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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
221/911

221.食事会③

「はい、どうぞ。Sランク昇格おめでとう♪」


「ありがとうございます!」


 ジェラードからお祝いの言葉と一緒に受け取った箱は、何だか少し重かった。

 うーん? 何だろう、これ……。


「いろいろと考えてみたんだけど、僕はここら辺が良いかな~ってね。

 ささ、開けてみてよ」


「それでは失礼して……」


 少し緊張をしながら箱を開けてみると、中には紙に包まれた何かが入っていた。

 それを取り上げて、紙を剥いでいくと――


 カラン♪


 ――何だか綺麗な音がした。


「おぉ……。これは、鐘ですか?」


 そう言いながら軽く振ってみると、さっきよりも澄んだ音が食堂に響いた。


「うん、そうそう。ほら、お店に入るときに鳴るやつ!

 アイナちゃんのお店を開くときにどうかなって思って、できるだけ綺麗な音のものを選んできたんだ♪」


「なるほど……。確かに今まで聞いたことのある鐘よりも、綺麗な感じがしますね!」


 カランカラン♪


 ――うん、音も良いし、見た目もアンティーク調で好きな感じだし、これは嬉しいな。


「それではアイナさん、お店もさっさと開けないとね♪」


「うっ、そうですね……」


 にっこり微笑むレオノーラさんの言葉に、私は何だか詰まってしまった。


「私もお店の方までは気が回らなかったですね……。さすがジェラードさん!」


 エミリアさんはジェラートのチョイスに、納得するかのようにうんうんと頷いていた。

 逆に言えば、ベッドサイドに気が回ったエミリアさんもエミリアさんらしいんだけどね。


「この鐘はお店で使わせて頂きますね!

 一応もう付いてはいるんですけど、もう少し鈍い音でしたし――

 断然こっちの方が好きなんで、ささっと付け替えておきます」


「うん、そうしてくれると嬉しいな♪」



 みんなからもらったものはメイドさんたちにお願いして、食堂の端に置いておいてもらうことにした。

 アイテムボックスに入れちゃっても良かったんだけど、せっかくだからもう少し出しておこうかな――ってね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「みなさん、いろいろと頂きましてありがとうございます!

 お礼と言ってはなんですが、私からも何か差し上げようと思ってこんなものを用意しました」


 そう言いながら、アクセサリ屋さんで買ってきたガラス瓶を全員に見せる。


「あら、素敵ね。アリムタイト王国のものかしら」


 アリムタイト王国……?

 それは初めて聞く国の名前だけど――


「えーっと、そうですね。輸入してきたものらしいです。

 それでこのまま差し上げても良いのですが、ご希望の方には私が作った薬を入れてお渡ししようかなと」


「おぉ……。それは凄いな。

 アイナさんならではと言うか……。それに品質も最高だしな……、なかなか手に入るものじゃないぞ……!」


 最初に関心を示してくれたのはダグラスさんだった。

 私の作ったものをたくさん見てくれているし、錬金術師ギルドの主任だしね。


「アイナさんからの贈り物……これはしっかり決めないと! ところでどんな薬があるんですか?」


 実はまだ作っていないなんて言えない。

 聞いてから作る予定だからね……!


「えーっと……とりあえずご要望を伺ってから、アイテムボックスの中を探してみますね。

 テレーゼさんだったら……風邪薬とか?」


「それ、テレーゼには要るか?」


「むっ!? 主任、私のことをバカとでも――」


「いや、お前は病欠したことないだろ? いつも健康だから、必要かなって」


「――確かに!

