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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
178/911

178.新しい使用人③

「いやー、相変わらずのアイナさん節でしたね!」


 エイムズ家の4人がいる部屋を出ると、エミリアさんがそんなことを言い出した。

 何となくピエールさんの筋書きに乗ったという思いがどこかにあるものの、それでも人助けとは素晴らしいものである。


「すべての人は難しいですけど――私と縁ができる人くらいは、これくらい良いですよね?」


「はい、それは立派なことだと思いますよ! みんながそれをすれば、世界はもっと良くなるのです!」


 うんうんと頷いて言うエミリアさん。ルークとピエールさんの表情も『その通り!』と言っているようだ。

 ……それにしてもピエールさん、何と言うか……まぁいいや。



「――さてさて、それではアイナ様。次は警備の者を紹介させて頂きマス。

 こちらは10名ほど集めさせて頂きマシタガ、その中から5人をお選びクダサイ」


「えーっと、10人の前で5人を選ぶんですか?」


「もしかすると気まずい感じデスカナ?

 それでは1人ずつお会いして頂きマショウ」


 ピエールさんは私たちを先ほどとは別の部屋に案内してくれて、そのままそこで待つように言った。

 これから順番に、1人ずつ連れてくるそうだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――アイナ様、お疲れ様でゴザイマシタ」


 10人と話を終えたあと、最後にピエールさんが声を掛けてきた。


「ありがとうございます。いやぁ、いろいろな方がいらっしゃいますね」


「『戦闘力』から絞りを掛けマスと、性格や価値観はある程度まとまりがなくなってしまいマス。

 とは言え、今回ご紹介した者たちは平均以上の人材でゴザイマスヨ」


 『平均以上』――

 メイドさんたちのときは『実力、性格ともに申し分ない者たち』という評価だったから、それよりも下がるのかな……?

 しかしそれっぽくお得な感じで言ってはいるものの、いつも正しい評価は伝えてくれているのだろう。


「それでは少し、ルークとエミリアさんと相談してみます」


「かしこまりマシタ。お決まりになりマシタら、こちらのベルでお呼びクダサイ」


 そう言いながらピエールさんは小さなベルを1つ手渡してきた。

 うちのお屋敷にもある『呼び出しの鈴』と似たようなものだ。


「ありがとうございます。申し訳ありませんが、しばらくお待ちください」


「それでは失礼イタシマス」


 ピエールさんは挨拶をすると、静かに部屋から出ていった。




「――さて、お2人のご意見もお願いします!」


「うーん……。私はこういうの、良く分からないんですよね……。

 あ、でもあのお酒で借金作っちゃった傭兵さんは外した方が良いかと思います!」


「現在進行形で飲んでいるそうですしね……」


「酔うほど強くなると言ってましたが、仕事中に酔われるというのも……。

 アイナ様のお屋敷にはあまり相応しくなさそうですね」


「ふぅむ、それじゃこの人は止めておこう……。こっちの無口の人はどうだった?」


「こちらの方は良いと思いました。奴隷としては規格外の強さということで――

 無口なところはどうしても気になりますが、最低限の意思疎通はできるかなと……」


「あの人、挨拶は会釈くらいになりそうだよね……。

 タイプとしては剣使いだし、ルークに近いと言えば近いのかな」


「体格も同じくらいですしね。

 ――あとはこちらの鎚使いの方。元聖職者ということで、簡単な光魔法を使えるのは良いと思いました」


「そうですね。アイナさんのポーションが支給されるとは言え、魔法を使えるのは強みですから」


「ふむふむ。少しスローな感じはしましたが、実力的には申し分なさそうですよね」


 それじゃ、この人も採用っと。


「あとはそうですね。こちらの弓使いの方と魔法剣士の方が良いと思います。

 ――とすると、残りの1人である程度リーダーシップを発揮できる方が望ましいかなと」


「警備の人の中の、リーダーみたいな感じかな?」


「はい、その通りです。

 一応立場的にはクラリスさんの下に付くとは言え、警備の人たちの問題がクラリスさんまでいくのはできるだけ避けたいですからね」


「あー、確かに。そこはそこで、ある程度の解決能力が欲しいよね……」


 うちのお屋敷の場合、メイド長のクラリスさんがお金の管理などもする関係で、使用人はすべて彼女の下に付く形になるのだ。

 権限的な上下関係というか、体制上の上下関係――といった方が近いかな?


