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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
173/911

173.第1回神器検討会議②

「それでは改めて、『神剣デルトフィング』の情報を見ながら進めましょう」


 そう言いながら、以前鑑定した結果を改めて宙に映し出す。


 ----------------------------------------

 【神剣デルトフィング】

 形状:神器<剣>

 属性:水

 熟練:72/100

 特殊:超斬撃 全攻撃補正 不死特効 悪魔特効 炎特効 全種族攻撃UP 状態異常耐性UP 装備限定<英雄>

 加護:氷の加護

 ----------------------------------------


「えっと……アイナさん、光属性にすると『加護』も『光の加護』になるんですよね?」


「変えられるかもしれませんが、でも変える必要は無いですよね。

 光属性にしつつ『闇の加護』なんて付けたら、ちょっと意味深ですけど」


「ははは、思春期くらいでしたらそういうものに胸をときめかせますよね」


 いわゆる中二病というやつを念頭に、ルークが笑って言った。

 正反対の性質のものが何らかの力によって同時に振るわれる――何とも熱い設定なんだけどね。


「うーん、分かるけど今回は素直な設定にしたいかな。

 ……さて、ここからが問題ですね。『神剣デルトフィング』は素直に『剣!』っていう感じがして、どうにもツッコミづらいんですが……」


「確かに隙が無い感じがしますよね。何かこのままでも良いような気がしてきました」


「ぐぬぬ、エミリアさん! オンリーワンはどこにいったのですか!」


「はっ!? ……でも全部を変える必要は無いと思うんですよ。

 良いところは踏襲して、優先順位が低いものを検討してみませんか?」


「確かに健全で前向きな案ですね! それではそうしましょう!」


 ひとまず『特殊』の項目を紙に書き出して、補足の説明を簡単に追加する。

 そうするとこんな感じになった。


 ----------------------------------------

 ①超斬撃

 ……切れ味が鋭くなる能力。


 ②全攻撃補正

 ……すべての攻撃方法による攻撃力が上がる能力。


 ③不死特効

 ……不死者に対する攻撃力が上がる能力。


 ④悪魔特効

 ……悪魔に対する攻撃力が上がる能力。


 ⑤炎特効

 ……火属性に対する攻撃力が上がる能力。


 ⑥全種族攻撃UP

 ……全種族に対する攻撃力が上がる能力。


 ⑦状態異常耐性UP

 ……持ち主の状態異常耐性が上がる能力。


 ⑧装備限定<英雄>

 ……持ち主を限定する条件。

 ----------------------------------------


「――うん、やっぱり攻撃に偏っていますよね」


「そうですね……。『超斬撃』と『全攻撃補正』がまず被っていますよね。

 『全攻撃』の中には『斬撃』も入っているでしょうし……」


「剣には『斬る』以外の使い方はありますが、この場合は『斬撃』に特化しているように感じますね」


「――とすると、『全種族攻撃UP』と『不死特効』『悪魔特効』『炎特効』も被っていますか。

 不死や悪魔には2重の特効になっているのかな……」


「これを作った人、凄いことを考えますよね……。何か恨みでもあったのでしょうか」


「人間に対しての効果だったら怖いところですが、特化しているのが不死や悪魔に対してですからね。

 浄化のために使いたかったのかな?」


「なるほど、そう考えると聖剣っぽいですね」


 ふむふむと頷くエミリアさん。

 この構成を見るだけで、何となく作り手の意思が伝わってくる気がする。果たしてどんな人だったのだろうか……。


「同じ感じで特化にしていくと、構成は大体同じになっちゃいそうですね……」


「ところでアイナさん、『特殊』の個数を増やすことはできないんですか?」


「それなんですけど、詳しく鑑定してみたらここは8つが最大みたいなんです。

 だから別のものを付けたいなら、どれかを消さないと」


「とほー。なかなか上手くはできていないものですね……」


「とりあえず被っているものあたりは消してみましょうか」


 ……というわけで消したのがこちら。

 よくよく見たら、2つしか消せていない。


 ----------------------------------------

 ①超斬撃

 ②全攻撃補正

 ⑤闇特効

 ⑥全種族攻撃UP

 ⑦状態異常耐性UP

 ⑧装備限定<英雄>

 ----------------------------------------


「……アイナさん、『超斬撃』と『全攻撃補正』が被ったままですよ!」


「何だか消すにはもったいないかなって……」


「いやいや、消しちゃいましょう」


 私が思い悩んで残した1つは、エミリアさんにあっさりと消されてしまった。

 この思い切り、羨ましい!


 ----------------------------------------

 ①超斬撃

 ⑤闇特効

 ⑥全種族攻撃UP

 ⑦状態異常耐性UP

 ⑧装備限定<英雄>

 ----------------------------------------


「……うん。汎用的な感じを残しつつ、スリムになりましたね」


 ちょっと寂しい気がするのは気のせいだろうか。

 『全攻撃補正』っていうのが足りない気がする。気のせいだろうか。


「それではアイナさん、消すのは一旦これくらいにして、次はどういうものを増やすか――ですね」


「そうですね。それじゃルーク、案をお願い」


「え、私ですか?」


「もちろん! この中では一番剣を使っているでしょう?

