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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第5章 王都ヴェセルブルク
171/911

171.彼女のレアスキル

 お屋敷に戻ってきたのは辺りが暗くなり始めた頃、17時くらい。

 まずは裏庭から入ってみると、そこにはルークの姿は無かった。


「……さすがにこんな時間まではやっていないか」


 もしかしたらまだ修練をしているかな? とも思ったが、さすがにそれは無かったようだ。

 改めて玄関側からお屋敷に入ると、ミュリエルさんとキャスリーンさんが出迎えてくれた。


「「お帰りなさいませ」」


「ただいまー。

 あ、キャスリーンさんお久し振り」


 同じ建物の中にいるのに、会うのはずいぶん久し振りな感じがした。

 私が倒れたあと、目が覚めたあと以来になるかな。


「は、はい! 申し訳ございません、しばらく目を腫らしてしまっていたもので……クラリスさんから表に出ないように言われておりまして……」


「そうだったんだ? でも、もう大丈夫かな」


 よくよく見れば100%大丈夫とも言い切れなさそうだが、裏の仕事ばかりやってるわけにもいかないだろう。

 内心はいろいろあるだろうけど、基本的には良い方向の涙だったと思うし……。


「はい、何かありましたらご用命ください!」


「うん、よろしくね」


 キャスリーンさんを見た流れで、なんとなくそのままミュリエルさんに目を移す。

 そういえば今は、夕食を準備するくらいの時間か――


「……あ、あの。アイナ様、私に何か……?」


「あ、ごめんなさい。他のみんなは夕食の準備をしているのかなって思って」


「はい、今日もご期待くださいね」


「……ミュリエルさんは、お料理の方はどう?」


 私の問い掛けに、何故かキャスリーンさんがびくっとした。

 おや? と思いながらいると、ミュリエルさんが返事をする。


「あの……賄いで1回作ってみたんですけど……。

 クラリスさんが忙しいようでしたので、キャスリーンさんに見てもらいながら……」


 ……もう予想が付いてしまった。

 キャスリーンさんが味見をして、酷い目に遭ったんだろう。


 そう思いながら、そういえばとミュリエルさんのスキルを鑑定してみる。

 何かたくさん種類がある中で、ひと際異彩を放つものがあった。それは――


 ----------------------------------------

 レアスキル:

  ・工程ランダム補正<調理>:Lv37

 ----------------------------------------


 ……おお、レアスキルだ……。

 名前がちょっと『工程省略<錬金術>』に似てるけど、これってどんなスキルなんだろう?

 えい、かんてーっ


 ----------------------------------------

 【工程ランダム補正<調理>】

 『調理』スキルを使用中、特殊な補正を得る。

 レベルが高いほど、より大きな補正を得る。

 ----------------------------------------


 ふむ……よく分からないけど、調理中にマイナス補正が掛かってメシマズになるってことなのかな……。

 いや、でもランダムっていうくらいなのだから、上手くいく場合もあるんじゃない?


「……ミュリエルさんって、スキルを調べたことってある?」


「はい、ここに雇って頂くときも調べました」


 何かミュリエルさん、レアスキル持ってるみたいなんだけど――


 ……と言おうとしたものの、果たしてここで伝えて良いものか。

 せっかく料理の勉強をしたいと言っているのに、これのせいでやる気を削ぐのも何か申し訳ない……。

 うーん、先にクラリスさんに相談することにしよう。


「あ、そうなんだ?

 多才そうだから何でお料理だけ上手くいかないのかなって」


「そうなんですよ。何故か料理だけ上手くいかなくて……はぁ」


「みゅ、ミュリエルさん、ため息は……!」


「あ、失礼しました!」


 キャスリーンさんの言葉に、姿勢を正すミュリエルさん。

 そこまで厳しくなくても良いんだけど、内部統制が取れているのは素晴らしいことだ。


「――ところで、ルークってお屋敷の中にいるかな?」


「ルークさんですか? 結構前に外に行かれました。

 軽く走ってくると仰っていましたが――」


「ああ、そうなんだ。それまでは何してた?」


「裏庭で剣の素振りなどをされていました」


「1日ずっとか~……。

 ……うん、ありがとう。私は少し外にいるから、2人は仕事に戻ってて。

 今日はもう出迎えは要らないから」


「「はい、かしこまりました」」


 2人はお辞儀をすると、それぞれお屋敷のどこかに散っていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 玄関の側でぼーっとしていると、20分ほど経った頃にルークが戻ってきた。

 どれだけ走ったのかは分からないけど、汗をたくさんかいている。


 ……話すにはちょうと良いタイミングだと思ったんだけど、どう考えても今じゃない感が半端ない。


「――アイナ様、こんなところでどうされましたか?」


「おかえりなさい。いや、ルークが頑張ってる――って聞いて、何となく待ってみたの」


「そうでしたか、ありがとうございます。

 頑張ってるとはいっても、身体を動かしているだけなのですが……。

 すいません、身体を解していてもよろしいですか?」


「もちろんもちろん!

 ちゃんとしておかないと筋肉痛とかになっちゃうしね」


「それでは失礼して……」


 ルークはそう言うと、庭の隅に移動してストレッチを始めた。

 私も何となくその側に移動する。


「……今日はどうだった?」


「そうですね。1日中、身体を動かせて良かったです」


「――このままで、強くなれそうかなぁ……?」


 その言葉が予想外だったのか、ルークは少し驚いた顔で私を見る。

 そしてその流れのまま、今日ダグラスさんに話したことと、相談して返ってきた返事をルークに伝えてみた。




「……なるほど、痛いところですね。否定はできません」


 神妙な顔で頷くルーク。


「今後どうなるかは分からないけど、王都にいるときくらいは自由に動いてみる?

 今は夜の警備なんていうのもしてもらっちゃってるけど、そこは人を雇うつもりだし。

 私もさすがにそんな危険な目には合わないだろうし――」


 街の外に出るならともかく、王都の人通りの多いところならまったく問題ないのだ。

 いずれ名声が広まったときには危ないことも起こるかもしれないけど、まだまだ平気だろう。


 ……うーん、ちょっと甘いかな?

 まぁ必要があれば、雇った警備の人にボディガードをお願いするっていうのでも良いか。


「そうですね、今後……今後がありますからね。

 では警備の人員を揃えることができたら、私はお言葉に甘えさせて頂きましょう」


「うん、そうしよっか。

 それじゃ、急いで揃えちゃわないとね!」


「ははは……、ありがとうございます」


 まぁ漫画やゲームみたいに、1週間山に籠って劇的パワーアップ! みたいなことは無いだろうから、ある程度長期の話にはなるだろう。


 この世界は、スキルやらレベルやらがある世界。

 でも基本的には、上げたいものを頑張らないと、そのレベルも上がっていかない世界なのだ。


 何かレアモンスターでも倒したらレベル爆上げ――とかだったら楽なんだろうけどね。

 精神的にはあまり成長しなさそうだけど。

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