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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
287/911

287.暗闇の神殿②

 しばらく休んだあと、私たちは再び暗闇の中を歩き始めた。


 進んでも進んでも暗闇。

 そして進む方向も、ルークの感覚頼みだ。


「……ちなみにエミリアさんは、何か感じたりしてますか?」


「そうですね……。何となく、魔力のような流れは感じますけど……。

 いや、でも……魔力……なのかな……?」


 エミリアさんの答えも、何だか少しあやふやだ。

 何かしらの力が流れてはいるようだけど、魔力ではない。……しかし、似たようなところはあるようだ。


「……うーん? ちょっと不思議な力なんでしょうか。場所自体もそんな感じですし……」


 ――不思議な力。それは何とも、結論の出ないときには便利な言葉だ。

 そもそも魔力だって、魔法を使わない限りは分かり難いものだし……。


 しかしどちらにしても、感じられるのは単純な魔力ではないようだった。



「……神殿に、何かがいるんですかね?」


「そうですね……。アイナさんは『光竜の魂』を求めたわけですから、それがあるとして――

 何者かがそれを護っていたり?」


「むぅ……。条件がどうのこうの言ってましたし、もしかして戦うことになるんでしょうか。

 『これが欲しければ我を倒してみよ』的な感じで……」


「うわー、ありそうですね。

 そうしたらいつも通り、ルークさん頼りになってしまいますが……」


「――すいません、アイナ様。エミリアさん」


「うん? どうしたの?」


「その……。実は私の剣ですが、お城で没収されておりまして……」


「「え」」


 ……そういえば、ルークは剣を持っていない。

 確かに手枷を付けられるくらいだから、剣なんて没収されていて当然なんだけど――


「その剣って、ずっと使っていた剣ですよね。うーん、あとで返してもらいに行きましょう!」


「でも、まずはここから出ないといけませんからね。もしこの先で戦闘になったら、その時点で武器が無いわけで……。

 『なんちゃって神器』の剣も、今のところナマクラだから使えないし――」


 ……しかし、一応それなりの武器は錬金術で作れるのだ。

 れんきーんっ


 バチッ


 いつもの音と共に、私の手には何ともシンプルな剣が作られた。


「――こんなのならあるけど、使える?」


「ありがとうございます。

 ……長さもちょうど良いですし、使わせて頂きます」


「おぉー。アイナさん、鍛冶屋にもなれるんじゃないですか?」


「でも、本職が作ったものにはやっぱり及ばないですよ」


 実際のところ私の作る剣は、金属の塊を剣の形にしただけのようなものなのだ。

 日本刀の『折り返し』みたいな繊細な技術は入れ込むことはできないし、同じような感じの鍛冶の技巧は取り入れることができない。


 鋳造で作る感じのものならちゃんと作れるんだけど、それ以上のものは難しい……っていう感じかな?

 ――でも、管轄外の鍛冶がそこまでできるんだから、ひとまずは十分だよね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 再び暗闇の中を歩いていくと、徐々に寒気のようなものを感じてきた。


「……何だかちょっと、寒くない?」


「アイナ様、さすがです。気配の元に、ずいぶんと近付いてきましたからね」


「ああ、そっちが理由……? もう夜だろうし、てっきり気温が下がってきたのかと思ったんだけど……。

 そういえば今って何時かな。――クロック!」


 時計の魔法を唱えると、時間を示すウィンドウが宙に現れた。


「――18時過ぎ……かぁ。

 でもここ、時間がよく分かりませんよね。遅い時間だから暗いってわけでもありませんし」


「最悪、一晩過ごすことになりそうですね。

 ……いえ、脱出方法が分からないから、何日かいることになるかもしれませんけど……」


「うえぇ、それはちょっと勘弁して欲しいです……。

 でも、もう少しで多分神殿に着くんだよね?」


「神殿かどうかは分かりませんが、ここの主要な場所であることは間違いないでしょう」


「そっかー。ぱぱっと素材が手に入って、ぱぱっと出られれば良いんだけど――」




「――……む!? おお……」


 引き続き話をしながら歩いていると、不意に先を歩くルークが驚きの声を発した。


「どうかしたの?」


「はい、アイナ様の位置からもう少し進むと……ちょっと進んで頂けますか?」


「え?」


 不思議に思いながら、ルークの横あたりまで進んでみる。

 すると――


「う、うわぁ!!?」


 私の目の前に、突然巨大な神殿のような建物が姿を現わした。

 まさに、突然。……これは正直、心臓に良くないレベルだ。


「どうやらこの辺りまで進むと、突然見えるようですね」


「……なるほど……。それにしても、大きい建物……」


「え? え? 二人ばっかりズルいですよ!

 私も進んで良いですか!?」


「はい、エミリアさんもどうぞ」


 ルークの言葉に、エミリアさんも私の横まで歩みを進める。


「――わっ!? わわっ!!

 おぉー!!」


 恐らく神殿を目の当たりにしたエミリアさんは、ひたすら感嘆の声を出していた。

 何だか面白いというか、とても可愛らしい。


「これでようやくゴールが見えてきましたね!

 神殿の中も広そうですけど、どこかには何かがあるでしょうし」


「そうですね。神殿というからには、内装とかにも何かヒントがあるかもしれません。

 ルーンセラフィス教に関わるものでしたら、私なら見れば分かりますから!」


 自慢気にそう言うエミリアさん。

 確かに『光』やら『竜』やらの単語が出てくるのであれば、その辺りを信仰として扱っているルーンセラフィス教は強いかもしれない。


「それじゃ、早速進んでみましょうか。

 時間も時間だから、ある程度のところで一晩休むとして――」


「――いえ」


 私の言葉を、ルークが遮ってきた。


「うん? ルーク、どうしたの?」


「……この神殿……少し進んだ先に、何かいるようです。

 おそらく、2つ先の部屋にはもう――」



 ――ルークがそう言った瞬間、突然地面が細かく揺れ始めた。



「わっ!? じ、地震!?」


「えぇっ!? 珍しいですね!?」


「いや、これは……気付かれたようです」


「え……? その、中にいる……何かに……?」


「はい。……どうしますか?

 さすがに入口や隣の部屋で一晩過ごすのは避けたいので……進むか、戻るかになると思うのですが」


「うぅ……さすがにここから戻るのはちょっと……。

 その何かって、友好的なのかなぁ……?」


 そこにいるのが番人のようなものであれば、おそらくは敵対的だろう。

 すぐ戦闘になるのも目に見えてしまう。


「そうですね……。今のところ、敵意や悪意のようなものは感じませんが……」


「……それじゃ、進んでみる……?

 ここからちゃんと帰れるのかを調べて、安心してから休みたいっていうのもあるし……」


 どこにいるかも分からない状態で、帰れるかどうかも分からない場所。

 これでは正直、いくら休んでも疲れはなかなか取れなさそうだ。


「分かりました、私は大丈夫です」


「アイナさん、私も大丈夫です!」



 ――少し進んだ先にいる『何か』。

 それの正体はまだ分からないけど、ここは覚悟を決めて進んでみよう……!!

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