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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第8章 魔女に集いて
368/911

368.改めて、四人

「アイナ様っ!!」


 アイーシャさんたちとの話を終えて部屋から出ると、ルークが慌てて声を掛けてきた。

 ルークの後ろにはエミリアさんがいて、心配そうに私を見ている。


「お待たせ――

 ……って、あれ? ルークは何でいるの?」


「オリヴァーさんが緊急で戻ると聞いて、その流れでアイナ様が襲われたと伺いまして……!!」


 ああ、なるほど。そう言えばルークが行った会合って、そもそもはオリヴァーさんが誘ったんだっけ。

 それなら一緒に戻ってくるのも不思議では無いか。


「私は大丈夫から、安心して?

 ほらほら、それよりも何と! ジェラードさんが来てくれたんですよ!!」


「やっほー♪ ルーク君とエミリアちゃん、元気してた~?」


「「ジェラードさん!?」」


 少し遅れて部屋から出てきたジェラードは、二人に明るく挨拶をした。

 ジェラードのことまで聞いていなかったエミリアさんも、一緒に驚いている。


「いやー、何だか僕のいない間にいろいろとあったみたいで……。

 まさかアイナちゃんがあんなに強くなってるだなんて……?

 ……それに、ルーク君も神器を持っているみたいだし?」


「あはは、確かにいろいろありましたね。

 もうあのときには戻りたくないくらい、それこそいろいろあったんですよ」


 私が明るく言うと、ルークとエミリアさんも納得するように頷いた。

 散々な目には遭ったものの、私たちはようやく、何とか盛り返そうとしているところだ。

 ……この状況が最善かどうかは分からないけど、それでも悪い状況からはずいぶん離れることができたとは思う。


「それじゃ、申し訳ないけど僕にもいろいろと教えてくれないかな。

 またアイナちゃんの役に立ちたいんだ。だから、情報を少しでも――」


「いやいや、ジェラードさん」


「え?」


 私の制止に、ジェラードはきょとんとしてしまう。


「情報がどうとか、ではなくて。

 ジェラードさんは私たちの仲間なんですから、今までのことは単純に聞いてもらいたいです!」


「そうですよ! 私たち、今まで大変だったんですから!!」


「まったく……。ジェラードさんがいてくれれば、もっと上手くいったのかもしれないのに……」


「え? え?

 ……な、何だかそこまで信頼してもらえると、とっても嬉しいんだけど……!?」


 ジェラードは少し慌てながらも、私たちの気持ちを素直に受け取っているようだった。

 裏の顔を多く持つ彼ではあるが、きっと私たちはそれを含めて、ジェラードのことを信頼しきっているのだろう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 お屋敷の一室を借りて今までの話を終えると、ジェラードは深い溜息を衝いた。


「――『神剣アゼルラディア』に『疫病の迷宮』、か……」


 特に『疫病の迷宮』については、アイーシャさんたちにも伝えていない内容だ。

 それだけに重い話であり、誰かに漏らすことも止めるようにお願いをしておいた。

 ……その代わりと言っては何だけど、私はすべてのことを話すことにした。


 ジェラードは私にとって、アイーシャさんにとってのフルヴィオさんのような存在だ。

 情報の扱いに明るいのだから、下手に隠すのは避けた方が良い。

 そもそも私が信頼する仲間なのだから、明確に隠していること以外は全部伝えたかった――というのが正直なところだった。


 ……明確に隠していること。

 今となっては、私が『異世界転生者』ということくらいなのだけど。



「――私たちの行動が、この国を大きく動かしてしまいました。

 罰を受けるつもりは無いけれど、できることはしていきたいんです」


「うん……。……いや、思ったよりも、凄い話ばかりだなって。

 ルーク君、エミリアちゃん。よくぞアイナちゃんをここまで支えてくれたね。ありがとう」


 ジェラードの言葉に、エミリアさんは泣き出してしまった。

 ルークはルークで、何やら神妙な面持ちをしている。


「……私はもっと、いろいろと上手くできたのでは無いでしょうか。

 例えば今日だって、オリヴァーさんの申し出を断っていれば、アイナ様を危険な目には――」


「いやいや、ルーク?

