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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
213/911

213.いろいろ準備

 ピエールさんとポエールさんと会った次の日は、ジェラードがお屋敷を訪れた。

 お客様がたくさん来てくれるのは何というか、やっぱり嬉しいものだよね。


「アイナちゃん、こんにちは♪」


「はーい、いらっしゃいませ!」


「ジェラードさん、私もいますよ!」


「おっと、エミリアちゃんもこんにちは!」


 今日は最初からエミリアさんを交え、客室で話をすることにした。

 あんまり深い話をする予定もないからね。


「――早速だけど、アイナちゃん。触媒の件はどうなった?」


 触媒……というのは先日作った、『炎の増幅石』を初めとした4つの増幅石のことだ。

 ジェラードから教えてもらった、グランベル公爵が欲しがっているというアイテムである。


「はい、ちゃんとできましたよ!」


 そう言いながらアイテムボックスからひとまず『炎の増幅石』を取り出す。

 一応、傷が付かないように布を敷いてから、テーブルにそっと置いてみる。


「わー、綺麗ですね! 宝石ですか?」


「えぇっと、これはこういうものです」


 嬉しそうなエミリアさんの言葉を受けて、鑑定のウィンドウを宙に出す。


 ----------------------------------------

 【炎の増幅石(S+級)】

 炎の力を増幅させる結晶体。高度な製造で使用する

 ※追加効果:増幅量×2.0

 ----------------------------------------


「……おぉ。宝石というか……、何だか凄いものでしたか」


「ふむ、これはしっかりできているね。

 アイナちゃん以外でこれを作ろうとしたら、なかなか品質がここまで行かないからねぇ……」


「しかもこれが4つですからね。ここまでやったんだら、公爵といえども文句は言わせませんよ!」


「あはは♪ これで文句を言われたら僕のリサーチ不足なだけだから、そのときは責任を取って僕が丸坊主にでもするよ」


「文句言われたい!」


「えっ!?」


 丸坊主のジェラード……。

 もともとが格好良い容姿だから、丸坊主にしたところでどうせ格好良いんだろうけど、それはそれで話のタネとして一度くらいは見てみたいかな!

 ……私の口からはそんな思いがついつい言葉として出てしまっていた。


「ところでアイナさん、この……増幅石? 誰かの依頼なんですか?」


「はい、いろいろあって――

 以前、テレーゼさんから幼馴染のシェリルさんの話が出たじゃないですか。これは、シェリルさんと会うための一環なんです」


「えー、そんなことをやってたんですか!?」


 それは初耳! と言わんばかりに、エミリアさんは驚き半分、不満半分の表情を浮かべた。

 むむ、これは拗れる前に何とかしないと!


「はい。ちょっとどう転ぶか分からなかったのでエミリアさんには黙っていましたが、これからは協力してくれますか?」


「む……もちろんです! 何をすれば良いですか!?」


「そのうちグランベル公爵の家に行くと思うので、そのときは付き合ってください!」


「グランベル……!? こ、これはまたずいぶんなところに行くんですね……」


 グランベルの名前を聞くと、エミリアさんは呆気に取られてしまった。

 貴族の中でも上の方だから、それは仕方がないのかな。


「あはは♪ エミリアちゃん、そんな『ずいぶんなところ』だからこそ、こういった手土産がいるんだよ♪

 ――ところで先方との約束も入れないといけないんだけど、いつが都合良い?」


「そうですね。明日はダメだから……明後日も一応空けておいて……3日後以降なら大丈夫です!」


「うん、分かった。……ところで明日って何かあるの?」


「アイナさんの錬金術師ランクがS-からSに上がったので、そのお祝いをするんですよ!」


「え、そうなんだ!? おめでとう!!」


「ありがとうございます。

 それで、ジェラードさんもよろしければ来ませんか?