 ルークが使うと仮定して、こんな能力があったら良いなっていうものを教えてもらえると嬉しいな」


「なるほど……。

 そうですね、私は殺すばかりが剣の使い道とは思っていないので、斬れ味が調整できると嬉しいです」


「……え? そうなの?」


「例えば人間と対峙するときがあった場合、『神剣デルトフィング』は使うことができません。

 攻撃力が高すぎて、どうしても相手を傷付けてしまうのです」


「いろいろな用途に使うには難しい……と。

 それじゃ『斬撃力変化』みたいな感じで入れてみようか」


「そうするのであれば、『超斬撃』ではなく『全攻撃補正』にした方が良さそうですね。

 斬れ味を無くした場合、鈍器のように使うことができますので」


「なるほど。でも基本的には斬る攻撃になるだろうから、『超斬撃』は入れておきたいなぁ……」


 そう言いながら、改めて『全攻撃補正』と『斬撃力変化』を書き加える。


 ----------------------------------------

 ①超斬撃

 ②全攻撃補正

 ⑤闇特効

 ⑥全種族攻撃UP

 ⑦状態異常耐性UP

 ⑧装備限定<英雄>

 ⑨斬撃力変化

 ----------------------------------------


「ああっ! 私がせっかく消したものが復活しちゃいました!」


「ふふふ♪ ……さて、このままいくとあと1つしか入らないね。

 あとは何かあるかな」


「そうですね……。長期戦を考えるのであれば、HP回復や疲労回復などがあると心強いです」


「無限に戦える感じだね!」


 ゲームで言うところの、いわゆるリジェネ。

 効果自体はちょっと地味だけど、案外馬鹿にできないものなのだ。

 現実でそれができるならなかなか良いかもしれない。常時ポーションを飲んでいるような感じになるんだよね?


「……でも錬金術のアイテムとしては、未だに疲労回復のアイテムが作れていないんだよね。

 神器の効果とは言え、それは作れるのかなぁ……」


「できなければHP回復で問題無いかと思います。怪我さえ無ければ、あとは根性ですよ!」


「そ、そう……? でもできるかどうかは分からないけど、とりあえず疲労回復も入れておこうかな?」


 そうするとこんな感じになるか。


 ----------------------------------------

 ①超斬撃

 ②全攻撃補正

 ⑤闇特効

 ⑥全種族攻撃UP

 ⑦状態異常耐性UP

 ⑧装備限定<英雄>

 ⑨斬撃力変化

 ⑩HP・疲労回復

 ----------------------------------------


「ふむふむ……。こうして見ると、『闇特効』が少し浮いていませんか?」


「うーん、確かに。作り手の意思を感じませんね。

 光属性だから何となく入っているというか……」


「では『闇特効』を消して『全防御補正』にしてはいかがでしょう。

 仲間を守りながら敵を倒す。……うん、実に良いです」


 ルークは頷きながら言う。

 なるほど、『守る剣』か。それは個性が出ていて良いような気がする。

 それじゃそこを変更して番号も振り直すと――


 ----------------------------------------

 ①超斬撃

 ②斬撃力変化

 ③全種族攻撃UP

 ④全攻撃補正

 ⑤全防御補正

 ⑥状態異常耐性UP

 ⑦HP・疲労回復

 ⑧装備限定<英雄>

 ----------------------------------------


 ――こうかな!


「……これは固いね!」


「特に尖っていない分、使い勝手は良さそうですよね」


「私はとても良いと思います」


「うーん、私も結構好きな感じかな? 汎用的に使える武器が好きなんですよ」


 例えばゲームなら、汎用的なものよりも特化したものが人気なのは間違い無い。

 でもそれは特化させる相手がいるためで、それがいなければ汎用的なものには劣るのだ。

 今は特化させる相手なんていないし、恐らくはこれがベストだろう。


「なるほどです。なんだか優しい感じの剣になりましたね」


「優しい……ですか。なるほど、1つ目の神器にしては良いですね!」


 エミリアさんの一言に、私も強くそう思った。


 ――さて、それじゃひとまず『設定』はこんなものかな?

 次はタイミングを見て素材を調べないといけないけど、今日のところはここで終わりにすることにしよう。


「それではお2人ともありがとうございました。

 これで第1回、神器検討会議を終了します!」


「おぉー、お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした!」



 そのあとは少し雑談してから、それぞれの部屋に戻った。

 まずはベッドに寝転がって一息つく。


 ――今まで1人で黙っていた分、今日はみんなでお話できたのはとても良かったな。


 仮に第2回をやることにしたら、それはおそらく最初の神器を作ったあとになるだろうけど――

 そのとき私は何をしていて、何を考えているのだろうか。そしてまわりには誰がいるのだろうか。


 私は何となく、今はまだ見ぬ未来の自分に思いを馳せたりしてみていた。

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