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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
377/911

377.みんなそれぞれ

 次の日の朝、私が食堂に行くとジェラードがパンを食べていた。

 そうそう、ジェラードもこのお屋敷に部屋を用意してもらっているんだって。


「アイナちゃん、おはよう!」


「おはようございます。何だかお久し振り、ですね」


「あはは、いろいろと出掛けてるからね~♪」


「最近は何をしているんですか?」


「ちょっとした調べ物かな? 教えても良いんだけど、変な顔されるから止めておくよ♪」


「えぇっ!? へ、変な顔なんてしませんよ!?」


「そう? それじゃ教えてあげるね。……実は僕、今は人魚伝説を調べているんだ」


「は?」


 ……何で人魚? ここにきて、突然のファンタジー展開なの?


「ほら! やっぱり変な顔した!」


「っ!! ……す、すいません。ちょっと意表を突かれたので……」


「まぁ、今のところは何もならないとは思うけどね。

 でも僕は、二手も三手も先を読むのが仕事だから♪」


「はぁ……。二手か三手か先に、人魚伝説が必要になることがあるんですか……」


 ジェラードは一体どういう未来を見ているんだろう。

 もしかして異種族ハーレムを作るとか……?

 まさかジェラードがそんなことをするなんて――……いや、すごくあり得そうだ。


「……アイナちゃん、何か変なことイメージしてない?」


「察しが良いですね。……じゃなくて、してませんよ?」


「その棒読みの台詞は何かな~……?

 ――さて、それじゃ僕はそろそろ行こうかな。これから伝説に詳しい人に会いにいくんだ♪」


「へ~。ちょっと私も行ってみたいですけど、工房に行かなくちゃいけなくて」


「話は聞いてるよ! 『野菜用の栄養剤』を大量に作っているんだよね?

 ……野菜も十分に流通するようになれば良いんだけど」


「きっと大丈夫ですよ。栄養剤の効果はガルーナ村で実証済みですから!」


「クレントスは、それに頼るしか無さそうだからね……。

 ちなみにクレントス以外のところでは、他の国からの輸入で賄おうとしているみたいだよ。

 ……全部を賄えるわけでも無いだろうけど」


「クレントスについては私が頑張るので、クレントス以外は国の方で頑張って欲しいですね」


 ……『野菜用の栄養剤』に頼るか、輸入に頼るか。

 前者であれば農家の人にも収入が生まれるし、やっぱりそっちの方が良いよね。

 後者であれば、お金は他の国に流れちゃうわけだし。



「――っと、それじゃ本当に行くね。

 アイナちゃんも頑張って!!」


「はい、ジェラードさんも頑張ってください!」


 ジェラードは挨拶をすると、機嫌の良いまま食堂を出て行った。

 もしかしてこれから話を聞きに行くのって、女の子だったりするのかなぁ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 朝食を取ったあとはいつも通り、ルークとエミリアさんとで工房へ向かう。


「――そういえばエミリアさんも、各地の伝説を調べてましたよね」


「え? 最近はなかなか時間が取れていないのですが、そうですね。

 王都を出てからは全然ですけど……」


「何かジェラードさんが人魚伝説を調べているそうなんですよ。

 ……ルークは何か知ってる?」


「いえ、この辺りで……というのであれば、特には。

 一般的なおとぎ話くらいのものでしょうか」


「それって多分、どこかから伝わってきたお話だよね。

 ジェラードさんはここら辺のものを調べてる感じだったけど」


「でも何で突然、人魚伝説なんでしょうね。

 クレントスは今も大変な時期なんだから、もっと他にもやることがあるような……?」


 ……その気持ちは分かる。

 王国軍との戦いが終わったとは言え、やるべきことはたくさんあるのだ。

 そんなときに人魚伝説なんて――


「でもまぁ、ジェラードさんのことだから、きっと何か理由があるんでしょう。

 私たちは私たちで、できることをやっていきますか」


「そうですね! それでは今日も、私たちは工房を厳重にお護りします!」


「ところで二日ほど護って頂いてますけど、怪しい人とかっていました?」


「まったくいませんね!」


 ……平和そのものである。

 でも私も立場が立場だから、油断ができないんだよなぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 工房に着くと、いつものメンバーで早速作業を始めることに。


