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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
206/911

206.とある通達①

 ジェラードと素材の受け渡しを終わらせたあとは、エミリアさんを呼んで3人で歓談をしていた。

 やっぱり人数が多いほど、お喋りするのは楽しくなるよね。


 せっかくなので、エミリアさんとジェラードにも神器の素材を一通り見てもらった。

 特に進展した話は無かったけど、進む方向は共有できたかな?



「……さてと。それじゃ僕はそろそろ帰ろうかな」


「あ、そうですか? もうすぐ昼食ですけど、食べていきません?」


「いやぁ、急に人数を増やすのもメイドさんに悪いからね。

 それに、これから行きたいところもあるしさ」


「ふーむ、それでは引き留めるのも申し訳ないですね」


「うん、また今度お呼ばれするよ♪ また3日後にくるからねー」




 ジェラードを玄関まで見送ったあとは、そのままエミリアさんと客室に戻った。

 特に戻る必要もなかったんだけど、何となくと言うか、流れでと言うか、そんなふわっとした理由だった。


 まだ昼食までは時間があるし、それまではエミリアさんとお喋りをすることにしよう。


「――ところでアイナさん、今日の午後はどうするんですか?」


「午後ですか? えーっと……錬金術師ギルドに行って、依頼がないか見たいですね。

 テレーゼさんとダグラスさんに挨拶もしなければいけないし……」


「それでは私もお付き合いしますね。アイナさん、目覚めてからまだ日が浅いんですから」


「いやぁ、それなりにもう動けるようになりましたよ?

 でも、一緒に来て頂けるなら喜んで!」


「はい! それで……錬金術師ギルドの用事が終わってまだ疲れていないようでしたら、私の方にも付き合って頂けますか?」


「もちろんです! どこか用事があるんです?」


「ほら、あれですよ。白兎堂に行かないと!」


 あー、そういえばエミリアさんの頼んだ服って、もうできてるはずなんだよね。

 日にちから言って……あ、私が目覚めた日に出来上がる予定だったのか。


「……すいません、目覚めたのもタイミングが悪かったですね」


「いやいや! そこは服よりもアイナさんだから大丈夫です!

 ……というわけで、よろしくお願いしますね」


「分かりました。そもそもどんな服かも知らないので、楽しみにしてます!」


「えへへー。あんな服を頼んだのは初めてですから、私も楽しみです♪」


 特注したものが出来上がるのは、やっぱり想像しただけでも楽しくなっちゃうよね。

 元の世界ではこういうのをやったことはなかったから――もっと昔から挑戦してみれば良かったかなとも思ってしまう。


 ……でも、お金がやっぱり掛かっちゃうんだよね。

 お給料もそんなにだったし、その気があっても結局は断念しちゃっていたんだろうな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 昼食のあと、しばらくしてから錬金術師ギルドに向かうことにした。


 今日も良い天気だ。こんな温暖な気候でいられるのも、神様とか竜王の加護のおかげなのだろうか。

 伝説は伝説として、本当のところはどうなんだろうね?


 ……しかしそんなことを思っても、調べる術なんてあるわけもなく。

 平和ならそれはそれで、その理屈なんてものは偉い人に任せて、一般人の私はその豊かさを素直に享受しておくことにしよう。


 一般人……? S-ランクの錬金術師は、果たして一般人なのだろうか……。

 まぁ、王族でも貴族でも奴隷でもないし、ここは一般人ということにしておこう。うん、それが良い。



 頭でそんなことを考えながら、エミリアさんと話しながら歩いていると、無事に錬金術師ギルドに着くことができた。

 特に懐かしさは感じられなかったので普通に入って行くと、いつも通りのテレーゼさんの大声から始まった。


「おおおぉ……!? アイナさーん! おかえりなさああああいっ!!」


 例によって周囲の目がこちらに集まるが、そのまますぐに視線を元に戻す人もちらほらいるようだった。

 私が来るたびにあることだし、常連の中にはもう慣れてしまった人もいるのだろう。


 いずれは全員、こちらを見ることもなくなってしまうかも? ……いや、それはそれで望むところか。


「テレーゼさん、お久し振りです。

 何だか早く戻ってくることができました!」


「それは何よりです……! 少し遅めですが、一緒にお昼ご飯はいかがですか!?」


「あ、すいません。食べてきちゃいました」


「そうなんですか!? 奇遇ですね、私もさっき食べたばかりでして」


「……え? それなら何で昼食に誘うんですか?」


「それはもう、お話をしたいからに決まってるじゃないですか!」


「仕事をしてください」


「うぐっ。そ、それでは仕事の話をします! しちゃいますよ!」


 そう言うとテレーゼさんは引き出しから紙を1枚出して、それを読みながら言った。


「えぇっと、錬金術師ギルドからアイナさんに通達があるそうです。

 今日はダグラス主任に会っていってください」


「通達……? んー、何だろう?

 どちらにせよダグラスさんとは会っていく予定だったので、呼んで頂けますか?」


「えー」


「『えー』って……」


「主任を連れてきたら私の仕事が終わっちゃうじゃないですか!

 もう、主任ばっかりアイナさんとお話しててずるい!!」


「仕事だから仕方がないのでは……。ほら、そうこうしてる内にダグラスさんが来ちゃいましたよ」


 そう言いながらテレーゼさんの後ろを指差すも、テレーゼさんは振り向きすらしない。


「アイナさん、さすがに私でもその手には乗りませんよ!?」


「こんにちは、ダグラスさん!」


「だからその手には――」


「よぉ、アイナさん!! もう大丈夫なのか?」


「…………」


 挨拶のあと、私とダグラスさんが簡単な身振りでコミニュケーションを取っていると、テレーゼさんは恐る恐るといった感じで後ろを振り向いた。

 既に声も聞こえているわけだから、そこにダグラスさんがいるのは疑いようのない現実なんだけど……。


「テレーゼ……お前、受付だろ? 早く俺を呼べって!」


「うぐぐ……。久し振りの再会だというのに!」


「確かに久し振りだけど、まだ10日くらいだろ……」


 ダグラスさんはテレーゼさんを手で制しながら、改めて私に言った。


「アイナさん、錬金術師ギルドから通達があるんだ。応接室の方にお願いできるかな。

 ――あ、そうそう。依頼を受けられるなら依頼書を持っていくけど、今日はどうする?」


「お願いします。できるだけ受けていきたいので」


「本当か? それじゃ準備をするから、先に行っていてくれ」


「主任! 私が応接室までご案内しますねっ!!」


「アイナさん、一人で大丈夫だよな?」


「はーい、大丈夫でーす」


「ぐぬぬ……」


「あ、それじゃテレーゼさん。エミリアさんにはこの辺りで待ってもらうので、何かあったらよろしくお願いします」


 そう言うと、後ろに控えていたエミリアさんも会話に参加してきた。


「テレーゼさん、何かあったらお願いしますね!」


「む、むむ……。これは……断れないッ!!」


「それでは私は応接室に行ってきます。

 エミリアさん、テレーゼさん、またあとで」


「はい!」

「は、はぁい……」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 応接室で一人待っていると、10分ほどしてからダグラスさんが現れた。

 どことなく表情が明るいというか、そんな雰囲気を感じさせる。


「アイナさん、お待たせして申し訳ない!」


「いえいえ。ところで通達って何ですか? そういうの、私は初めてですよね?」


「ああ、うん。アイナさん、おめでとう!!」


「え?」


「Sランクに昇格だ!!」


「え? ……えぇーっ!?」



 急にまた何で!?

 私、何もしてないんだけどっ!!

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