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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
265/911

265.久々の魔物討伐③

 ――バガアアアァアンッ!!


「うひっ」


 2体目のストーンゴーレムは、ルークのよく分からない斬撃でまっぷたつにされた。

 右肩から左腰に掛けて綺麗に斬り裂かれた――そんな感じだ。


 ……あれ? ストーンゴーレムって岩だよね、あれ?


「えぇーっ!? ルークさん、反則的な強さじゃないですかーっ!!」


 エミリアさんは嬉しそうなんだか悔しそうなんだか、そんな感じで叫んでいた。

 うん、何だか気持ちは分かる気がする。


「まったくですね。いや、きつい修行を乗り越えただけはあるっていうか……?」



 2人で話していると、ルークが残りのストーンゴーレムに気を払いながら戻ってきた。


「残りは1体ですね。

 ……さて、ここからどうしましょう」


「え? 今まで通り、一気に倒しちゃえば良いんじゃないの?

 ずがーんと、ばかーんと」


「実はですね……、必殺技は1日に2回が限界なんです」


「むむ?」


「あらかじめ闘気のようなものを練っておいて、それを解放することで必殺技を放つことができるんです。

 つまり、今日の分はもうおしまいということですね」


「そ、それは予想外……!」


 便利で強力な反面、使用回数の制限があるということか。

 たまにそんなゲームもあったけど、何となく少数派のイメージだ。


「ルークさん……。制限がある割に、あっさりと2回使っちゃいましたね……」


「申し訳ありません、良いところをお見せしようと思いまして……」


 少し恐縮して言うルーク。

 以前よりもかなり強くはなっているものの、そういう性格は変わっていなくて安心する。


「うん、良いところは十分に見せてもらったよ!

 ……それじゃ、あと1体はどうしようか」


 ぶっちゃけて言うと、2体倒したから2体分の報酬をもらっておしまい――というのでも良いんだよね。

 若干、消化不良の気もしなくは無いけど。



「必殺技なしではダメそうですか?」


「そうですね、剣の方がダメになってしまいますので」


 それはそうだ。

 いくら丈夫に作った剣とはいえ、無理に岩を叩いていればすぐに刃が欠けてしまうだろう。


「ふむ……。ここは私の出番ですね!」


「え? シルバー・ブレッドで倒しちゃう感じですか?」


「いえいえ、私の新魔法をお披露目するところかなと!」


「おぉ、いつの間に!」


「最近ずっと勉強してたんですよ。

 さぁ、ルークさん。剣を出してください」


「えーと……はい、どうぞ」


 ルークは切っ先を向けないようにして、エミリアさんに剣を差し出した。


「いきますよー。

 プロテクト・ブレッシング!!」


 エミリアさんがそう唱えた瞬間、ルークの剣が白色に光輝いた。


「……わぁ、綺麗」


「綺麗ですよね! この魔法は聖なる加護によって、装備を破損から保護してくれる魔法なんです」


「まさに今、うってつけですね。

 ……って、何でまたそんなピンポイントな魔法を覚えたんですか……」


「私たちのパーティはルークさん頼みの構成ですから。

 また一緒に依頼を受けるときに便利かなって、覚えたんですよ。……早速役に立ちましたでしょう?」


 ふふん♪ といった感じで、どや顔をするエミリアさん。


「ま、まぁ……そうですね。それじゃ剣の問題は解決ということで……。

 これなら残りの1体は倒せそう?」


「はい、剣が大丈夫なら何とかなるでしょう。

 ……ところでアイナ様は、氷の魔法を覚えられたんですよね?」


「うん、アイス・ブラストっていうやつ。氷の塊をぶつける感じの魔法だよ」


「ものは試しで、アイナ様も攻撃をしてみませんか?」


「えっ!?」


 ルークからの突然の申し出に、私は驚いた。

 戦闘は任せっきりにするつもりだったから、その発想は無かったというか――


「ついにアイナさんも魔法使いデビューですね!」


「えぇー……。魔法を撃ったらこっちに襲ってこないかなぁ……」


「私がお護りするので大丈夫です。

 それにストーンゴーレムの身体を凍らせることができれば、そこが脆くなるかと思ったんですが……」


「うぅーん……。あくまでもぶつけるだけだから、凍りはしないと思うよ?」


 氷の塊を撃ちはするけど、どちらかといえば物理っぽい攻撃なんだよね。

 炎の中に撃ち込んだりするならまた違うんだろうけど……。


「でも、せっかくですし! やってみましょう!」


「ふぇぇー……?」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 外したら格好悪い……、外したら格好悪い……。

 当たりますように、当たりますように――


「――アイス・ブラストっ!!」


 ドォン……ッ!!


「おぉ、アイナ様が魔法を……!」


 私が魔法でストーンゴーレムを攻撃すると、ルークの感動の声が聞こえてきた。

 何だか恥ずかしいからあまり言わないで欲しいんだけど、とりあえず初弾は当たって良かった!


 ルークの修練でボールを投げたときとは違って、魔法ならそれなりに当てることはできるんだよね。

 細かいコントロールはまだ難しいんだけど。


「それではアイナさん! 同じところを狙っていきましょう!!」


 細かいコントロールはまだ難しいんだけど!!


「アイス・ブラストぉっ!!」


 ドォン……ッ!!


「惜しい! もう少し上ですっ!!」


「アイス・ブラストおぉっ!!」


 ドォン……ッ!!


「もう少し右ですっ!!」


「うわああああっ! アイス・ブラストおぉおぉっ!!」


 ドォン……ッ!!


「もう少し左――」




 魔力が無くなるまで氷の塊を撃ち込み終わると、何回か当たった場所をルークが執拗に攻撃し始めた。

 エミリアさんもシルバー・ブレッドで、その場所を器用に狙っていく。


 ……さすが経験者、魔法のコントロールは私なんかよりもずっと上だ。

 思い返せばエミリアさんが魔法を外しているのなんて、1回も見たことがないからね。


 そのまま5分ほど攻撃を続けるとストーンゴーレムの腕が崩れ落ち、10分ほど攻撃を続けるとその動きが鈍ってきた。

 そして15分ほど攻撃を続けると、ようやく完全に動きを止めることができた。



「――お疲れ様!

 結構、時間が掛かっちゃったかも?」


「そうですね、さすがに防御力が売りの魔物でした」


「やっぱり剣とは相性が悪いですね。鈍器とかハンマーの方が効果的な感じでしょうか。

 ……とすると、次に覚える魔法は――」


 エミリアさんは今の戦いを振り返って、早速次に覚える魔法を思案していた。

 何とも勉強熱心で何より。その姿勢は私も見習わないと。


「さて、それじゃ3匹倒し終わったから戻りますか。

 討伐の証拠品は……この石かな?」


 ストーンゴーレム1体につき、身体のどこかに埋まっているという不思議な石。

 この石に力が宿って、ストーンゴーレムの身体を形作っていくらしい。何ともファンタジーな逸品である。


「他の2体の核石はこちらです。

 アイナ様、持って頂いてもよろしいでしょうか」


「うん、ちょうだいー」


 ルークから核石を受け取って、アイテムボックスに順次しまっていく。

 3体倒したから、核石は合計3個――っと。


「討伐も終わりましたし、今晩はテレーゼさんと約束があるということですので、早々に戻ることにしましょう」


「そうだね。それじゃ戻りましょ――……の前に、さすがに昼食はとっていきましょうか。

 ぱぱっと食べて、そのあと戻りましょ」


「はい」

「はーい」



 ストーンゴーレムを無事に討伐することができた私たちは、ブルーノさんと合流して昼食をとることにした。

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