 でもそういう理由からなら、主任は二日酔いの薬になりますよね!?」


「え? ダグラスさん、二日酔いで仕事に出るんですか……?」


 それはちょっと、イメージが違うかも。

 何だかんだで生活はしっかりしていそうなんだけどなぁ。


「そうなんですよ、アイナさん! 主任ったら年に1回くらい、やたら飲んで来るときがあるんですよー!」


「おいおい、そこまでは酷くないだろ……?」


「ま、まぁ……。でもたまにあるなら、それでも良いんじゃないですか?」


「ふぅむ……。そうだなぁ、他にはすぐに浮かばないし、そうしておこうかな。

 ……何だかもったいない気もするけど」


 それじゃダグラスさんは二日酔いの薬ということで。

 えーっと……せっかく贈るものだし、ちょっとアレンジして――


 バチッ


 ――はい、完成。


「それではこちらになりまーす」


「ほう……。どんな効果か、鑑定しても良いかな?」


「はい、どうぞどうぞ」


 ダグラスさんが鑑定スキルを使うと、宙にウィンドウが現れた。


 ----------------------------------------

 【抗劣化・二日酔いの薬(S+級)】

 二日酔い回復(大)

 ※追加効果:二日酔い回復×2.0、抗劣化×2.0

 ----------------------------------------


「――は?」


 鑑定結果を見ると、ダグラスさんは変な声を出して驚いた。


「年1回くらいということなんで、劣化しにくいものにしてみました!

 全部飲まなくても、少しで効果はあると思いますよ。何回かに分けて使ってみてください」


「お、おう……。こんな薬もあるんだな……。

 さすがファーマシー錬金が得意なだけはあるというか……」


「はぁ、凄いですね……。これが世界トップクラスの錬金術師……!」


 テレーゼさんもひたすら感心してくれている。

 ふふふ、スキル頼みなんだけどね!


「それにしても、アイナさんはアイテムボックスの中で薬を入れているの?」


 そんな冷静な指摘をしてきたのはレオノーラさんだった。

 く、さすがに目の付け所が鋭い。


「はい、ちょっとした裏技があるんですよ。私以外は難しいでしょうけどね!」


「そうなんだよねー♪ アイナちゃんってめちゃくちゃ器用なんだよね!」


 私の苦し紛れの言い訳に、ジェラードが乗っかってきてくれた。

 ジェラードは私のスキル構成を知っているから、誤魔化すのに協力してくれたのだ。


「ふぅん、さすが高レベルの職人――って感じなのね。私の専属にしたいくらいだわ」


「あはは、レオノーラさんの依頼なら優先でこなしますからお気軽に!」



 そのあとも、要望を聞きながら順番に薬を作っていく。


 テレーゼさんはたまに寝付けないときがあるということなので、睡眠薬を。

 エミリアさんは風邪薬を希望していたんだけど、せっかくなので万能薬を。

 ジェラードは仕事中に何かあったときのために、HP回復と状態異常回復を兼ねた薬を作ってあげた。


 ――そして最後に残ったのはレオノーラさん。


「レオノーラさんは決まりましたか?」


「うぅん、そうね……。

 もしかして、身体の悪い部分に効くような薬はあるのかしら」


「はい。脚や腕、腰を治す薬とかはありますよ。他のものは相談して頂けると」


「レオノーラさん。僕の右腕も以前は動かすことができなかったんだけど、アイナちゃんに助けてもらったんだよ。

 ほら、この通り――ねっ」


 ジェラードは自身の右腕を動かして、私の実績をアピールしてくれた。


「そういえばそうだったわね。エミリア様から聞いてはいたけど、動きが自然すぎて気付かなかったわ。

 ……もしかして、心臓病の薬なんてあるのかしら」


「心臓病ですか? えーっと、ちょっと調べてみますね」


 そう言いながら『創造才覚<錬金術>』を使い、素材に当たりをつけて調べてみる。

 1分くらいしたところでようやくそれっぽいものを引っ掛けることができた。


 それじゃ早速、れんきーんっ


 バチッ


「……ひとまずこんなのはありました!」


 かんてーっ


 ----------------------------------------

 【心臓病治癒ポーション(S+級)】

 心臓病を永続的に治癒するポーション

 ※追加効果:体力回復(中)

 ----------------------------------------


「……えっ?」

「だから何でこういうのを持ってるんだよ……」

「わー、さすがアイナさんっ! すごーいっ!!」


 レオノーラさん、ダグラスさん、テレーゼさんからは何だか懐かしい反応をもらうことができた。

 エミリアさんとジェラードなんて、もう何の反応もしてくれないからね……!

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