「リーダー、ですかぁ……。

 うーん。そういう観点で見ると、この人はどうでしたか……?」


「む、これは……姉御肌の斧使いさんですね」


 エミリアさんが選んだのは、笑い声が豪快なお姉さん。

 結構筋肉がムキムキだった人。


「性格も竹を割ったような感じですし、私は好きですよー」


「確かに、女性からは慕われそうな方でしたよね。

 ……とすると、他が全員男性というのもやりにくいかな……」


「それではアイナ様、魔法剣士の男性の方を、もう1人の魔法剣士の方に変更してはいかがでしょうか」


 うーん、そこを変えるかぁ……。


「何かドジっ子っぽかったけど、大丈夫かな……」


「真面目そうではありましたし、ピエールさんの紹介ですし、きっと大丈夫でしょう」


「むぅ。ピエールさんの紹介、かぁ……。

 今のところはあんまりな人を紹介されたことは無いし……それじゃ大丈夫かな?」


 少し悩ましいところもあったけど、最後の1人はピエールさんの実績が後押しをした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――アイナ様、まずはディアドラさんをお連れしマシタ」


 ディアドラさんというのは、竹を割ったような性格の斧使いの女性だ。


「あ、あれ? アタシが一番乗りですか?」


「はい。今回は5人と契約する予定なのですが、ディアドラさんにはそのリーダーをやってもらいたいと思いまして。

 それで、まずは先にお話しておこうかなと」


「え? アタシが? ……それは大変光栄であります!」


 多少言葉を無理している感じはするが、満更では無い表情をしている。


「ある程度の取りまとめもやって頂きたいので、お給金は上乗せしますが――よろしいですか?」


「はい! 全力を以って仕事にあたらせて頂きます!」


 ビシッと敬礼するディアドラさん。

 そう言えば、以前はどこかの小さな軍にいたらしい。


「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」


「それではアイナ様。残りの4人をお連れイタシマス」


「はい。ピエールさん、お願いします」



 私とルーク、エミリアさんは座りながら、ディアドラさんは立ちながら静かに待つ。

 しばらくするとピエールさんを先頭に、残りの4人が続けて部屋に入ってきた。



「アイナ様! 俺を選んでくれてありがとうございます!!」


 流れや順番を無視して大きな声を上げたのは、弓使いのカーティスさん。

 性格が熱血気味で少し暑苦しそうではあるものの、頼りにはなりそうだ。

 それにしても熱血キャラだったら剣を持ちそうなものだけど、弓なんて珍しいよね? ……っていうのは、ステレオタイプの一種だろうか。



「僕の腕を見込んで頂けて大変嬉しいです。頑張りますので、よろしくお願いします」


 大きい身体で少しのんびり言うのは、元聖職者で鎚使いのランドルさん。

 『動かざること山の如し』っていう感じかな。いや、動いてもらわないと困るんだけど。

 しかしこう見えて足は速いらしく、『押し寄せる壁』という異名を持っていたそうだ。……想像すると何だか怖いけど。



「あの、私なんかを選んで頂いてありがとうございます!

 せ、精一杯お仕事させて頂きますので……っ!」


 少し可愛い感じで言うのは魔法剣使いのサブリナさん。

 言いながら少し目が潤んでいる。彼女って、話すときに目を潤ませるんだよね。

 でも、必死さが何だか伝わってくるかも。



「…………」


 ぺこり。

 無言で会釈をしたのは剣使いのレオボルトさん。

 ……今後、ずっとこんな調子なのだろうか……。


 そんなことを思っていると、早速ディアドラさんから注意が飛んでいった。


「――挨拶はしっかりしような?」


「………………よろしく頼む」


 レオボルトさんは小さい声でそう言ったあと、再び会釈をした。


 話したくない、挨拶をしたくない――のではなくて、喋るのが本当に苦手なだけのようだ。

 でも案外素直な感じだし、ディアドラさんは苦労するかもしれないけど――まぁそこは頑張ってもらおう。



「――それでは皆さん、早速明日からよろしくお願いしますね」


「はい!!」

「はい!!!!!」

「はい!」

「は、はい!」

「……」


 4人の元気な返事が響く。

 うーん、もう1人も頑張れ! 多分、小さくは何か言ってると思うんだけど。

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