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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第3章 鉱山都市ミラエルツ
37/911

37.Bomb Debut

「れんきーんっ」


 バチッ


 いつもの平和な掛け声と共に、右手に爆弾が作り出される。そしてこちらもお約束――


「かんてーいっ」


 ----------------------------------------

 【初級爆弾(S+級)】

 物理属性、火属性

 攻撃力:30、範囲:7

 ※追加効果:攻撃力×2.0

 ----------------------------------------


 鑑定で確認すると、やはり安定のS+級。


 ……ふむ。初めて爆弾を作ったけど、作り方は薬とあまり変わりないね。

 あまりというか、同じだね。そんなのは私だけだろうけど。


「というわけで爆弾が出来ました」


「うわー。アイナさん、本当に作りたいものを見るだけで作れちゃうんですねー……」


 エミリアさんがしきりに感心している。

 冒険者ギルドで爆弾のサンプル品が置いてあったので、素材を買って早速作ってみたところだ。


「ふふふ。でもまぁこれは、ここだけの秘密ですよ?」


「……あ、そうなんですね。確かにこんな技術、私も初めて見ましたし……。分かりました、黙っています!」


 エミリアさんの素直さもプラチナカードのおかげだろうか。……いや、元の性格かな? 多分、元の性格っぽいな……。


「しっかり作れたから、岩盤破壊の依頼もいけそうだよ!」


 爆弾を見せながらルークにも伝える。


「ではその依頼は受けるとして……。それと、最初に選んだ魔物討伐の依頼も場所が近いですし、このふたつを受けるということでよろしいですか?」


「うん、おっけー。エミリアさんも良いですか?」


「はい、大丈夫です。しっかりフォローしますね!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――とは言うものの」


 魔物討伐の場所に着いて、私は空を見上げながら言う。


「魔物討伐においては私は無力。フォローも出来ません」


「大丈夫です、私にお任せください」


 私がつぶやくやいなや、ルークが素早くしっかりフォローしてくれる。


「うーん、それはありがとう。ところで……今回討伐する魔物って、あの怪鳥だよね?」


 いわゆるガルーダというやつが高い岩場の間を飛んでいる。

 普通に攻撃しても届かなそうなんだけど。


「はい、今回の討伐依頼はガルーダを5匹ですね。倒した証拠として、頭部か足のどちらかを5つ持ち帰るように……とのことです」


 どちらかを5つ。……うん、なるほど。

 『頭部を足のどちらでも』だと、1匹倒して頭部と足で2カウント……みたいな誤魔化しが効いちゃうからね。どちらか、了解しました。


 それにしても証拠を持ち帰るために、倒したら解体するのは自然の流れなんだね。

 なかなかにワイルドな世界である。ゲームみたいにフラグ管理が出来れば楽なのに。


「……さて、それであのガルーダはどうやって倒すの? あんなに高いところを飛び回っているんじゃ、攻撃も当たらなそうだし」


「はい。ガルーダは縄張り意識が強いので、近付いていけば割とあっさり襲ってきてくれます。……そこを遠距離攻撃で狙うことが出来れば楽なんですが――」


「地面くらいまで降りてきてくれたら、私の魔法の射程範囲に入りますよ」


 エミリアさんが気合を入れながら言う。


「それでは私がガルーダの縄張りに入ってヤツらを刺激してきますので、エミリアさんは影からガルーダの翼を狙ってください」


「はい、分かりました」


「ルーク、私は何をすれば良い?」


「そうですね、私のことを信じていてください」


「え? あ、はい」


 イケメンかよ!


 ……いやまぁ客観的に見ればかっこいいんだろうけど。




 ルークがガルーダに近付くと、ガルーダは群れを成してルークに襲い掛かった。

 さすがに5匹からの波状攻撃は防戦一方だ。


 しかし――


「シルバー・ブレッド!!」


「グギャアアァ!!」


 エミリアさんの攻撃魔法が当たり、1匹2匹と地面に撃ち落とされていく。

 プリーストって強いなぁ……。何か私の想像よりも攻撃的なんですけど……。


 それはそれとして、地面に落とされて暴れているガルーダの首をルークは一閃二閃と斬り飛ばしていく。

 いつもの爽やかさが嘘のように、手際良く修羅のように狩る。


 結局、交戦時間は10分にも満たなかった。


「やっぱりルークって強いねー! エミリアさんも強い! さすがー!」


 エミリアさんと一緒にルークを迎えに行く。


「一匹一匹はそんなに強く無いですしね。それに私にはアイナ様の応援と、エミリアさんの支援がありますから」


 イケメンかよ!(2回目)


 エミリアさんはエミリアさんで、少し照れながらルークにヒールを掛けている。

 ちなみに私は当然のようにやることが無い。


「いや、本当に私は戦闘になるとやることが無いね……」


「適材適所ですから。私には及びつかないことをアイナ様はされているのですから、戦闘くらいは私たちにお任せください。

 ……さて、ガルーダの頭を回収しなくては」


 足でもいいんだけど、頭部はもう5匹全部斬り飛ばしているからね。それなら後は拾うだけか……。


「ところでその頭、どうやって持ち帰るの?」


「え? それはもちろん、この皮袋に詰めて――」


「それなりにかさばるから、私がアイテムボックスに入れて持っていこうか?」


「あ……なるほど。それでは、お願いしてしまってよろしいですか?」


「おっけー。少しはやることが無いと肩身が狭いからね。助かるよ」


「そんなお気遣いは無用なんですが……、でも本当に助かります」


 うん、魔物討伐でも私にはやることがあると分かった。うん、良かったー。


 ……荷物持ちだけどね!




