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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
263/911

263.久々の魔物討伐①

「――ふわぁ……」


「あれ、アイナさん。寝不足ですか?」


「んー……。夜中に目が覚めちゃって、そこから結構起きていたんですよ」


 朝食の時間、ついついあくびをしてしまった私にエミリアさんが聞いてきた。


「アイナさんって、たまにそういうことありますよね。きっと繊細なんでしょうね」


「まぁ、良く言えば……?」


 実際のところ、最近のいろいろな出来事が原因なのだろう。

 グランベル公爵の件にオティーリエさんの件。あとは王様の件やらシェリルさんたちの件。そしてテレーゼさんの件――


「ところで今日のご予定はどんな感じです? 昼は錬金術師ギルドですよね」


「そうですね。他は……特に予定は無いです」


「せっかくルークさんも戻ってきたことですし、たまには冒険者ギルドで魔物討伐の依頼でも受けてみませんか?」


「お、それは良いですね。

 ……でも外に行くなら、昼の時間は錬金術師ギルドには行けませんね……。

 うーん、依頼は今日のうちに受けて、明日の早朝に向かうのでも良いですか?」


「はい! テレーゼさんの方は大丈夫ですか?」


「明日は夕食に誘おうかなって思います。今日のうちにそれを伝えておくとして」


「それではあまり遅くなれませんね……。しっかり計画を立てて、確実に終わるようにしましょう」


「はい、そんな感じでお話してきますね。

 冒険者ギルドには夕方に行って、依頼を見るとして――」



 そんな話をしていると、ルークが食堂に入ってきた。


「おはようございます、アイナ様、エミリアさん」


「おはよー」


「おはようございます! ルークさん、ゆっくり眠れましたか?」


「はい、とっても」


「……いやいや。エミリアさん、ルークは3時過ぎには起きていましたよ」


 それを聞いたエミリアさんは、ルークの顔を見ながら驚いていた。


「ええぇ!? 1か月もあんな修行をしてきて、そんなに早起きしてたんですか!?

 ……って、あれ? アイナさんは何でそれをご存知で?」


「寝付けないところで偶然会って。しばらくルークの修練風景を眺めてました」


「えー、そうなんですか? それなら私も見たかったのに……」


「エミリアさん、見ていても面白いことはありませんよ……?」


「あれ? 必殺技の練習とかはしなかったんです?」


「こんな場所でそんなことをやったら近所迷惑ですので……」


 まぁ確かに、必殺技なんて使ったら何か爆発したり壊したりしそうだし。

 その配慮はきっと、正しいものだっただろう。


「そうだ。必殺技といえば(?)、明日あたりに冒険者ギルドの依頼を受けてみようかなって思って。

 魔物討伐にする予定だけど、ルークは大丈夫?」


「はい、もちろんです。

 そういう依頼も久し振りなので……楽しみですね」


「ルークさん、かなり強くなってそう!

 そうそう、アイナさんも魔法をいろいろと覚えたんですよ。全体的に戦力アップですね!」


「そうなんですか? アイナ様、おめでとうございます」


 ルークは純粋に、感心するように言った。


「攻撃魔法としては1つだけだけどね……。

 でも私は基本的に裏方だから、戦いはルークとエミリアさんに任せたいかな」


 今まで後ろで護られてばかりいた私。

 急に前線に出ても活躍するイメージが湧かず、かといって後ろから魔法を当てられるかというと――さすがにその自信は無かった。

 距離が無ければさすがに当てられるけど、近付くまでが大変だしね。


「分かりました。魔物は私が軽く倒してしまいますので、アイナ様はゆっくり見ていてください」


 自信たっぷりに言うルークが何とも頼もしい。

 さてさて、どこまで強くなっているものやら……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 昼時、錬金術師ギルドの食堂でテレーゼさんと食事をする。


「ルークさんが無事に戻ってきたんですか。それは良かったです……。

 これで仲良し3人組の復活ですね!」


 昨日今日の話をすると、テレーゼさんはそう言って喜んでくれた。


「3人揃って『仲良し3人組』と言うなら、ジェラードさんが少し可哀想ですね」


「あっ、ごめんなさい。

 でもでも、ジェラードさんは何だか違うんですよね。……うーん、説明は難しいのですが」


「要所要所で助けてくれるっていう感じだからでしょうか。

 確かに何となくは違う……ような?」


 ジェラードにはとてもお世話になっているけど、一緒に冒険をしたり依頼を受けたり――ということは無いからね。

 確かに仲間ではあるんだけど、ルークやエミリアさんとは少し違う気がした。


「それでルークも戻ってきましたので、明日は冒険者ギルドの依頼をこなしてこようかと思うんです。

 一緒にご飯を食べるのは、夜でも大丈夫ですか?」


「あああ、そんなに気を遣って頂いてすいません……!