 来る人は錬金術師ギルドの職員さんが2人と、エミリアさんのお友達のレオノーラさんくらいなんですけど」


「なるほど、小規模でやるんだね。ルーク君は……まぁ仕方がないか。

 うん、分かった。ぜひ参加させて欲しいな♪」


「分かりました!」


「――と、それを踏まえて3日後以降で調整してくるよ。そうそう、あとはこれを渡しておくね」


 そう言うと、ジェラードは彼のアイテムボックスから、何だか立派な箱を出してきた。


「これは……?」


「立派な箱♪」


「そ、そうですね……。これ、どうすれば良いんですか?」


「ほら、手土産には演出も必要だからさ。

 増幅石を4つ、ここにずらっと入れたら壮観じゃない?」


「おぉ……、確かにそうですね! 高い石に見えます!」


「さすがに貴族サマに渡すものだし、これくらいはしないとね♪」


「……あ、そうだ。手土産といえば昨日、ピエールさんとポエールさんからお祝いをもらったんですよ!」


「へー、ピエールさんと……え? ポエールさん?」


 耳慣れない名前に、エミリアさんが不思議そうに聞いてきた。


「ピエールさんの弟だそうですよ。外見は結構似ているんですけど、喋り方が普通なんです!」


「そ、そうなんですか!? 私も会ってみたいです!」


「それじゃ、今度来たときはエミリアさんもお呼びしますね」


「はい、お願いします!」


 普通の喋り方をするピエールさんのようなポエールさん。

 ピエールさんを知っている人ならば、これは見たいに決まっているのだ。


「――ところでアイナちゃん、その人たちからは何をもらったの?」


「ふふふー。これです、これ。『クロック』!!」


 左手を宙にかざして唱えると、その先にウィンドウが現れた。

 そのウィンドウには現在時刻が表示されている。


「お……、もしかしてその新しいブレスレット?」


「はい、魔法付きなんですよー♪」


「わー、良いものをもらいましたね。その魔法、私も使えますけど便利なんですよ!」


「まったくですね! 一度使うともう離れられない~って感じです!」


 実際のところ、ある意味では腕時計よりも使いづらいは使いづらいんだけどね。

 時間を見るのに、いちいち唱えなきゃいけないわけだし。


 でもこの世界には腕時計が無いようだから、その前提があるのであれば、これは超優秀な代物なのだ。


「なるほどね、確かに良いものだ。

 それじゃ僕は、何を贈ろうかなぁ……」


「いやいや、ジェラードさんにはいつもお世話になっていますし、別にそういうのは要りませんよ?」


「……さすがにアクセサリばっかりじゃ仕方ないか……?

 ずっと身に付けてもらうなら良い効果のものにしたいし……、ここぞというときのものであれば高価なものにしたいし……」


「おーい、聞いてますかー」


「……かといって部屋の置物なんてのはなぁ……。せっかくなら身に付けてもらいたいし、それなら服……はダメだな。となると……」


 いくら声を掛けてもジェラードからは一向に反応が返ってこない。

 頭を思いっ切り叩けば反応されるだろうけど、さすがにそこまではね……。


「――ジェラードさん、珍しく自分の世界に入っていますね……」


「この集中力が、今まで私たちを助けてくれたんですねぇ……」


 ひとまずは前向きに捉え、私たちはしみじみとしながらジェラードが我に返るのを待つのだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 昼食後、しばらく歓談したところでジェラードが帰ることになった。


「それじゃ、今日はごちそうさまでした!」


「いえいえ、また遊びにきてくださいね」


 私とエミリアさん、給仕をしていたクラリスさんの3人でジェラードを見送り終えると――


「……さて、私もちょっと外に出てきますね!」


 ――そう言ったのはエミリアさんだった。

 食後の運動か、もしくは大聖堂にでも行くのかな?


「今日は私もヒマですし、ご一緒しても良いですか?」


「あ、すいません! 今日はダメです!」


「おおぅ?」


 珍しく即座に断られてしまった。

 むむむ、もしかしてデートかな? ……いや、そんな人はいないか。


「今日はですね、アイナさんに内緒の用事があるんです!」


「……内緒ってことを内緒って堂々と言うのも潔くて気持ち良いですね。

 それじゃ素直に諦めておきましょう」


「すいません! それでは私はこのままいってきまーす!」


「はーい、いってらっしゃい」

「いってらっしゃいませ」


 エミリアさんが出ていくと、玄関には私とクラリスさんが残された。


 さて、これからどうしたものか――


「今日はちょっとヒマだから、厨房の仕事を手伝っても良いかな?」


「いえいえ! アイナ様にそんなことをさせるわけには!」


「掃除とかでも大丈夫だよ!」


「余計にダメです!」



 ――クラリスさんにいろいろと提案するも、あっさりと全部断られてしまった。

 うちのお屋敷には結構な人数がいるんだけど、上下関係で言うと下の人ばっかりなんだよね。


 結構案外、そういう立場で分けられてしまうと私は孤独なのかもしれない。

 いわゆる『社長業は孤独』っていうやつかな? 厳密には違うとは思うけど、大体そんな感じと言いますか。

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