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 次に向かったのはガルーダを倒した岩場の近く、広いけど浅めの洞窟。

 依頼主とは途中で落ち合ったが、洞窟の中で説明を受けてから一旦外に出てもらった。危ないかもしれないからね。


「さてと、この岩盤を壊せば良いのね。……っていうか、何でこんな依頼があるの? 依頼主が自分で壊せば良いんじゃない?」


 心持ち声を潜めてルークに尋ねる。


「まぁ確かに、冒険者ギルドでも爆弾は売ってますからね。ただ、自分でやって出来なかったときは自分の責任になるでしょう。

 逆に、依頼を出してそれを受けた人が失敗したとしても、それは依頼を受けた人の責任になります。

 つまり今回のような場合は、あらかじめ決められたお金を出す代わりに、確実にことを済ませたい……そういう需要になります」


 ふむ、なるほど。

 それに爆弾を使うと怪我しちゃうかもしれないしね。やりたくない人も当然いるよね。うん、納得。


「それじゃ早速やってみますか……。えっと、ふたりとも下がってー」


「あ、もし良ければ私がやりますが……」


「まぁまぁ。ここは私にやらせてよ。それじゃ、いきまーす」


 火を付けて――ぽいっとな。




 ドカーーーーーーン!!


   (ドカーーーーーーン)


     (ドカーーーーーーン)




「…………おお……結構……響くね……」


「そうですね……。それと、火力が高いせいもあるのではないでしょうか。S+級の爆弾だけに」


「そうかな? それにしても、一発で壊せれば良いんだけど……」


 爆発の煙が収まると、そこに見えたのは砕けた岩盤だったのだが――


「たしかに砕けたけど……これじゃ足りないよね? この依頼って、岩盤の向こう側まで貫通させるんだよね」


「はい、そうですね」


「うーん、今の爆弾だって、普通のに比べれば威力は2倍だったんだけどなぁ……。

 いや、これを見越して依頼を出したのかな……?」


「そうかもしれませんね。これはなかなか厳しいかもしれません。

 どうしますか? このまま進めるか、もしくは依頼を破棄するか――」


「うーん、出来れば破棄はしたくないよね」


 とはいえこのままだと何発の爆弾を使うことやら。

 爆弾には当然ながらあまり詳しくないんだけど、威力を集中させる的な工夫は出来ないものだろうか。


 『創造才覚<錬金術>』で、手持ちの素材から作れる爆弾を確認していく。


「……お、これは何か(元の世界で)聞き覚えがあるぞ……。いけるんじゃないかな? れんきーんっと」


 バチッ


 ----------------------------------------

 【初級指向性爆弾(S+級)】

 物理属性、火属性

 攻撃力:3~57、範囲:1~13

 ※追加効果:攻撃力×2.0

 ----------------------------------------


 指向性爆弾!

 爆発の方向を絞って、特定の方向に偏らせた爆弾である。


「うん、おっけー。次はこれで挑戦してみるね。セットするのを手伝ってー」


 岩盤に指向性爆弾をセットする。


「アイナ様、これは投げるタイプではないんですか?」


「そうなの。特定の向きを壊す感じの爆弾だから、しっかり方向を決めて、固定してから使うの」


「へぇ……。そんな爆弾もあったんですね……」


「これでよしっと。それじゃいくよ、離れてー?」


 導火線に火を付ける。火は導火線を伝って――


 ドガン!!


 大きな音が洞窟を揺らした。

 煙が収まると――見事に岩盤を貫通した光景が目に飛び込んできた。


「いけたいけた♪」


「おお、すごい……。それにしてもこの岩盤、結構な厚みがありましたね……。これはなかなか壊せないですよ。

 それでもってあの報酬の金額というのは……ちょっと安すぎの気がしてきましたね」


「まぁまぁ。今回は爆弾の練習ということで良しとしよう。

 ……それじゃ依頼主さんを呼んでくるねー」




 依頼主さんを呼んでチェックをしてもらう。

 チェックはどう見ても貫通してるから、あっさり通ったんだけど――


「それにしても……たった2発で済んだんですか……? 自分たちでやれば良かったかな……」


 ――とか言ってたよ?

 やっぱり壊しにくい岩盤だったのは把握してたんだね。まぁ普通の爆弾だったら2発では済まなかったとは思うけど。


 その後、報酬の引換証をもらって依頼主さんとはお別れ。

 この引換証を持っていけば、冒険者ギルドの窓口で報酬をくれるんだって。


「――さて、それじゃ2件ともこなしたし、そろそろ帰ろうかー」


「アイナさん! 少し疲れましたし、お茶でも飲んで休憩していきませんか?」


 安定のエミリアさんである。

 でもまだ日も高いし、それも良いかな?


「それじゃ少し落ち付いてから戻りましょうか。今日はちょっとしたお菓子も持って来たんですよー」


 さりげなくお菓子を用意していた私の手腕に、エミリアさんもルークも驚きだ。


「わーい、アイナさん気が利くー♪」


「い、いつの間に……」


 その後、少し休憩してから街に戻った。

 うん、1日目にしては何事も無くスムーズに終わっちゃんじゃないかな?

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