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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第6章 遡流の旅路
304/911

304.ある村にて⑥

 窓から飛び込んでくる矢をエミリアさんの魔法で防ぎながら、私たちは外の扉まで移動した。


 この扉を開ければ、きっと集中攻撃を受けてしまうだろう。

 それが矢なのか、魔法なのか、それとも剣で直接斬り込んでくるのか、どれがメインなのかは分からないけど――


 そして一旦開けてしまえば、きっとそのまま一気に戦いが進んでしまう。

 だからこそ、私たちは最初の行動を間違えるわけにはいかないのだ。



「……直接攻撃であれば、私が捌けると思います」


 外の気配を伺いながら、ルークが言った。

 確かに今のルークなら、精鋭揃いという近衛騎士とも渡り合ったほどだし、そこらの前衛職には負けることは無いだろう。


「矢であれば、私の魔法で防げます!

 ……ただ、剣や魔法などで攻撃されると――暗黒の神殿でもそうだったんですが、魔力の消耗が激しいんですよね……」


「ふぅむ……。魔法なら、私のバニッシュフェイトで打ち消せますが……」


 エミリアさんと私は、ルークを倣って自分のできることを言っていった。

 ……何と幸いなことに、三人の力を合わせれば敵の攻撃は防げそうだ。



「――それなら、まずはこの扉ごと吹き飛ばしてしまいましょう」


「え……?

 でもここ、村長さんの家……」


 ルークの過激な発言に、私はとりあえず常識的な答えをしてしまう。


「……しかしすでに、向こうは窓を割ってきているわけですから」


「確かに」


 外からの攻撃は、恐らくは村長さんか息子さんの許可を得てはいるのだろう。

 しかし私たちは、許可を得ない状態でこの家を破壊することになる――


「……まぁ、文句を言われたらお金の力で解決しよっか」


 お金の手持ちはそれなりにあるから、扉の修理費くらいは余裕で出せる。

 そもそも、この襲撃自体が勘違いだなんてことはさすがに無いだろうけど。


 しかし、そうとなれば――



「――シルバー・ブレッド!!」


 私が考えを巡らせていると、エミリアさんが光の壁を解き、突然窓に向かって攻撃魔法を放った。

 直後、窓の外から悲鳴が聞こえてくる。


「ぐぁっ!?」


 ……察するに、誰かが窓から様子を伺っていたのだろう。

 そして、攻撃を仕掛けようと――


「迷っている時間はありません! アイナ様!」


「リーダー! 本名はダメだよ!」


 そう言いながら、私はアイテムボックスから高級爆弾を出す。

 まずはこれで、反撃の狼煙を上げることにしよう。


「申し訳ありません! ペナルティはあとで必ずお支払いしますから!」


「ふふっ♪ それじゃ、まずは生き延びないとね!」


「頑張りましょう!」


 私たちは三人、顔を見合わせて頷いた。

 これからこんな戦いはいくらでも出てくるだろう。


 ――しかし、そのすべてに勝っていけば問題は無いのだ!




 バアアアアンッ!!


 まずはルークが思い切り、扉を強く蹴破った。

 そしてそのまま、初級爆弾を扉のすぐ外で爆発させる。


 ドカアアアアンッ!!


「うわっ!?」

「気を付けろ! 爆弾だ!」

「きょ、距離を開けろ!」


 外からは意表を突かれたような、そんな感じの声が聞こえてくる。


「シルバー・ブレッド!!」


「ぎゃっ!?」


 巻き上がった煙の中にエミリアさんが攻撃魔法を撃ち込むと、外の誰かが悲鳴を上げた。

 一瞬だけ煙の向こうに見えたのは、身体を仰け反らせている兵士と、その後ろの弓師――


 その弓師はこちらの姿を捉えた瞬間、素早い動きで矢を撃ち込んでくる。


 ヒュヒュンッ!!


「プロテクト・ウォール!!」


 しかし矢が届く前に、エミリアさんの魔法が再度放たれた。

 私たちのまわりに作り出された光の壁は、飛んできた矢を綺麗に弾き落とす。


 そして次、矢の直後に別の兵士が攻撃を仕掛けて――


 ガキイイィイン!!


