぇ……」


 あとはジェラードと、今後頑張ってもらうことになるポエールさんくらい……?

 アイーシャさんやクレントスのお偉いさんたちは、ちょっと違う気がするかなぁ。

 今回は接待や顔繋ぎの場ではなく、純粋に楽しみたいから――


「……ジェラードとポエールさんの、2人かな」


「かしこまりました!

 ただ、ジェラードさんは基本的に所在不明と伺っているので、スケジュール的に合わせられるかどうか心配です」


「あ、確かに。

 ……でもこういう話をしてると、次の日あたりにひょっこり来るものだよ。ジェラードは」


「そ、そうなんですか……」


「だからもう、最速で開催しちゃえば良いんじゃないかな?」


「ではお言葉に甘えまして、そうしましょう! 明日開催いたします!」


「はやっ!!」


 ……まぁほぼ身内だし、ポエールさんは多少の無理をしてでも来るだろうし……。

 ここは強行開催でも、問題は無いかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「いやー、びっくりしたよ!!」


 ジェラードが開口一番、そんなことを言った。

 ……噂をしたら、本当に次の日に来てしまった。


 もしかして、どこかに盗聴器が仕込まれてる?

 そうでなければ、何らかの運命によって繋がってしまっているとか……。


「あはは、いろいろ変わりましたからね。

 ジェラードさん、3週間くらいはいなかったでしょう?」


「こっちもいろいろあったんだよー。

 それでようやく戻って来れたと思ったら、どこかで見たメイドさんが玄関から出てくるし!

 ……いやぁ、時間が昔に戻ったかと思っちゃったよ」


「少し前にメイドさん、全員逃げちゃったんですよね。まぁ、いろいろあって」


「逃げた、って……。えー、それは斡旋したところにクレーム入れた?」


「いや、そこは仕方の無い理由があって……。

 だから今の5人が来てくれたのは、本当に助かったと言うか」



 その流れのまま、私はジェラードに掻い摘んで話をした。

 もちろんリリーの正体を含めて、だ。



「――……なるほど。

 なかなか信じられない話だけど、まぁアイナちゃんだしね……」


 今回に限っては、その理解はとても助かる。

 理解に困ったときの免罪符。それが私!


「さらに昨日、スペシャルゲストがやって来たんですよ。

 それがあって、昨日は帰るのが遅くなってしまったんですが」


「へぇ……? でも『疫病の迷宮』の子に比べれば、驚くことは無いと思うよ♪」


「そうですよね!

 転生してきた光竜王様だなんて、驚きが足りませんよね!」


「……へぁ?」


 驚かせる気が満々だった私に対して、しっかり驚いてくれるジェラード。

 ふふふ、この超越した存在のツートップには敵うまい。


「それで今晩、みんなの歓迎会みたいのをやろうと思っているんです。

 ジェラードさんも歓迎される立場なので、ちゃんと参加してくださいね!」


「う、うん、分かったよ……。

 迷宮に、竜王……。迷宮に、竜王……」


「本当ならジェラードさんの予定を確認してから決めたかったんですけど、最近戻ってなかったじゃないですか?」


「いやー、それが僕の方もいろいろとあってね。

 ……アイナちゃんほどでは無いんだけど」


「最近の私よりも凄いことがあったら、本当に凄いと思いますよ……」


「だよねー……。迷宮に竜王だもんねー……」


「それで、やっぱり人魚伝説を調べていたんですか?」


「そうそう。話を聞きに行ったらさ、急に襲われちゃって。

 いやー、参った参った」


「えぇ……?」


「何か聞かれたくないことでもあったんだろうね♪

 ある程度の情報は頂いたから、もう少し精査してから話すことにするよ」


「……ジェラードさん、何でおとぎ話を調べてて襲われるんですか……」


 謎が謎を呼ぶ、今回のジェラードの調査。

 でも、だからこそわざわざ調べているとか……?



 ……うーん、まったく謎である。

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