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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第2章 ガルーナ村
26/911

26.おはようございます

「――――――ッ!!」


 ……うん? 誰かが大きな声を出している気がする。

 む……? そういえば、いつもより身体が楽なような気がする……?

 まぁ、そうはいっても死にそうなくらいにはしんどいんだけど。


「――――ナ様ッ!!」


 なさま? なさま……なさま……。なさまって何?


「――アイナ様ッ!!」


 ああ、『アイナ様』ね。あー、私の名前だー。でも『様付け』するほど私は偉くないよー?


 そんなことを思いながら目を開ける。

 開けたところでぼんやりとしか見えないんだけど。


 んん……?


 私の右手を誰かが握っている。

 そういえばこの前も誰かに握ってもらったみたいだけど、それよりも大きくて固いなぁ。


 ――はっ!? もしかして私には彼氏がいたのか!?

 ……なわけないでしょー。とほほ。


「――アイナ様ッ!! 私のことは分かりますか!?」


 うんー? 身体が動かなくて横を向けないんだよー……などと思っていると、視界に若い青年が入って来た。

 ああ、ぼんやりとしか見えないけど、なんとなく見覚えはある……。会社の人かな……。いやぁ、こんな人いたかなぁ……?

 いや、でも何か落ち着く人だなぁ? 何でだろ。


「――私です! ルークです! お気を確かにッ!!」


 そういえばこの人、あんまり日本人っぽくないし……外人さんかな?

 えっと、知り合いに外人なんていないしなぁ…………――って? うん? ルーク?


 ルーク……ルーク。うん、ルーク。


 …………ああ、ルークね!!!




 知ってる! 超知ってる!

 あー、そうそう! 私、異世界に転生したんだった!

 何だか急に、色々思い出してきた!!


 ルークの名前を皮切りに、一気にいろいろと思い出す。


 そうそう、確かガルーナ村の沼地で疫病に侵されて――


 あ! つまり私のこの死にそうな状況って、疫病か!!

 それに気付くと、私は自分に鑑定スキルを掛けた。


 ----------------------------------------

 【状態異常】

 疫病610型、疫病3011型、疫病3451型、疫病3912型

 ----------------------------------------


 ……おおう、4つ同時進行だったのね。そりゃしんどいよ……。

 でもこれ、疫病の型が分かったところで薬作れないんじゃ――と思いながら『創造才覚<錬金術>』に意識を傾ける。


 ……あれ? 何だか作れそう?

 作ってみる――? と思ったけど、ちょうど右手は(多分)ルークが握ってくれてるんだよね。


「……ひ、だり……て……」


 全身全霊を込めて言葉を発する。

 左手を掛け布団から出してください!!


「あ、アイナ様っ!! 左手……左手ですか!?」


 ルークが反応する。少し時間を空けて、他の誰かが私の左腕を掛け布団の上に出してくれた。

 よーし、ありがとうございます。


 それぞれの疫病の症状を鑑定した後、まずは一番喉にダメージを与えている疫病3011型を治すことに。


 えぇっと……えーい、れんきん!


 バチッ!!


 作った薬は視界に入らないが、左手の上には瓶の重さを感じる。

 場所は分かるので一応鑑定しておこう。


 ----------------------------------------

 【抗菌薬<3011型>(S+級)】

 疫病3011型を永続的に治癒する薬

 ※追加効果:即効性(大)

 ----------------------------------------


 うん、ばっちり。

 そして再度、全身全霊を込めて言葉を発する。


「それ……飲ませ……て……」


「わ、分かりました! ただちに!!」




「ごほっ! はぁ、はぁ……あー。あー。……はぁ、ありがと……」


 薬を飲ませてもらうと喉の痛みがすっと引き、声を出すのも随分と楽になった。


「おぉ……アイナ様っ! アイナ様っ!!」


 ルークが必死に声を掛けてくれる。

 うーん、ありがとね。


「ルークも……大丈夫……だったんだね……。うん、良かった……」


 ひとまずは私もルークも命を落とすことはなかった。

 ……というか私、レアスキルの『不老不死』持ってるんだけど……疫病には負けちゃうものなの?

 そういえば『不老不死』は鑑定したことなかったし、良い機会だから鑑定しておこうかな。


 ----------------------------------------

 【不老不死】

 歳を取らない不老状態になる。

 絶命時、瀕死になる

 ----------------------------------------


 ……。


 えー……? 『不死』っていっても漫画みたいに即再生、即復活するわけじゃないの……?

 このレベルの不死だと色々思うところがあるよ? 今回みたいな疫病とかだと、治さない限り永遠に苦しむことになるんだよ? 永遠に瀕死だよ?

 ま、まぁとりあえずこれは後においておこう。

 それよりもまだ3つの疫病に掛かってるわけだし、先にこれを治してしまおう……。ごほごほ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「はぁ~……。一通り治ったよー……」


 残りの3つの疫病を薬で治してひと段落。

 状態異常には『衰弱(大)』が残っているけど、これは休息を取って何とかしよう。


「さすがはアイナ様……。あれほど苦しんでいらっしゃったのに……」


 ルークが感心する。ルークに感心されるのは随分と久し振りの気がした。


「……私、どれくらい寝込んでた?」


「えっと……10日ほどですね」


「とお……? ふ、ふーん……。確かにすごい長い間、うなされてた気がするよ……」


「そうですね、とても苦しそうにされていました……。出来るだけのことはしていたのですが、やはり薬が無くて――」


「――あ、そうそう! 薬といえば、ルークも疫病に掛かってたよね?」


「はい。でもアイナ様のおかげで、私の方は大丈夫でした」


「……え? 私のおかげ?」


 ルークの答えの中に戸惑う私。


「え……? 覚えていらっしゃらないんですか?」


「うん」


 私が何かやったのかな?


「沼地でアイナ様が倒れた後、村までの道中で薬を全部作って頂いたのですが……」


「……は?」


「いえ、そのときはもうアイナ様は朦朧とした状態でしたが、そんな中で私の掛かっている疫病の分は全部――」


 え、もしかして無意識で作っちゃったの?

 ……っていうか、さっきの薬もそうだったんだけど、材料は大丈夫だったのかな?


 えーっと、『創造才覚<錬金術>』……っと。


 ----------------------------------------

 【『抗菌薬<3011型>』の作成に必要なアイテム】

 ・癒し草×1

 ・血清×1

 ・溶解液×1

 ・空き瓶×1

 ・触媒:ダンジョン・コア<疫病の迷宮>

 ----------------------------------------


 ……MVPは最後のお前か……。

 『あらゆる疫病を撒き散らす』力を持つけど、良い方向に使えば『あらゆる疫病を治す』力にも成り得るってことかな……。

 そもそもの能力とは違ってくるけど、私の支配下にある限りは役に立つ方向で使わせてもらうよ。ふふふ、贖罪するのだ。


 ――ちなみに『触媒』っていうのは『何回でも使える素材』って感じ。私も初めて見たんだけど。

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