「……んっ」


 兵士の剣が光の壁に力強く当たると、エミリアさんの小さな声が漏れた。

 攻撃は防げるものの、光の壁に攻撃が当たれば魔力を消耗してしまう。ここでエミリアさんの魔力を無駄に使うわけにはいかない。


 最初はルークに護ってもらおうと考えたが、攻撃力が頭抜けているルークは攻撃に専念してもらいたかった。

 だから、ここくらいは私たちで何とかしないと……!


「アンジェリカさん!」


「はいっ!!」


 私の言葉に、エミリアさんは光の壁の一部を解除した。

 そこに目掛けて、私は高級爆弾を思い切り放り投げる――


 ドカアアアアアアンッ!!!!


「うわっ!?」

「気を付けろ! また爆弾だ!」

「怪我した者は下がれっ!!」


 投げた高級爆弾が爆発すると、外からは大きな声が聞こえてきた。

 案外、今回のこの包囲網はあまり強くないのでは――


「リーダー!」


「はいっ!!」


 扉の前に陣取っていた敵が混乱する中、ルークが勢いよく外に飛び出した。

 そして――


 ズガアアアンッ!!


「ひ、ひぃっ!?」

「何だあの剣はっ!!」

「もしかして、あれが神器――」


「……ぎゃっ!」

「ひ、怯むな! 行けっ!」

「ブルルルルッ」



 ――短い時間の中で、様々な敵の声が聞こえてくる。

 ルークがずっと押しているようではあるが、しかしルークだけに頼りきっているわけにはいかない。


「私たちもいきましょう!」


「はい!」


 エミリアさんの光の壁に守られながら、様子を見ながら急いで外に出る。

 ルークは少し離れたところで兵士と戦っているが、しかし何人かの弓師がルークを狙っていた。


 矢の攻撃が無ければ、恐らくはもっと攻撃に集中できるだろう。

 魔法使いの姿は見えないから、私のバニッシュフェイトは出番が無い。


 そうとなれば――


「アイス・ブラスト!!」


「うわっ!? ……く、くそ! 魔法も使えるのか!!」


 私は爆弾よりも、飛距離を出せる氷魔法で攻撃することにした。

 残念ながら避けられてしまったけど――


 ガキイイイインッ!!


「わっ!?」


 私の隙を突いて、すぐ側の兵士が光の壁に斬り掛かってきた。

 申し訳ないが、エミリアさんの光の壁にまた思い切り剣を打ち付けられてしまった格好だ。


 しかしその音が響いた次の瞬間、ルークが私たちのところにまで戻ってきて、その兵士と、近くの弓師を斬り飛ばした。

 結構距離があったように思えたけど――まさに、縦横無尽。



「大丈夫ですか!?」


「うん、ありがと! あとは――」


 周囲を見ると、残りは腰が引けた兵士と弓師が僅かに残っているだけだった。

 敵のリーダー格のような騎士はすでに地面に倒れているし、それ以外にも10人程度が倒れている。


 少し遠くでは、村長さん、奥さん、息子さんが不安そうにこちらを眺めていた。

 さらに遠くでは、他の村人が遠巻きにこちらを眺めている。


 ……一応、決着は付いたかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――も、申し訳ございませんでした!!」


 息子さんは私たちの前で、土下座をした。

 それに釣られる形で、村長さんも息子さんの命を奪わないように懇願してきた。

 奥さんはその横で、立ち尽くしていた。


「……この人たちは、何だったんですか?」


 私は周囲の、縄で縛った騎士や兵士や弓師を指して息子さんに聞いた。

 先ほどの戦いで怪我をした人も多く、低いうめきがたまに聞こえてくる。


「あ、あの……。

 この付近の街や村に……あなたたちを捕まえるために、騎士を派遣するっていう話で……。

 ちょうど俺、帰り道で一緒になって……、その……」


 そう言いながら、息子さんは手に持っていた紙を3枚差し出してきた。

 ルークが受け取り、三人で見てみると――それは、私たちの手配書だった。


 ……なかなか似顔絵は上手く描けている。

 これなら私たちの正体がすぐにバレてしまったのも納得だ。



 ――って、ちょっと待って?

 こんな手配書が配られるってことは、他の街や村にはもう……?

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