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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
193/911

193.英知の中へ

 夕方、お屋敷に戻るとエミリアさんも帰ってきたところだった。


「アイナさん、お帰りなさい!」


「エミリアさんもお帰りなさい。……本、凄いですね」


「大聖堂から7冊ほど借りてきたんですよー。

 図書館からは本を持ち出せないので、本当ならもっと持ってきたかったのですが」


「へー……。

 それにしても、何だか難しそうな本ばかりですね……」


 タイトルを見てみれば、光魔法やルーンセラフィス教関連の本が多かった。

 そしてその1冊1冊が、何やら重厚な雰囲気を漂わせている。


「分かりますか? 今まで少し避けてきたようなものを選んできたんですよ。

 理解するのに時間が掛かるので、こういうときに良いかなって」


「なるほど。では私も、ぐっすりいくことにしましょう」


「いやいや! 早く起きてくださいよ!?」


「あはは、冗談ですよ!

 ――それじゃ、今晩にやってしまっても良いですか?」


「……はい!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 夕食後、自分の部屋で一人最後の確認をする。


 使うか分からないけど、しんどいとき用のポーション類も一応出しておいて……っと。

 回復系とか、睡眠系とか、痛み止めとか。それくらいあれば、とりあえずは大丈夫かな?


 汗なんかも凄いだろうから、タオル類も数日分は用意しておいて……っと。

 さすがに1年分を準備しておくわけにもいかないし、あとは補充してもらうことにしよう。


 ――とは言っても、1年寝込むって決まったわけじゃないんだよね。

 私の予想では1週間から1か月の間くらいだと思うんだけど。


 せっかく王都の暮らしにも慣れてきたところだし、あんまり時間を掛けたくはないよね。

 でもこればかりはどうしようもないのだから、せめてできるだけ早く目覚められることを祈っておこう。



 トントントン



 不意にノックの音が聞こえてきた。


「はーい、どうぞー」


 返事のあと、部屋に入ってきたのはエミリアさんだった。


「やってますかー? 私もそろそろ、お引越しをしても良いです?」


「え、引っ越し?」


「ベッドとかテーブルとかをこっちに持ってきたいんです!」


「むむむ?」


「付きっきりの看護体制ですよ!

 疫病のときとは違って、今回は移るものはありませんからね!」


「な、なるほど……? それはありがたいんですけど――」


 そう言いながら部屋の中を見渡す。

 ここにきてから増えた物も特にないし、見られて困るものもないし……まぁ良いか。


 エミリアさんも私の視線に何となく気付いたものの、想像外の方向から話を繋げてきた。


「――アイナさんのお部屋、飾りっ気が少し足りないですね!」


「……えっ、そうですか……?」


 まぁ実際に無いんだけど。


「せっかくですし、少しくらい飾りましょう!

 お店の方からガルルンを少し持ってきて――……あとはあれ! アイナさんの服のコレクションでも出しておきますか!」


「えぇ……? ガルルンはまだ分かるんですけど、何で服まで……?」


「可愛らしさの補充……? ほら、この前作った白兎堂の服!

 アイナさんの看護をしながら、あの服に癒されたい……のです!」


「むぅ。エミリアさん、ああいうの好きですね……。

 そういえばエミリアさんの服ができるのって、あと1週間くらいでしたっけ?

 私に構わず取りに行っても大丈夫ですからね」


「んー。そうですね、アイナさんがすやすや寝ているようでしたらお言葉に甘えましょう!」


「何なら受け取ったあと、普通に着ていても大丈夫ですよ」


「む……。私だけ急にあんな服を着ていたら、メイドさんたちに変に思われそうですよ……?」


「そ、そうかもしれませんね……。

 でも私が一緒だとしても、2人揃って変に思われるだけなのでは……?」


「むむむ、そこはあれですね。『女は度胸』ってやつですね……! うーん、悩ましいです……!」


 元の世界では『男は度胸』だったような気もするけど――こっちでは違うのか、あるいはエミリアさんがボケているのか。

 いや、とりあえずどっちでも良いし、ここはスルーしておくことにしよう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 エミリアさんのベッドやテーブルの移動は、私のアイテムボックスを使うことであっさり終了した。

 引っ越し屋とかをやるとき、かなり便利そうなスキルだよね。きっと時給も上がると思うなぁ。


 そしてエミリアさんの提案を踏まえ、お店の方から持ってきたガルルンたちと、何故か飾られることになった私の服たちが部屋を彩る。


「……何か、服を飾るのって微妙じゃないですかね……?」


「そうですか? うーん、それなら服はあれ以外はしまって頂いても大丈夫ですよ!」


 あれ……というのは、白兎堂で作ったアリス服のことだ。


「好きですね……。

 でも、私としてもあれは、着るというより観賞用に近いですからね。うん、何となくは分かります」


 そう言いながら、アリス服以外の服をアイテムボックスにしまっていく。

 まぁガルルンがこんなに並ぶ時点で少しおかしな雰囲気だから、可愛らしい服で相殺するのもアリ……なのかな……?


「それではアイナさんが寝込んでいる間、私はお勉強をしながら金庫の番人をしていましょう。

 ばっちり任せておいてください!」


 エミリアさんは傍らの小さな金庫をポンと叩いて、笑いながら言った。

 金庫の中には錬金術師ギルドで受け取った、貸し付けを証明する12枚の証書が入っているのだ。


「何だか大変なことを任せてすいません。

 証書がここにあるのは誰も知らないので、誰にも話さなければ大丈夫のはずです……!」


「はい! 特に誰に言うものでもありませんし、頑張ります!」




「――さてと、ではそろそろ……」


「元気で戻ってきてくださいね!」


「が、がんばります……!」


 エミリアさんの応援を受けて、まずは杖を手に取る。

 『安寧・迷踏の魔石』がセットされていることを確認して――


 『英知接続』!!


 作りたいものは――神器の剣!!

 名称未定、光属性付与、光の加護付与、素体は『なんちゃって神器』の剣!!

 付与効果は――


 ①超斬撃

 ②斬撃力変化

 ③全種族攻撃UP

 ④全攻撃補正

 ⑤全防御補正

 ⑥状態異常耐性UP

 ⑦HP・疲労回復

 ⑧装備限定――


 ――……って、あれ? 私の神器ってそういえば……装備できるのを『英雄』に限定する必要ってあったっけ……?

 ちょっとここは、うん、少しだけ変えておこう――


 ――条件終了!

 そしてその条件を『創造才覚<錬金術>』に流して――



 ミシィ……ッ!!!!



 身体のどこかから、そんな軋みのような音が聞こえてきた。どこかから? いや、身体全体というか――

 そう思った瞬間、突然強烈な頭痛に襲われた。そして続け様、身体の感覚をすべて奪われるような喪失感。


 視界が真っ暗になり、周りの音がすべて消え失せる。

 唯一感じられるのは周囲の空気が突然水になったような……圧迫感のような、重圧感のような、そんな息苦しさのみ。



 ああー、さすがにこれくらいの反動はきちゃうかぁ……。

 前に神器を作った人もこうだったのかなぁ……。

 何だかもう、早速死にそうなんですけどぉ……。



 ――その辺りで確か、私の意識は途絶えたのだと思う。

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