 今日は私が勝手に外に出て、勝手に巻き込まれちゃっただけだからね!?」


「そうそう、気に病むことは無いよ。

 アイナちゃんが大人しく寝ていれば、僕がどうにかする予定だったんだから」


「……え? そうだったんですか?」


「うん。一人がトイレにでも行ってる間に、一人ずつ始末しようかなって」


 ……驚愕の事実である。

 もしかして、それって――


「私、戦う必要が無かったってことですか……?」


「まさかアイナちゃんが、一人で外に出てくるだなんて思ってもいなかったからね?

 弓星ですら、あれには驚いていたんだから」


「うぅ……。

 最近芽生えてきた勘が、まさか無駄な戦いを生むだなんて……」


「でも、僕は感動したよ。アイナちゃんが倒した魔法使いって、かなり強い部類だったし――」


「そうですよ、ジェラードさん!

 アイナさんは、英雄ディートヘルムを一人で倒したくらいですから!

 私たちの中では最強と言っても良いのではないでしょうか!!」


「あぁー……。そういえば話の流れでスルーしちゃってたけど、そのときはどうやって倒したの?」


「えっと、まわりの空気の構成を変えてですね、息を吸ったら貧血を起こすようにしたんです。

 私のことを舐めてくれていたんで、楽に近寄ることができたんですよ」


「へぇ、そういうことも出来るんだね……。

 ……でも、さっきはそうしなかったよね? 何で?」


「私、あのときは全力疾走してたじゃないですか。

 息を切らせているところで、間違ってその空気を吸ったら倒れちゃうかなーって」


「た、確かにそうなったらシュールな光景だったね……。

 それに、絶体絶命になってただろうし……」


「ディートヘルムと戦ったときは、風が追い風だったんですよ。

 だから息を止める必要も無かったし、えいやーってやっちゃったんです」


「……そうなんだ。

 でも条件付きとは言え、アイナちゃんって至近距離だと無敵だね……」


「いやいや。さっきジェラードさんと対峙しましたけど、勝てる気がしませんでしたよ?

 やっぱりスピードを出されると、私にはどうしようも無いですから」


 ジェラードが弓星を斬ったときなんて、正直何も見えなかったのだ。

 だから、私にはもっともっと強くなる余地がある。危険を自分で解決するためにも、私もこれから頑張って強くならないと……。


「ところで、ジェラードさん。私って不老不死なんですよ」


「へー、そうなんだ♪

 ……って、えぇ!? 今、何かとんでもないことをするっと言った!?」


 ジェラードはとても驚きながら、私たち三人を見てまわる。


「脈絡無く言ってしまったんですけど、ルークとエミリアさんはもう知っていることなので。

 一応、ジェラードさんにもお伝えしておこうかなって」


「う、うん、ありがとう……?

 仲間内だけの秘密ってことだよね? 他の人には黙っておくから、安心して」


「よろしくお願いします。

 でもだからと言って、痛いものは痛いし、瀕死になるときは瀕死になるんですよ」


「夢物語の不老不死とは違うんだねぇ……。

 怪我した端から、しゅるしゅるーって治りそうなイメージがあったんだけど……」


「それだったら楽だったんですけどね。

 私は何回も寝込んでて、何回もエミリアさんに面倒を見てもらっていますもん」


「――最近思うんです。

 私が生を受けた理由って、アイナさんの看病をするためなのでは――と」


 私の言葉に、エミリアさんは何か悟ったように、静かに言った。


「いやいや、エミリアさん!? それは達観しすぎですよ!?」


「えぇー……」


「でも、エミリアちゃんの気持ちは分かるな。

 僕だってアイナちゃんに右腕を治してもらって、人生を救われたんだ。

 だから、これからは一生を懸けてそれに報いたいと――」


「ちょ、ちょっとジェラードさん!?

 確かにそんな話、以前には聞きましたけど……一生とか、そういう話では無かったですよね!?」


「えぇー……」


 ジェラードはエミリアさんの真似をしながら、しゅんとしてしまった。


「アイナ様、私も同感です。

 私は命ある限り、アイナ様にお仕えしますので」


「ルークの場合は、そういう誓いを交わしたからね。うん、よろしく」


「えー!? ルークさんばっかりずるい!!」


「そうだそうだ! 僕たちも是非、誓いをっ!!」


「却下します」


「「えぇー……」」



 私としては、仲間の中で上下関係なんて付けたくないのだ。

 すでに誓いを交わしてしまったルークは置いておいて、他の人たちとは同じ立場で付き合っていきたいというか――


 ……まぁ、気持ちだけありがたく受け取っておけば大丈夫だよね?

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