 さすがに毎日は申し訳なくなってきましたので、1日くらいは気にしないでください!」


「えー?」


 でも何だか心配だなぁ……。そんな目で見てしまったのだろうか。

 テレーゼさんは力を込めて言った。


「私も一応は大人なので、明日は大丈夫です!

 せっかく外に行くんですから、アイナさんも楽しんできてください。……あ、魔物にはくれぐれも気を付けてくださいね」


「うーん、それじゃ明後日にまた、ご一緒しましょう。

 それにしてもテレーゼさん、最近お休みしていないんじゃないですか?」


 思い返せば体調不良で欠勤して以来、彼女は休みを取っていない。

 毎日会いに来ているが、仕事に来るようになってから今日で5日目なのだ。


「実は明後日、お休みなんです。

 本当は仕事をしていたかったんですけど、さすがにそろそろ休めと言われて……」


「あ、そうなんですか。

 ……もし良ければ、うちに泊まりにきません?」


「えっ!?」


「ほら、それならやっぱり明日の夜は一緒に食事をして――

 そのまま明後日までどうかなって。……気疲れしちゃいますかね」


「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!

 是非! 是非とも遊びに行かせてくださいっ!!」


「うわっ!?」


 何だか懐かしい、テレーゼさんのぐいぐい感。

 そうそう、これこれ。やっぱりテレーゼさんは、こうじゃないと。


「ああでも、手土産を準備する時間がありませんね……!」


「そんな気は遣わないで大丈夫ですよ。

 親がいるならともかく、あそこは私が主なんですから」


「そ、そうですか……?

 それじゃお言葉に甘えて、メイドさんたちの分だけにしておきます」


「いやいや」


「あ、そうですよね。警備の方とか、庭木職人の方もいるんでしたよね。

 それではその分だけ、お菓子でも持っていくことにします!」


 ……むぅ。何だか嬉しそうだし、あんまり拒否するのも可哀想か。

 それならばその厚意、ありがたく受け取っておくことにしよう。


「何だかすいません。でも持ってくるにしても、ちょっとしたもので大丈夫ですからね?」


「そうですね、私もこんな状態ですし……。

 では適当に、適切に、何かしら考えていきます!」


 楽しそうに言うテレーゼさんに、何となくほわっとしたものを感じた。

 彼女もいろいろと大変だけど、やっぱりしあわせになってもらいたいというか――


 ……少なくても困っているときに、私は彼女に手を差し伸べられる人間でありたい。そう思ったかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 テレーゼさんと別れたあとは、冒険者ギルドの前でルークとエミリアさんと合流した。

 しばらく依頼の掲示板を眺めていると、ルークが1つの依頼を持ってきた。


「――ストーンゴーレムの討伐?」


「はい。距離的には少し遠いですが、馬車を走らせれば行けるかなと……。

 いかがでしょうか?」


「ストーンゴーレムって、どういうやつ?」


「身長が4メートルから5メートルくらいの大きな魔物ですね。

 防御力が高くて倒しづらいので、あまり人気が無い討伐依頼……でしょうか」


 エミリアさんは少し唸るように答えてくれた。

 しかしこの世界、そんな魔物もいるんだね。


「私の魔法は相性が悪いかな?

 クローズスタンもアイス・ブラストも何だか効かなそう」


「シルバー・ブレッドは多少は効くと思いますが、ルークさんの戦力頼りになってしまいますね」


「もしよろしければ、私の修行の成果を見て頂きたいと思いまして。

 これ以外のものが良ければ、他にも――」


「……いや、うん。今回はこれを受けましょうか。

 ルークの全力が見られるなら、しっかり見ておきたいですし」


「そうですね、分かりました。ほとんどお任せになってしまいますが、それでも良いですか?」


「はい、問題ありません。あっさりと片付けてみせましょう」



 何とも頼りになる雰囲気を見せるルーク。

 1か月ほどでどれだけの力を付けてきたのか、これは本当に見物だ。


 ……でもゴーレムなんて、剣で倒せるものなの?

 急に爆弾とかを使い始めたら、何だかもにょもにょしちゃうけど。

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