「師匠! 今日の素材は500個分です!!」


「どんどん増えていきますね……」


 一昨日は100個分、昨日は300個分、そして今日が500個分である。

 『野菜用の栄養剤』を作るのは一瞬とは言え、問題は説明書の方だ。


 さすがにここまでくると、印刷でこなしたいという思いが生まれてくる。

 でも、印刷って錬金術とは相性が悪いんだよね。私の錬金術は、デザインを始めとした細かい調整が苦手だから。


「……まぁ、根性で頑張りますか」


「「「はい!!」」」



 ――根性で頑張った結果、納品までに完成したのは90枚。

 徐々にスピードアップはしているものの、作り終えたあとはやっぱり手がしんどい。


「……はぁ、今日もお疲れ様でした。

 でもよくよく考えてみれば、午後の何も無い時間に説明書を作っておけば良いのかも」


「「「確かに!!」」」


 ……何で私たち、タイムアタックみたいに説明書を作っていたんだろ?

 実践するのはとても簡単なことなので、ひとまず今日の夕方までは説明書を作ってもらうことにした。


 ただ、説明書は必須ということでもなくて、使い方を間違えないでもらうためのものだから――情報がしっかり伝われば、説明書は作らなくても良いんだよね。

 無駄な仕事をしていても仕方が無いし、そのうち配る人にヒアリングをしてみたいところだ。


「説明書を作らないで良いならすぐに終わるから……これだけ何とかしたいですね。

 ――まぁ、今日は一旦終わりますか」


「はい! 師匠、お疲れ様でした!」

「「お疲れ様でした!」」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 私たちが工房をあとにしてお屋敷に向かっていると、元獣星のグレーゴルさんがポチに乗って飛んできた。


「アイナ殿にエミリア殿、ルーク殿。

 屋敷に帰っているところかな?」


「グレーゴルさんも、お久し振りですね。

 用事が終わったので、帰っているところです」


「グレーゴルさんとポチは何をしていたんですか?」


「うん、アイナ殿が作った『野菜用の栄養剤』を配っていたんだ。

 大量に運ぶのは馬車を中心としたチームなんだが、僻地にぽつんとある農家もあってなぁ……。

 俺はそっちが中心って感じなんだよ」


「おぉ、ポチの機動力を上手く活かしていますね!」


「そうだな!

 ……ところで配布のついでに、こんなものを手に入れてきたんだ」


 そう言いながら、グレーゴルさんは土にまみれた卵を鞄から出した。


「たまご、ですか」


「ふふふ、これは魔獣の卵だ! 多分、これは鳥系が生まれると思うぞ」


「おぉ……。

 ところで話は変わりますけど、ポチも卵から生まれたんですか?

 ……いかにも合成獣、って感じですけど」


「ああ、ポチは魔術を絡めているんだ。

 魔獣の卵がいくつか用意して、俺のスキルを加えながら孵化させるとこうなる」


「あ、そういう感じなんですね」


「俺もいろいろ研究中なんだが、その分いろいろな可能性があるぞ!

 アイナ殿には、餌とか装身具とかで協力をお願いしたいんだ」


「お願い?」


 不意にでてきた言葉に、エミリアさんが尋ねた。


「ちょっと約束をしてまして。

 グレーゴルさんのお手伝いをすることになっているんですよ」


「早くポチの仲間を育てないといけないからな!

 もし良ければ、エミリア殿もルーク殿も手伝ってくれると嬉しいぞ!」


「わーい、お手伝いします!」


「私で何かの役に立つのであれば……」


 ノリノリのエミリアさんに、少し戸惑うルーク。

 ……確かにルークとか、どう手伝うかちょっと分からないもんね……。

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